ここでは今年最も素晴らしいポップスを発表したアーティストに贈る。

優秀賞

あいみょん

青山テルマ

SILENT SIREN

Hey! Say! JUMP

星野源

ミツメ

MONKEY MAJIK

米津玄師




大賞

森山直太朗

 

人間はなるべくネガティブな方がいい、は少し暴論かもしれないが、ミュージシャンに限ってはそれは一つの大きな武器だ。ポジティブな事ばかり歌うアーティストもいるが、それいがいに大きな武器がないと生き残るのはシンドイ。一方で、ネガティブで闇を抱えた人たちの紡ぎだす歌詞は説得力があり、人の心を揺さぶる。全員は無理でも、揺さぶられる人はたくさんいる。その人たちに向けて、必死に歌うことが許される。森山直太朗はいつ聴いても彼の本心がある。泥臭さがある。不器用で露骨になった汚い感情がこぼれでている。でも下品じゃない。いつだって人間の本質を歌っているだけだ。その言葉たちを最大限伝えるためにメロディをつける。時に壮大に、時にシンプルに。アルバム「822」はまるでof monsters and menのようなアコースティックとゴージャスさを兼ね備えた勇敢な旅路のような楽曲が何曲かある。言葉の重みがより増してくる。聴いているとふつふつと勇気が湧いてくる。「絶対、大丈夫」なんて言われてもケチをつけようと思わない。なんだか「絶対、大丈夫」な気がしてくる。だから信頼できる。無責任に私たちを現実社会に放り出したりしないから。それが彼の強みだから。

総評
ポップスというジャンルはかなり大雑把な括りだと自分でも思う。ジャズでもエレクトロでもロックでもヒップホップでもない、”それ以外”と形容したくなる音楽。人によってはそれを「売れ線」と呼ぶが、それはキャッチ―ソングに対する最大の賛辞である。なるべくたくさんの人に愛してもらって、なるべくたくさん聴いてもらう事こそが職業作家においての誉れなのだから。じゃああとはいかにそこに自分のやりたいことやメッセージを詰め込めるか。こは大きく才能に影響される。星野源はそれを実行する類い稀なる才能の持ち主だ。自身の形容するブラックミュージックやYMOリスペクトのサウンドやグロッケンを国民的ドラマにぶち込むことも、大人気ドラマの主題歌にすることも、国民的アニメの主題歌にすることもいとわない。それを受け入れてもらえる自信がある。ポップスにおいての命題はこの「いかにやりたいことを実現するか」である。そう思うと、「これをやれれば売れる」「誰に向けてどんな音楽を作るか」が明確かつ「自分のアイデンティティが入っている」アーティストばかりが優秀賞に並ぶ。青山テルマはまさにそれがよくわかる一例だろう。「そばにいるね」で大ヒットした彼女は、本当の自分とはかけ離れたスタイルを演じさせられていたが、近年それをぶっ壊しにきている。バラエティに出演しては歯に衣着せぬ発言と、過激なわんぱく少女エピソードを繰り広げ、共演者と視聴者を驚かせる。そしてこの「HIGHSCHOOL GAL」では自身のヒップホップなどに対するリスペクトと、今のトレンドを踏襲したトラップミュージックを披露している。売れるために自分を捨てる、が通例だった音楽業界から、パーソナリティ主義へと舵を切り始めている。それはある意味で音楽ビジネスとしての理想的な姿かもしれない。ポップスという多くの制限を抱えた中で、いかに自由に、リスナーに媚びるのではなくリスナーを教育する視点でものづくりができるかが大切になってきているのだと思う。

2018年間音楽賞一覧に戻る