Netflixで公開されている映画なのだが、未見の人のためのアドバイスとしては「死ぬほど気分が悪いから気をつけてね」と言えるだろう。こな「気分が悪い」ってのは、誰かを貶(おとし)めたり、傷つけたりする意味ではなく、ただひたすらずっと映像が暗く、違和感が多く、居心地が悪く、気分が悪くなるのだ。

「マルコヴィッチの穴」「エターナル・サンシャイン」のチャーリー・カウフマンが監督・脚本を手がけ、イアン・リードの同名小説を実写映画化した異色スリラー。恋人ジェイクとの関係を終わらせようと考えながらも、彼の実家を訪れることになった女性。雪が降りしきる中、2人は様々な内容の会話を交わしながらドライブを続け、ようやくジェイクの両親が暮らす農場にたどり着く。両親から歓迎される彼女だったが、異様なほどテンションの高い母親と認知症気味の父親の奇妙な振る舞いに戸惑いを隠しきれない。その後も彼らの周囲で、不可解な出来事が次々と起こり……。ジェイクをテレビシリーズ「ブレイキング・バッド」のジェシー・プレモンス、彼の恋人を「ワイルド・ローズ」のジェシー・バックリー、両親を「ヘレディタリー 継承」のトニ・コレットと「ワンダーウーマン」のデビッド・シューリスがそれぞれ演じた。Netflixで2020年9月4日から配信。

映画.comより

もう先がないと理解しながら彼の両親に会いにいく。その車中でさえ、延々と会話が繰り広げられる。詩の話、ブランコの話、、取り留めのない話だけどわぞわざ深くつっこんで混沌としていく。ぶつぶつと呟くように語り、二人は噛み合うような噛み合わないような微妙な会話を続ける。すごく気持ちが悪い。

家に到着したらしたで、いきなり家畜の死骸後を見せたりと気持ち悪い。家に入っても一向に降りてこないし返事もしない彼の両親。大きく扉にテープが貼られ傷だらけの地下室の扉。違和感すぎて可愛くない飼い犬。夕食のぎこちなさ。。

そしてこの家の中の展開はTENETもびっくりな構造で、姿を消し再び現れるたび両親の年齢が変わっていく。歳おいていく父親、ヒステリックになる母親。介護する息子。映像一つ一つ、セリフ一つ一つが哲学的に絡み合い、主人公はそのことに理解を示していく。わかっていないのはおそらく私だけだ。

発言が二転三転する彼との帰り道、真冬にアイスを食べ、女性への苦手意識を露わにしながら、ミソジニーを滲ませる彼は気持ちが悪い。結局車内に取り残され、外に出たら締め出され、しぶしぶ学校に入り込んで。ともうなにがリアルなのかわからなくなる。 ここまで抽象度が高いのに、しっかり不快感だけ残すこの映画のすごさに圧倒される。