お待たせしました。年間ベストトラック100の発表です。以下がルールです。

1. 2021年12月~2022年10月までに配信、発売、公開されたシングル、アルバム、EP全ての楽曲が対象
2. リマスタリング等は含まないが、セルフカバーは対象とする

100位~51位

100位 THE BACK HORN – ユートピア
99位 宇里 – Birthday
98位 どんぐりず – Funky Grandma
97位 aiko – 号泣中
96位 JO1 – Walk It Like I Talk It
95位 原 由子 – スローハンドに抱かれて (Oh Love!!)
94位 岩田剛典 – Only One For Me
93位 Homecomings – i care
92位 May J. – Psycho (feat. 大門弥生) 
91位 milet – jam (with iri)
90位 naomi paris tokyo – Sad Vacation
89位 chilldspot – yours
88位 Liza – Villain
87位 ピコビットブラザーズ with 石田ちゃん – Ⅱコンの一撃
86位 三浦大知 – Le Penseur
85位 あいみょん – スーパーガール
84位 Anly – Homesick 
83位 星野源 – 喜劇
82位 木村カエラ – Color Me feat. マヒトゥ・ザ・ピーポー
81位 BREIMEN – あんたがたどこさ
80位 ROTH BART BARON – 赤と青
79位 No Buses – Daydream Believer (feat. Bim)
78位 Helsinki Lambda Club – Mystery Train (feat. Wez Atlas)
77位 Ryu Matsuyama – kid feat. 優河
76位 UlulU – 3分間だけ愛されたい
75位 ¥ellow Bucks – GIOTF (feat. JP THE WAVY)
74位 adieu – ひかりのはなし
73位 ASIAN KUNG-FU GENERATION – 星の夜、ひかりの街 (feat. Rachel & OMSB)
72位 優河 – fifteen
71位 BIM – Anchovy (feat. どんぐりず)
70位 SOCKS & DJ RYOW – Osanpo
69位 Survive Said The Prophet – Beauty Queen
68位 七尾旅人 – 未来のこと
67位 崎山蒼志 – I Don’t Wanna Dance In This Squall
66位 VILLSHANA – God’s plan (feat. SOCKS)
65位 羊文学 – くだらない
64位 4na – バッドルーティン
63位 YeYe – 素っ頓狂 (feat. BIM)
62位 パソコン音楽クラブ – KICK&GO (feat. 林青空)
61位 ao – チェンジ
60位 Furui Riho – Sins
59位 LAGHEADS – Simple Song (feat. HIMI)
58位 BREIMEN – チャプター
57位 藤井隆 – メモリアフロア
56位 大門弥生 – M.O.B (feat. JNKMN)
55位 春ねむり – 春雷
54位 iri – Waver
53位 Kroi – 熱海
52位 米津玄師 – KICK BACK
51位 Crystal Kay & Daichi Yamamoto – Gimme Some

50位~21位

50位 GLIM SPANKY – 形ないもの
49位 七尾旅人 – ドンセイグッバイ (feat. 大比良 瑞希)
48位 和田アキ子 – 太陽に捧ぐ歌
47位 PELICAN FANCLUB – 俳句
46位 miwa – あたりまえに
45位 SEKAI NO OWARI – Habit
44位 King Gnu – 一途
43位 Tomggg & Merry Lamb Lamb – 沒關係 it’s okay!!
42位 the band apart – The Ninja
41位 大比良 瑞希 – 33歳のエンディングノート
40位 ONE OK ROCK – Save Yourself
39位 gato – 不逞 (feat. Ks Zerry)
38位 Cody・Lee(李) – 愛してますっ!
37位 サカナクション – ショック!
36位 レキシ – マイ草履 feat. にゃん北朝時代
35位 UA – 微熱
34位 ASIAN KUNG-FU GENERATION – You To You (feat. ROTH BART BARON)
33位 CHAI – HERO JOURNEY (feat. Superorganism)
32位 Official髭男dism – Subtitle
31位 水曜日のカンパネラ – 織姫
30位 三浦透子 – 点灯
29位 カメレオン・ライム・ウーピーパイ – Whoopie is a Punkrocker feat. Stephen Harrison
28位 ego apartment – huu
27位 MONDO GROSSO – FORGOTTEN feat. ermhoi (Black Boboi / millennium parade)
26位 Vaundy – 走馬灯
25位 warbear – 気球だよ
24位 森山直太朗 – 素晴らしい世界
23位 Chilli Beans. – lemonade
22位 Official髭男dism – ミックスナッツ
21位 羊文学 & LÜCY – OH HEY

