日頃陰謀論がtwitterで流れ、ついにはYoutubeの広告にまで「世界を牛耳る7人を知っていますか!?」といった内容のものが流れる始末。自分が見ているのなんてゲーム実況だけなのに。

スピリチュアルに陰謀論は一切耳を貸す予定のない私だが、もし私がこの映画の世界の住人だったとしたら、真っ先に主人公を同じカテゴリーに入れているだろう。

「ソウ」シリーズの脚本家リー・ワネルが監督・脚本を手がけ、透明人間の恐怖をサスペンスフルに描いたサイコスリラー。富豪の天才科学者エイドリアンに束縛される生活を送るセシリアは、ある夜、計画的に脱出を図る。悲しみに暮れるエイドリアンは手首を切って自殺し、莫大な財産の一部を彼女に残す。しかし、セシリアは彼の死を疑っていた。やがて彼女の周囲で不可解な出来事が次々と起こり、命まで脅かされるように。見えない何かに襲われていることを証明しようとするセシリアだったが……。主演は、テレビドラマ「ハンドメイズ・テイル 侍女の物語」のエリザベス・モス。

映画.comより

透明人間という古くからある題材だが、その映し方は様々だ。見えないものを映すという一見矛盾した行為を、映画監督はあらゆる方法で試みた。2000年のポールバーホーベン監督の「インビジブル」は主人公が透明人間となり凶変する。ファンタスティックフォーのように、特殊能力の一つとして登場することもある。今回はというと、恋人を束縛するために透明人間になる。

話の流れ上仕方ないのだが、あまりに一瞬にして主人公への信頼が失われていき、悲しくなる。知人にかくまってもらい、そのお礼も込めて彼の娘に学費として毎月10万振込み(そのお金は透明人間になった元カレの遺産なのだが)、あれだけ幸せそうにしていたのに、透明人間の彼が主人公を陥れるために娘をしばいた結果、「ひどい!なんてことするの!パパ!この人私を殴った!!」と父親に報告し、「でてってくれ!!」と言われる。悲しい。精神不安定扱いだったからやむを得ないとでも考えていたのだろうか。

結局妹を殺人したことに仕立て上げられ、精神病院送りにされ、そこでもしきりに「あいつが透明になってちかくにいるの!」と主張する主人公、はっきり言ってヤバい。信じなくて当然だ。完全にイッてる。でもこれは映画。本当に透明人間は存在するのだ。

ガバガバ警備の精神病院は一瞬にして駆逐され、天才科学者が死んだあとの家はなぜか誰にも手を付けられることなく博物館のように残っており、主人公がのちに訪れたときは当然電気も通っていた。

その後事態は急変し亡き天才科学者の家で事件が起きるのだが、その後もとくに事件などなかったかのようにその家に住み着き、平和に暮らす様子がうかがえ、いったいこの国の警察は何をやっているのかと信じられない気分になる。

といったようにまあまあガバガバ設定で突っ込みだすとキリがないのだが、主人公の七変化はこの映画の見どころの一つ。狂気的にも被害者的にも見える、非常に巧妙な役作りがなされている。

そして何よりこの映画が、透明人間というエンタメでおおわれているが、実態はDV被害に苦しむ女性の話であるということは忘れてはならない。