ヒグチアイ。知らんか?知らんのか。ざけんなよ。贔屓目に見まくって最高のアーティストだよ。

私が大体そのアーティストに肩入れするときは、曲がいい!とか歌詞が深い!とかそんな私がいつも使うような薄っぺらーい感想が出てくるときじゃなくて、個人のその時の心境とか状況に深く関わって揺さぶった時だ。思い悩んだり苦しい時に聴いて響いたアーティストはもう一生愛する自信がある。多少聞かなくなったとしても、感謝は忘れない。
ならばせっかくブログしてるんだし、何か還元したい。こちらが金を払って音源をもらったんだし、別にお返しする必要はないっちゃあないけど、お返ししたくなる。微力ながら宣伝に手を貸したくなる。なのに今まで書いてこなかった。それはあんまり褒めるのが得意じゃないから。同じような言い回しの連発になるのが目に見えていたから。
でもなんとか書こうと思う。ヒグチアイで検索してきた人には特にひっかかりのない文章かもしれないが、今初耳って人は騙されたと思って聴いてみてほしい。
とはいえ、個人の感情に寄り添ったアーティストは相当贔屓目になる。客観性がない。本当は大したことなくても神に見えてくる。どこにでもいるアーティストだと言われればそれでおしまいかもしれない。もちろんそれは理解した上で、いややっぱり自分のセンスはそれなりに信用しているし、届きさえすればそれなりに結果は残せると思う…のだが…。

まっすぐ

彼女を知ったのはこの曲。当時新譜を鬼のように漁っていて、CDジャーナルに載っていた新譜は全部聴いていた。そこで知ったのがこの曲なんだけど、当時はシンプルにいい曲だなーとしか思ってなかった。もちろんお気に入りになって何度も聴いていたけど感情を震わすようなこともなかった。
だけどこの曲の入ったアルバム、「全員優勝」を聴いた時から変わってくる。あれ、これとんでもないアルバムだぞ、と。
歌詞がいいのはいわずもがなだが、それ以上に押しつけがましくないのがいい。そして軽やかに歌い上げる曲としっとり包み込むような曲との落差が心地よい。ちゃんと全部受け止められる。自分の彼女がメンヘラだったらしんどいけど、ある程度は深刻に考えたりネガティブになったりもしてほしいのと同じだ。まっすぐは後ろからぽんと背中を押してくれる。押しすぎず、でもちゃんと触れられたことは分かる程度に。だから「まっすぐ」がとても似合う。このアルバムの核になっている曲だ。

わたしのしあわせ


さっき「軽やか」といったが、まさにこの曲はそのバランスを絶妙に保っている。日常を歌うアーティストは多いけど、意外とそんなに日常的じゃなかったりする。あるいはその日常があまりにテンプレ過ぎて現実味が無かったりする。でも彼女の日常は真実味がある。だから聴ける。何度でも聴けるし、そのたび違ったフォーカスができる。

備忘録

最後はこれ。これで彼女への気持ちが100パーセント固まった。個人的な事情は多く語らないけど、要するに励まされた。いや、励まされたというよりは気付かされた。別に救われたわけではないけど自分で立ち上がる勇気をもらった。彼女自身のありったけの想いを詰め込んだ曲でもあるので気持ちがビンビンと伝わってくる。ヒグチアイは常にマイノリティを歌っている。しかも誰にもスポットの当てられないマイノリティを。でもそのマイノリティたちは常にもがいて感情を言葉にできなくて苦しんでいる。そこに彼女の言葉が入ってくる。そうか、そうだったのかと腑に落ちる。自然と泣けてくる。彼女の原体験を知っているわけでもないのに勝手にこちらで解釈して当て込んでいる。音楽にありがちな光景ではあるが、これこそが音楽の醍醐味だと思う。

好きになってくれた人しか好きになれないのは
自分のこと好きになれないから
誰かと生きることを生きる意味にしてたんだ
理由つけてあきらめて自分騙してたんだ
なにも始めてない なにもやり遂げてないよな
一人になって気付く 孤独と夢はいつも共にあった

の歌詞はもう最高。最高としかいえない。この声で言われるともう感謝が過ぎる。
最後は私たちに語りかけるわけでも説教するわけでもなくて、自分に言い聞かせてるのがまた斬新だ。

背負わずとも背中を押す無数の手のひら
どうか自分よ、忘れるな
どうか自分よ、忘れるな

二度繰り返す。5分で語ってきたこと全て飲み込んで。全部受け止めた。全部抱きしめているのだ。この最後のセリフがあまりに秀逸過ぎていつも泣く。だから正直この曲はめったに聴くことはない。たぶんまだ30回くらいしか聞いていない。でもその1回が重い。自分が疲弊してどん底だった時に初めて聞いて光明が差したとき、これは自分の人生の一曲なんだと悟った。別に音楽なんか自分の人生を救ってくれるはずもないしそんな期待なんかしていないけど、でももう立ち上がれないとガックリしていたときでさえスッと差し伸べてくれる曲があったんだと初めて知った。今まで好きだったアーティストは価値観や考え方を教えてくれる人ばかりだったけど、ヒグチアイは違う。教えるんじゃない。同じ(というと失礼かもしれないが)悩みやマイノリティを抱える人に同じ目線で励ましも自己主張もなくただゆっくり手を差し伸べじっと待ってくれているのだ。それが尊い。それが熱い。まったく何と表現して良いのかさっぱりわからないが、この曲だけは誰がなんて酷評しようが墓場まで持っていく。

結果、好きすぎる

いつもなら何かに喩えたり、比較したり共通項をあぶりだして無理やりくっつけてみたりするのに今回はどうにもできない。全面的に好きすぎて揶揄も皮肉もできない。かといって褒めるほどに言語化もできていない。なるほど、好きなアーティストほどうまく言葉にできないのは、好きな子を形容できないのと同じようだ。嫌いなやつの悪口ならいくらでもでてくるのに。なんという欠陥だ。好きな子にどれくらい好きかを言えないなんてそんな陳腐な悩みがあってたまるものか。と言いたいのだがあいにく図星で、どうやら私も凡人のようだ。
彼女の曲を客観的にお薦めする最適な方法はもっと他にあるかもしれない。ただそれは分からないしできない。できることはこのブログ書いてる人のセンスなら聴いてみてもいいか、と思ってくれる善良なごくわずかな読者の方のみに届けること。ごめんよヒグチアイ。もっと知名度あってファンが10万人くらいいたら一晩で再生回数10万回は伸ばせてやれるのに。がんばるよ、ぼく。

ヒグチアイさんの情報は公式HPにでも行ってください。

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頼むからみんな買ってくれ。