ここでは今年最も活躍した作曲者に贈る。

優秀賞

蓮沼執太(windandwindows:蓮沼執太フィル)

川谷絵音(indigo la End:ゲスの極み乙女。:ジェニーハイ)

米津玄師

松隈 ケンタ(BiS:BiSH)

Sweet William(la blanka:青葉市子「からかひ」;Pitch Odd Mansion)

冨田ラボ(藤原さくらの椎名林檎カバー「茜さす帰路照らされど・・」:Negicco「雫の輪」)




大賞

Nao’ymt
(三浦大知:アルバム「球体」)

去年、大衆的な評価を得た後に、これほどまでに実験的な要素を取り入れた楽曲を発表したアーティストがいただろうか。その評価に甘んじることなく、またその一歩先へ行く。けっしてファンに迎合しないその姿勢は、三浦大知の影で彼の躍進がある。コンテンポラリーミュージックにも近い、不安的で美しいメロディは、けっして今流行の”踊れる”ダンスではないが、そのパフォーマンスにただただ圧倒されるばかりだ。コンセプチュアルなアルバム「球体」だが、そのストーリー性は決して歌詞だけによって成立しているわけではない。そこにはNao’ymtの繊細に紡がれたサウンドも介している。2015年に寺尾沙穂が「楕円の夢」というアルバムを出したが、あれもまた、「球体」と同じようにラストが”さよなら”ではなく”おかえり”のような感じがした。物語が一周する。その冒頭にまた戻れるようにきちんと練られているのがわかる。まさに会心の一作だったように思う。



総評

作曲者を知る機会はあまりないが、意外と点と点が線となってつながることがある。あの曲とこの曲は同じ人が作っていたのか!のような。最近は自作自演のアーティストが増えてきているが、それでもアイドルやシンガーソングライターへの寄与は大きい。やはりBiSHの松隈ケンタは唯一無二だ。抜群のメロディセンスはどんな曲でも私を虜にさせた。そして彼女たちの良さを一番発揮できるような曲をきちんと用意しているのもすごい。一方でビート―メイカーとしてSweet Williamが挙げられる。こうした人たちがきちんと評価されてオーバーな場でも活躍できる機会があればとても素敵なことだなあと思うのだが。もちろん、今最も勢いのある一人なので、その界隈では十分評価されていることは理解している。海外ではコライティングが主流になっていて、いろんなコンポーサーがアイデアを持ち寄って一つの曲を作り上げている。日本でもAAAなどがそのコライティングを取り入れているが、先ほども言ったように自作自演が主流の日本では、「自分の曲は自分で作る」信仰が強い。人が作った曲を歌うのは傀儡だという人もいる。そのあたりは好みの問題なのでどちらが良いとか悪いとかはないが、そういったコライティングという形ももっと日本でメジャーになればそれはそれで楽しいのではと考えている。2020年、オリンピックを控える中、来年の音楽業界は非常にあわただしくなるに違いない。そのあたりも注目したい。

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