中山美穂のお別れ会が4月22日に都内で行われた。数々の著名人が駆け付け、別れを告げに来た。54歳で亡くなった彼女はまだまだこの先のキャリアが続いていくと思われていただけに驚きは多かった。
そのお別れ会で弔辞を読んだのは小泉今日子。アサ芸プラスはこう報じた。
「あなたへのお別れの言葉を述べる未来は想定外でした」
静まり返った会場で声を震わせ、そう切り出すと、これまでの思い出を振り返り、次のように言葉をつなぐ。
「旅行に行ったり、一緒にお酒を飲んではしゃいだり。楽しい青春をたくさん過ごしました」
昨年12月6日に54歳で亡くなった中山美穂さんのお別れの会が、4月22日に都内で行われた。ここで中山さんが姉のように慕っていた小泉今日子は感動の弔辞を読み上げ、参列者の涙を誘ったのである。
その日の情報7daysニュースキャスターでも、「小泉今日子さんの弔辞が参列者の涙を誘いました」と彼女の弔辞を紹介した。
弔辞とはそもそもこの世界に残された人が旅立った人に向けて、一対一の関係で言葉を送るものだ。小泉今日子だって、今回の弔辞は中山美穂に語り掛けるように、対話するように作り、読み上げたはずだ。それを今回は代表者として多くの参列者の前で読み上げたが、決してみんなの気持ちを代弁しているわけでも、ましてや涙を誘いたくて言葉を考えてきたわけではないはずだ。それを、「参列者の涙を誘った」と第三者が勝手に解釈することは非常に中山美穂にも小泉今日子にも失礼だと思う。
こうやって勝手に別れの場を感動の場にすり替えてしまうことを安易に受け止めてしまいたくない。だってその一言を「小泉今日子さんの弔辞が話題となりました」(まあそれでも好ましくない表現ではあるが)に変えるだけで失礼さはぐっと軽減されるのだから、難しくないはずだ。取材をするなというのは無理な話だしそもそも会を開いている時点で主催側もそれを受け入れているのだからそこを問題にはしなくても、その一言を変えることが視聴率に影響するわけでもないのだから単にこれは制作側のモラルとセンスの問題であることが明白だ。参列者は小泉今日子の弔辞で涙を誘われていたのか、もうすでに涙は誘われ済みだったのかの検証もないままに断言される仕組みは芸能ニュースに限らずあるあるで、その手あかのついた表現技法に飽き飽きするし、そもそも失礼であることに気づく視点すらないことが書き手としての資質を非常に疑ってしまう。
大谷翔平の話に変わる。先日第一子が誕生したと報じられると、スポニチは「大谷翔平「31歳で女の子誕生」人生設計シートの目標から3カ月前倒しで有言実行 「ほんと凄い」」とのタイトルで記事が掲載された。
岩手・花巻東3年時に作成した人生設計シートでは、26歳の欄には「ワールドシリーズ制覇」「結婚」と記入。4年遅れながら30歳の昨季、2つの計画を同時達成した。28歳の欄には「男の子誕生」、31歳に「女の子誕生」、33歳に「次男誕生」と記してあった。 大谷は7月に31歳を迎える。28歳で男の子誕生とはならなかったが、31歳になる3カ月前に女の子誕生という人生設計シートに書き込んだ通りの目標を達成した。
大谷翔平の人生設計シートは以前から話題ではあるが、第一子誕生はパートナーである真美子さんがいてこそ、いや出産は真美子さんがおこなうのだから、真美子さんの意思と努力とケアによるものが大きい。まるで大谷が人生設計シート達成のために真美子さんに31歳までに子供を産ませたような表現は、やはりこれも大谷翔平にも真美子さんにも失礼だろう。真美子さんは大谷のシート達成のための道具ではないし、やはり二人の話し合い、体調、運、ケア、そしてなにより産みたいと思う真美子さんの意思が大切だ。そういう書き出しをなんの疑問もなくやってしまえることが家父長制にどっぷりつかっている弊害そのものだし、その視点がないという事実にはがっかりしながらもこうやってちゃんと指摘していかないといけない。
物を書くという責任を負うのだとしたら、まずはその疑問に立ち返ることから必要なのではないだろうか。
※ちなみにアサ芸プラスの記事は続けて”本人が過剰なまでに見た目の劣化ぶりを気にしていて、撮影は基本的に写真チェックがないと受けません。今回のように報道陣が撮影した素材はチェックがないので、お別れ会では撮影NGにしてしまったようです。弔辞を読む姿を公開したら、さらに多くの人々を感動させることができただろうに…”という言及するのもくたびれるような文言が番組情報デスクの発言として掲載されており、本当にレベルが低い。それに拍車をかけて全角と半角も混じっていて併せてレベルが低い。