20位~11位

20位 サカナクション – プラトー
19位 milet, Aimer & 幾田りら – おもかげ
18位 テークエム – 奇襲作戦!!! (feat. CHICO CARLITO & T-STONE) [pt.2]
17位 toconoma – Quest4
16位 aiko – 友達になりたい
15位 後藤輝基 – Carnival
14位 chelmico – Meidaimae
13位 三浦透子 – 私は貴方
12位 MONDO GROSSO – STRANGER feat. 齋藤飛鳥 (乃木坂46)
11位 Ado – 新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)

Vaundyが制作してmilet、Aimerと幾田りらの座組で歌わせたプロデュースの勝利。3組ともいわゆる男女コラボのような男性ボーカルに華を添えるような必要性もないしそもそも才能の無駄遣いなわけで。これが正解だと思う。あまりに強い。テークエムの「奇襲作戦!!! (feat. CHICO CARLITO & T-STONE) [pt.2]」は「奪うとき強いのきっしょ!!!/でどこいったのオリンピックの1兆」が今年のマイベストフレーズ。aiko「友達になりたい」はカップリングながら最高傑作。後藤輝基「Carnival」はイントロとコーラスが素晴らし過ぎて聞きほれる。どの曲もベスト10に入れ損なったものばかりで、悩んだ結果のこの順番になった。

10位~4位

10位 adieu – 旅立ち

歌謡でありロックでありサイケでもある多面性をみせるbetcover!!こと柳瀬二郎提供曲。そこにYaffleの編曲が入り、サウンドプロダクションはより深みを増す。若き新世代がタッグを組み、どこか退廃的なムードを漂わせながら「旅立ち」と題しておいて「いい加減旅するのやめて 大人になれたらいいのにね」なんて言ってのけるのだから柳瀬二郎という人間の懐のでかさに圧倒される。betcover!!では歌わないであろう楽曲なのに柳瀬二郎印が克明に記されてあるのが面白い。

9位 20th Century – 水曜日

「水曜日になれば少し足取りも軽い」なんて全く同意できない一節から始まるトニセンのニュータイプの楽曲。去年はあいみょんに、今年はV6を活動停止させた後に開始させた長野、井ノ原、坂本の3人組グループ20th Centuryに楽曲を提供したミツメ。水曜日はなぜか口に出したくなるのも事実だ。水曜日のダウンタウン、水曜日のカンパネラ。水曜日が消えた。木曜日より先の休日に遠く、火曜日より前の休日に遠い。50歳を超えていく彼らにとって水曜日はインディロックのギターの揺れに共鳴するものがあるのか。サニーデイサービスやグソクムズともタッグを組み、ひとつのシーンを数珠つなぎのように時代を縦断していく彼らは新しいインディロックシーンを総括するグループになれるのかもしれない。

8位 羊文学 – 光るとき

一音目から羊文学とわかるオリジナリティはもはや説明不要だが、今まで以上にダイナミズムが増幅され、静と動、「鎮魂」をテーマとした歌詞の世界観は十二分にその音楽性を担保している。

7位 三浦大知 – 燦燦

ちむどんどんというドラマが三浦大知の故郷である沖縄を舞台としていること。パーソナルな部分で祖母が亡くなったこと。過去を振り返りながら支えてもらっている人たちの事を想い、順光線の先にある景色に向かって歩く三浦大知が「大丈夫、ほら、みていて」と力強く語る。ちむどんどんがどんな話だったのかはわからないが、この曲を起用したことから膨らむイメージは”家族”である。ある意味で故郷沖縄を打ち出す作品は今まで少なかったように思うし、ここまで自分語りを入れる曲も少なかったはずだ。オーケストレーションの盛り上がりとメロディ展開の秀逸さもさることながら、三浦の大きなコーラスなしで完成させるダイナミズムはただただ圧倒される。

