久しぶりに個人的に読んで面白かった記事やコラムを5本挙げる。


にがにが日記-人生はにがいのだ。-

不定期
岸政彦
https://kangaeruhito.jp/articlecat/niga2diary

社会学者であり、作家でもある岸政彦のコラム。彼独特の日常の切り取りと登場人物のリアルな会話とリアクションが面白い。彼の著書「断片的なものの社会学」は自分にとってのバイブル。鋭い視点と深い考察とそれを豊かな言語能力で表現するところに感銘を受けて以来、ファンである。彼のコラムは自分の小話(このアカウントで小話してます)にも活かされている。



菅田将暉が語る、芸術文化への問題意識。米津らと共有する価値観

2019年7月10日
インタビュー・テキスト 柴那典
https://www.cinra.net/interview/201907-sudamasaki_yjmyk

菅田将暉のインタビュー。彼自身の表現についての価値観やそれに対する危機感、使命感などを赤裸々に語ったもので、非常に興味深いし、意義のあるものだと思う。こういう姿勢を若手俳優がきちんと抱き、それを表明することは今っぽいし、それが許容される社会でもある(それだけ菅田将暉という人間に信頼が集まっている)んだなと感じる。

大衆をちゃんと振り向かせるということを、やっぱり僕らもやっていかないといけない。映画館に人を呼ばないといけないし、ドラマを見てもらわないといけない。若手俳優が活躍できる場も少なくなったし、今僕らが頑張らないと、本当はもっと評価されていい人、もっと人に見られるべき人の活躍できる場が、僕らの下の世代ではなくなってしまう。




令和⼀発⽬のブレイク芸⼈フワちゃんと、その仕掛け⼈が語る放送作家の新たな道とは

2019年7月26日
聞き手・文・写真:立石愛香
https://finders.me/articles.php?id=1173

2019年、テレビでも大活躍のフワちゃんのインタビュー。仕掛け人の長崎周成とともにここまでの経緯を語っている。
わかっていたことだが、フワちゃんは遠慮がない。それはズバズバと言っちゃう発言もそうなのだが、誰とでも同じテンションで、良いものは良いとすぐに認めてしまうフラットさが遠慮ない。既存の芸能ピラミッドの外からやってきた人なので、誰に対しても臆せず「カワイイ」を言ってのける。簡単に言ってしまえばすごく令和的なタレントのスタンスであり、これこそがyoutuber(などの既存の芸能人としてのステップアップを踏まない人)としての最大の強みだと思う。

―― YouTube界のトップクリエイターの方とコラボ動画を出したり、フワちゃんが指原莉乃さんや渡辺直美さんたちと一緒に映っている写真がYahooニュースのトップに上がったりしていますよね。フワちゃんのその愛されるコミュニケーション能力はどこから来ているんでしょうか?

フワちゃん:誰かとつながりたいじゃなくて、私のYouTubeを観て友達になりたいと来てくれた人のパターンが多いですね。指原さんはあちらからコンタクトとってくださいました。渡辺直美さんは本当に道端でバッタリ会って、それでご飯に行きましょうとなりました。

フワちゃん:私は自分に何もない状態で人脈を広げても意味がないと思っていて、自分が好きなことや活動していること発信して、それが好きだと認めてくれる人を1人まず作れたら、そこから勝手に輪が広がっていくと思います。

長崎:一般人でも好きなことを発信しまくっていてフォロワーがめっちゃ多い人がいるじゃないですか。そういうパワーが圧倒的にフワちゃんにはあって、世間とニーズが合っていたんじゃないかな。
フワちゃん:だから誰かとご飯に行かなきゃとか、そんなことを思う必要はなくて、それより自分のやるべきことをしっかりやった方がいいと思う派です。だから、みんなも人脈とかじゃなくて好きなヤツと遊ぼう!

