タッキー&翼が解散した。それを各テレビ局は一斉に報じた。報道番組でさえ時間を割いて伝えた。そりゃ滝沢秀明と今井翼は圧倒的な人気を誇るアイドルだからだ。ファンも多いし当然だろう。

ただ、タッキー&翼というユニットに着目した時、そこまでのアイドルなのかと首をひねりたくなる。もちろん、オリコン1位も獲得してるし大きなステージで何度もライブを行なっている。テレビにも度々出ていたし知名度は高い。だけど代表曲がない。ファン以外の一般人への浸透率が低い。そもそもこの解散までに、活動休止していたことを知っている人など何人いたのだろうか。
ジャニーズはデビューさえできればそれなりに形になることは保証されている。というか、それで食べていけないのは相当ヤバいか相当ジャニーさんに嫌われてるかもうすぐにでも辞めた方が…言い過ぎた。
ここからは主観が入るが、ABC-Zみたいな近年稀に見るクオリティのアイドルもちゃんと年に何枚もCDを出せるしレギュラー番組を持てるし単独ライブもできる。ファンも多い。でもそれはジャニーズだからだ。ローカルアイドルで始めていても同じ結果になるかというのは怪しい。いや、名古屋発の爆発的な人気を誇るBOYS AND MENですら世間では「は?」レベルなんだから相当きつい。ほんと男のアイドルはキツい。楽曲派とか生まれないからキツい。一番人気に集中するからキツい。総選挙とかしてもジャニオタの購買意欲は掻き立てられないからキツい

個人の努力がどうとかは知ったこっちゃないが、とりあえずジャニーズからデビューすればなんとかなる。なんとかなるような世界なので、彼らを評価するときは慎重であるべきだ。タッキー&翼を従来通りに「オリコン1位獲得!!ドーム公演あり!」みたいな評価の仕方をするとフェアで無くなる。ジャニーズは売上枚数とか公演数とかテレビの出演数とかファンの数で測ってはいけない。私にとってジャニーズとは、「世間にどれだけ浸透しているか」こそが肝だと思っている。それこそがジャニーズだからこそ達成できる真の領域だと思っている。数字にはならない影響力を加味しなければならない。タッキー&翼は確かに個人個人は別格で有名かもしれないが、それをそのままユニットの評価につなげてはならない。過大評価が拡散されていく。

と、書いてきたが、別に彼らを非難したい一心で書いている訳ではない。むしろ、そんなこと当然でしょ、とすら思う。過大評価なんかあって当然。人は思いたいように思うし伝えたいように伝える。伝えるモノが人間なら主観は当然入る。この文章を書く私もそう。もしかしたら私だけタッキー&翼の曲をそんなに知らないだけで実は老若男女、皆がビーナスをフルコーラスで踊りながら歌えるかもしれない。私がそれを知らないだけかもしれない。そんなものだ。全てを見渡せる人などいない。

だとしたら気をつけるべきは発信する側ではなく受け取る側だ。

ちょっと話を変える。

音楽ライターという職がある。音楽雑誌にディスクレビューをしたりアーティストにインタビューしたり音楽シーンを切り取って語ったりするのが仕事のひとつだ。ライターはもちろん音楽に詳しい。音楽が好きすぎて語りたくて仕方なくてライターになる、のだろう、多くはね。となると自分の青春の音楽はどうしても美化する。あたかもすごかったかのように語る。私は渋谷系の過剰な持て囃され方をみてそう思う。今40代のライターの青春時代の多くは、テレビで流れるポップスではなく、フリッパーズギターみたいなツウ好み(それがどこまでツウかは知らないが)を聴いていたのだろう。そんな人ばかりがライターになるとどうしてもどの雑誌を見てもどのライターの記事を読んでも渋谷系を礼賛する。でもそれは当時の時代を正確に反映しているかというと疑わしいものがある。なぜならライターの層が偏っているから。

だから熱い音楽は良きに語られる。ハイスタもブラフマンも礼賛が続く。語りたくて仕方のない人なんだ。そりゃ熱い音楽を聴く。音楽について考えたこともない人はブラフマンなんか聞くわけないし、知る由もない。だったらそういったアーティストをライターが絶賛していても、その当時どれだけ人気があって社会的な影響を及ぼしていたかを推し量るには不十分である。私たち読者はそこをしっかり見極めなければならない。タッキー&翼のファンがみんなライターになったら、彼らは神アイドルで日本国民全員が憧れた存在として祀られるだろうし、ゆずのファンがみんなライターになったらゆずは世界から尊敬されるユニットとして紹介されるかもしれない。所詮そんなものだ。人間なのだから。

ただ、ライターには大切な役目がある。それは音楽業界の中の影響をリアルに語ること。たとえばハイスタなんて一般層には1ミリ程度しか影響は与えていないかもしれない。ハイスタがいようがいまいが当時のお母さんのお弁当の中身は変わらないし浜崎あゆみがいなくなりもしないしプリクラはあったろうしルーズソックスもコギャルも続々登場していただろう。でも、音楽ライターと同じように当時ハイスタに影響された若者はギターを持ちバンドを組み同じような音楽をこぞって始めた。そこから計り知れないほどのバンドが誕生した。彼らがいなければ音楽シーンは確実に違っていた。それは一般層に聞き取りをしても絶対に浮かび上がってこない実態だ。ミュージシャンもまたライターと同じように偏った層なのだから。
一般層が何気なく聴いている音楽を作っているミュージシャンはライターと同じように世間に知られることもない音楽を聴いて育ってきている。それは間違いなく社会を、世の中を動かしている。だからライターがそこを拾う。私はそのおかげでテレビだけでは発見できないアーティストを知ることができる。
だからこそ過大評価と拡大解釈は慎重に受け止めたい。母集団の偏りを意識する必要がある。いつでも公平公正であれと言うつもりはない。好きだからこそキチンと捉えたい。でもなきゃただの「関ジャム」さながらのむず痒さを生んでしまうだけだから。