「愛がなんだ」の今泉力哉監督が、下北沢を舞台に1人の青年と4人の女性たちの出会いをオリジナル脚本で描いた恋愛群像劇。下北沢の古着屋で働く青年・荒川青は、たまにライブを見たり、行きつけの古本屋や飲み屋に行ったりしながら、基本的にひとりで行動している。生活圏は異常なほどに狭く、行動範囲も下北沢を出ることはない。そんな彼のもとに、自主映画への出演依頼という非日常的な出来事が舞い込む。「愛がなんだ」にも出演した若葉竜也が単独初主演を務め、「少女邂逅」の穂志もえか、「十二人の死にたい子どもたち」の古川琴音、「お嬢ちゃん」の萩原みのり、「ミスミソウ」の中田青渚が4人のヒロインを演じる。成田凌が友情出演。

映画.comより

今泉力哉監督作品の和やかさに潜む狂気的な愛っておもしろいなあと、「あの頃」や、特に「愛がなんだ」で感じたのだが、この「街の上で」でも違った意味合いで感じることができる。

もう愛がないと主人公をふる女性、雪(穂志もえか)のなんとつまらなさそうな女のこと!!といきり立ちそうになるくらいに単純に青(若葉竜也)が不憫だが、若葉竜也ってほんと不幸な感じが似合うから笑ってしまう。マイクタイソンと一緒にご飯は食べなさそうだもんな。ローソンで買ったピノとか座り込んで古川琴音とわけっこしてそうだもんな(そんな古川琴音も出演しているが別に付き合ってはいないしなんならしばらくきまずい二人になる)。

確か以前Twitterで今泉力哉監督は、登場人物が中途半端なままフェードアウトするのはワザとだ、という趣旨のツイートをしていたとおもうのだけれど、この映画はたしかにそれぞれの人物がどうなったかの顛末までは描かれていない。そのあたりも非常に巧い監督だなあとますます好きになる。

まあ別にここまで静かにする必要もなくて、音楽のひとつでもかければいいのに、そのあたりはやっぱり日本の映画イズムを忠実に継承している人なんだなと感じる。おそらくめちゃくちゃ監督自身の満足度高いであろう深夜の長尺二人トークはこの映画の見どころの一つ。最初は関西弁が急に出てきたので、役者が思わずポロっと方言出ちゃって、「まいっか」的に流したのかなあと思っていたら、ふつうにその後もがっつり関西弁。しかもべつにそのルーツについてわざとらしく会話するわけでもなく、標準語と関西弁がなんのエクスキューズもなくやりとりされている。そこも素敵だなと思った。あと、ああいう距離感とあの雰囲気と若葉竜也の話の聞き方、中田青渚の笑顔などがあまりに多くの人たちの大学生時代を思い出させるような、そして私にとってはなつかしさと「ああああもう一回こういうのしてえええ」があふれて止まらない。「愛がなんだ」にしろ「あの頃。」にしろ、今泉力哉監督はいつも心をかき乱しにくる。ずるい。

そういうわけで、ぜひのんびりしたい休日の午後にどうぞ。