突然ですが、2010年代のフェス文化の隆盛について語ってください。

みなさんはどの切り口で語りますか。

おそらく、4つ打ち文化、なんてワードは必須になってくるかもしれません。定型文と化した「フェスで勝ち残るためにどんどん速く、踊れるナンバーが増えてきた。」は是が非でも入れたい一文である。
その恩恵に与ったのが四つ打ちバンドだ。KANA-BOON、キュウソネコカミ、ゲスの極み乙女。、KEYTALK、夜の本気ダンス….

それぞれをどこまで四つ打ちに含めるかは各々の捉え方だし、そこから「そもそも四つ打ちはアジカンが~ベボベが~トライセラが~」とルーツに結び付けていく手法もあるだろう。

私もその考えに全くの同意で、おそらくこれ自体は揺るがない事実であり解釈だと思っている。



フェス=若手のためのもの?

ただ、果たしてフェス文化は若手の登竜門だけだったのだろうか。なんて考える。

逆に、フェス文化が花開いてくれたおかげでめちゃめちゃ息を吹き返したバンドとかもいるんじゃない?といじわるに思ってしまう。

セールスが伸び悩んでもフェスでは大盛況という図式が成立して、実質な売り上げ云々より、音楽シーンとしての地位を確固たるものにしているバンドらちらほらいる。

一つの例として10-FEETを挙げてみる。2007年から自主主催フェス、京都大作戦を開催しており、その知名度と人気は留まることを知らない。チケットは即完、中止になろうがなんだろうがとにかく熱いファンが大量にいる。日本を代表するフェスのひとつになった。
私自身、彼らの音楽は全く聴かないのでコメントのしようがないが、それでもなお毎月一回は彼らの名を耳にしている気がするし、存在感はピカイチだ。ただ、単純なCDの売り上げだけで見ると、いまだ1位をとった作品はない。2010年以降に出したシングルで最高位は「太陽の月」で4位(2017年)。アルバムは「Fin」が2位になっている(2017年)。アルバム2位はすごいが、これだけの圧倒的な人気とロック界での地位、知名度を獲得しながら、3年アルバムを出していない。事情は知らないが、2019年のロッキンの2日目のトリを務めているバンドであることは付け加えておく。ちなみに別日のトリは同年ドームツアーを行ったBUMP OF CHICKEN(彼らは2010年代に出したアルバム4作全て1位である)、こちらもドームツアーをしたUVERworld(同年に出した最新アルバムは初の1位)、 Clean Banditや Gabrielle Aplinを客演として迎えるなどワールドワイドな活動も行うSEKAI NO OWARI(同年だしたアルバム2枚は1位2位独占)である。2019年のロッキンのトリは、5組中3組が同年にオリジナルアルバムを出しており、1位を獲得している。

気を悪くしたのなら謝るが、決して取り違えないでほしいのは、だからこそ10-FEETの魅力と価値が見えてくるのだ。3年もアルバムを出しておらず、当然新曲を引っ提げて登場するわけでもないバンドが、なぜ2019年にトリを張れるのか。それこそ、フェス文化でだれよりも切磋琢磨して磨いてきたブランディングの成果なのでは、と当然の話だが改めて思うのだ。

むしろ他のバンドにそんなことができるのか、それは言うまでもないだろう。


もう一つ例を挙げるなら、Dragon Ashかなと思う。

シングルは2017年の「Beside You」が最高10位、その後配信限定のみでフィジカルでのリリースはない。アルバムはこちらも2017年の「MAJESTIC」で3位を最後にリリースされていない。それでも圧巻のパフォーマンスで、自主開催フェスを持たずとも、ありとあらゆるフェスでメインを張っている。若手が出てきては消え、中堅勢がじりじりとステージサイズを小さくしていくなかで、彼らは完全に”掴んだ”。
会場のサイズが全てではないし、意図してサイズを選んでいることは重々承知した上であえていうが、2019年にアリーナやドームツアーは行っていない。ちなみに、さっき10-FEETで挙げたロッキンの5組目はDragon Ashである。その直前はスピッツであり、彼らも同年にオリジナルアルバムをリリースしており、この年は彼らが朝ドラの楽曲を作り、大きな話題を呼んでいた。

フェスがあったら、なかったら。

たらればの話は不毛なのですべきではないが、色々な売れ方と地位の確立のしかたがあるのは事実だ。売り上げだけが序列じゃないし、ライブだけが本当の姿でもない。
上で挙げたアーティストは決して恩恵を受けているというよりは、むしろ作ってきた人間だし、恩恵を与えてきた側でもあるという見方ももちろんできるのだけど、フェスの存在抜きで彼らを語ることはできないようにも思う。



今年のロッキンは中止になったが「ロッキンジャパン2020タイムテーブルを予想してみた記事」によると、King gnuとサカナクションとback numberをトリと予想しているが、どうなっていたのだろうか。