<中略>

フワちゃん:一回友達になっちゃったら、一生友達だしずっと好きな人達とつるんでいたい。もちろん人脈を広げるために知らない人とご飯を食べるのが好きという人は、全然それはそれでいいと思います。でも、無理して接待するより家に帰って嫁とご飯を食べたほうが楽しいんじゃないの、分からないけど。

わかってはいたが、やはり改めて生でその発言をテキストとしてみると、すごい時代だな、チャンスあるな、って思ってしまうと同時に、いやいやこれはフワちゃんの持って生まれた人たらしの才能のおかげだなとも思う。



ステラ・ドネリーを聴くことは世界を良くする第一歩!

2019年3月26日
文/上野功平
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/21157

去年ブレイクスルーを果たし、日本でもフジロックに参加するなど勢いを加速させたシンガーと言えばステラドネリーだろう。愛らしいルックス、嵐の大野もテレビ収録で着用していた彼女が口いっぱいにスパゲティを頬張る写真がプリントされたTシャツも有名なように、その天真爛漫さが人気の一つでもある。
ただ、じゃあ彼女はシンプルに「かわいい」「キュート」で消費されるためだけのお人形かと問われれば全くそれは逆と言っても良いくらいの、メッセージを強く放つ一人の女性であることがこの記事でわかる。むしろそうやって男たちが「かわいい」と女性たちを支配しようとする力に対してはっきりとノーをつきつけるのだ。

親友からレイプ被害を告白された体験を元に書かれたこの楽曲は、レイプ加害者よりも被害者ばかりが責め立てられる〈ヴィクティム・ブレーミング〉や〈セカンドレイプ〉といった二次被害の問題を痛烈に射抜き、ステラの寄り添うような優しいギターの音色と歌声も相まって、図らずも〈#MeToo〉時代を象徴するアンセムとなった。

<中略>

大学中退後は、カヴァー・バンドの一員として結婚式や製薬会社の表彰パーティーなどで演奏。当時のレパートリーはB-52’sからAC/DC、さらにピンクまで何でもござれだったよう。だが、紅一点だからとハイヒールやドレスで着飾ることを強要され、酔っぱらいにセクハラまがいの発言をされることもあったそうで、男女の格差や不平等に憤りを感じていたという。

ステラは男性をいたずらに攻撃することやフェミニストを気取りたいのではなく、ただ純粋に〈より良い世界になること〉を願っているひとりの女性なのだ。

生放送の“当日発表”に賭けるテレビ局、リスク覚悟で小バズを狙う意味

2019年9月21日
著者 : コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志
https://otonanswer.jp/post/49381/

キングオブコント2019では、決勝進出者を生放送であきらかにする手段を試みた。普通ならあらかじめ宣伝として進出者を発表しておいた方が視聴率は狙えそうだし、なにより段取りが楽なはず。でも、そのセオリーをあえて無視して、実験的な試みを行ったテレビ局の裏側と真意を分析した記事。

例えば、「キングオブコント2019」は準決勝に残った34組のうち、決勝に出演する10組を予想する声が飛び交っていますし、発表前後はさらにネット上で盛り上がるでしょう。つまり、視聴者に予想してもらうことで小さくバズらせ、「番組に参加している」という感覚を与えて番組を見てもらおうとしているのです。

また、その一方で、テレビ局の過剰な煽りは逆効果であることも、実例と共に挙げている。

生放送での当日発表が決まったら、制作サイドは視聴者に向けて「緊急発表!」「番組から大切なお知らせ」「今夜、出演者の誰かが結婚を発表」などのフレーズでPRを行います。
しかし、それらのフレーズに対する肝心の発表が、視聴者の期待を大きく下回ってしまうと非難必至。「大げさすぎる」「見て損した」という落胆どころか、「ひどい番組」「二度と見ない」などの拒絶を招いてしまうケースも見られます。




以上が今回紹介する5本だ。
長らくこのまとめ記事をやっていなかったので去年のものが多いが、いい記事はいつでも良い読み物なので、じっくり読んで、なにか一つでも気づきがあればなと思う。例によって割とバズった記事ばかりなので、目にしたことある人が多いとは思うが、そこはご了承ください。