ここでは、ファンク、ソウルミュージックやR&Bに含まれる楽曲を制作したミュージシャンに贈られる。
優秀賞
宇多田ヒカル
ENDRECHERI
Official髭男dism
折坂悠太
Suchmos
平井 堅
BRADIO
大賞
清水翔太
正直音楽にそれほど興味のない人たちにどこまで今の清水翔太がちゃんと伝わっているだろうか。去年の「FLY」にしろ、今年の「WHITE」にしろ、実践的な音楽を数多くこなしてタフになってきた彼をみんなは知っているのだろうか。とかいうとどれくらい自分自身が分かっているのかと問われそうだが、少なくとも、加藤ミリヤとのコラボをした歌の上手いお兄ちゃんという評価で終わったりはしないだろう。ポップスという基準は失わず、かつ洋楽のR&Bのエッセンスは臆することなく取り入れる。抜群のバランス感覚と多くのラッパーたちとコラボするフットワークの軽さは日本の音楽界でもトップクラスだ。歌のうまさをひけらかさず、むしろトラックメイカーとしての才能を発揮していることはかつてピコ太郎の楽曲をかっこよくアレンジして話題になったことでもう証明されているはずだ。あとは認知。彼は十分すぎるほどのファンを獲得したが、まだ獲得できていない層がある。私たちのような小言の多い音楽ファンだ。彼なら一発で私たちをかっさらうこともできるはずだ。「Silver&Gold」のような日本的なメロディを活かした楽曲も、「alone feat.SALU」のようなアメリカのヒップホップを下敷きにした楽曲も楽しみ方は様々だ。個人的にはもっと正しく最新型の評価をされてほしいアーティストの一人である。
総評
2016年にフランクオーシャンが「Blonde」を発売した時が世界のR&Bの頂点だったとしたら、2018年は日本においてのR&Bの現在の頂点だと思っている。宇多田ヒカルがフックアップした小袋成彬がソロデビューしたり、新人ながら折坂悠太が大きな注目を浴びたりと、宇多田ヒカル当人も含めて日本の音楽シーンに「本格的なR&B」のような何かがうごめいている。おそらくまだこれは序章だ。SuchmosやNulbarichのような音楽から三浦大知にも近い、コンテンポラリーな音楽が増えてくる。米津玄師もR&Bと呼んで誤解はないだろう。「Flamingo」のような独特な節回しも日本版R&Bだ。日本が今世界で起きているラップ(トラップ)ブームになるかと言われれば、それは怪しいものもあるが、少なくともR&Bはきている。これがピークではない。来年はさらに更新するだろう。ロックシーンでもオシャレにさらっと歌い上げることよりも熱っぽく魂の叫びかのように歌うアーティストの方が支持されはじめている(tetoやAge Factory、MOROHAなど)。音楽が再びメッセージ性を帯びてきた。長らく続いたアイドルに代表されるようなエンターテインメントとしての音楽の役割から、本格的に聴き込むものへと変化している。時代はいつでもカウンターだ、とは本当にそのとおりで、これからはその波がしばらく続くのだろう。続かなかったら…それは恥ずかしいのでスルーしてほしい。
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