6位 菅田 将暉 – 惑う糸

サビのキーとなる部分でも高音を使用することがないのは近年の楽曲では珍しいがVaundyが常套化させてる手段でもある。必然的にコロナ禍か否かを問わない社会の影を投影した人間の心模様を糸になぞらえ、1番と2番で巧妙にコードに工夫を凝らし歌詞と共に前向きな展開を見せていく。これまで菅田将暉はそのカリスマ性を武器にギターシンガーとして時に桜井和寿のような、あるいは米津玄師のようなマルチアーティストのような姿を演じてきた。「惑う糸」ではもっと根源的で朴訥な姿がある。ロックを背負うこともなく、今時のカリスマシンガーでもなく、「僕らこうして忘れて道を進んでいく」と一見後ろ向きな姿勢を突きつける。ただそれは明日を生きるための儀礼であり、正しさをその日で決めないための処世術なのだ。

5位Luby Sparks – Search + Destroy

オルタナティブの海原を1人邁進し続けるLuby Sparksはいい意味で類似性を伴わない孤独なバンドだ。いくらエモポップが再興してるといえ、ここまでエモーショナルでクラシカルなオルタナバラードを作れるだろうか。そこにはThe1975的な新しいロックのアプローチの眼差しもあり、Pale WavesがやってみせたAvril Lavigne世代のフォロワーとしての自覚を見せる楽曲への共振がある。アンセムともいうべき壮大さを備え、効果的なピアノとギターのアンサンブルは目を張る。一度立ち止まってレコーディングに集中できたからこそ、アルバムタイトルでもある「Search + Destroy」を本楽曲に据え、一から構築し破壊してきた。その集大成とも言える楽曲だ。

4位 BUMP OF CHICKEN – SOUVENIR

BUMPらしさを手放したくせに新しいBUMPらしさをすぐに調達してしまうその器用さは時に傲慢さにも映る。メロディはいつもの彼らが大胆にカッティングを活用しながらファルセットにファルセットを重ねて軽快さを生む。「話がしたいよ」ではバスを待つ中の持て余した時間を歌うが、「SOUVENIR」では帰り道で「どこから話そうあなたからもらった帰り道」と語る。常に一対一の対話を好む藤原は、ライブでも「お前に、お前に語りかけてんだ」と指差すが、それは楽曲においても指差されているような、そんな錯覚をおこさせる巧妙さがある。だから誰にとっても「自分の曲だ」と思わせることができる。傲慢でありながら、誰の追随も許さない彼らを認めないわけにはいかないのだ。

3位~1位

3位 Chilli Beans. – School

誰が歌っても器用に歌い上げられる。その強さがまず大きい。UKのサウンドを踏襲しつつ見事なフレームワークで言葉と言葉に空白を作ることに成功している。彼女たちのシンプルさの裏に、頭に「はい」をつけ、「It’s my faultでしょ」と組み合わせる匠の仕業も持ち合わせる。3人がそれぞれ違ったベクトルを持ちそれぞれの持ち場で主張する。その結果がchilli beans.になる。3人で合作したという本楽曲はその魅力に満ちている。結びつかず、バラつかず。彼女たちはある意味危うく繊細な中で連帯していきながら遠からず近からずの人工衛星のような距離感を保って順番も役割も定めないままインディーロックシーンの新しいポジションを提示している。

2位 宇多田ヒカル – BADモード

井上陽水が「風あざみ」を作ったことがいまだに語られるのはその「ありそうでない」単語を作ったからだろう。どうして今までその単語が発見されなかったのか、知らないはずなのに一言で何かが理解できる。「BADモード」はまさにそれに位置するだろう。その対極が「絶好調」になるのだから、やはり対義語として「絶不調」が挙げられるはずなのだが、なぜかそこには腑に落ちない。この曲には絶不調は存在せず、BADモードだけがある。「エンドロールの最後の最後まで観たがる君の横顔が正直言うと僕の一番楽しみなとこ」は何か消費社会に相対するプリミティブな幸せの提示を行なっているようで身につまされる思いになる。この5分に展開させる全ての音楽に感服し、鳴らされた音全てに胸躍らさせる完璧ともいうべき一曲。

1位 Laura day romance – wake up call 待つ夜、巡る朝

どんな顔をしているのかわからなくても、どんな人なのかすら知らなくても、ただその声それだけで恋をしてしまうことが自分にあったなんて、と繰り返し自問する。削ぎ落とされたサウンドとボーカルに引っ張られて乾いた音を出すアコースティックギター。メンバーの鈴木は「生活のなかにおける死生観みたいなものが全体を通したテーマ」とアルバムを語るように、この曲を含むアルバム「roman candles|憧憬蝋燭」は全編通して今までとはまた異なる物語性を保持している。死生観は「美しさだけにかまけていたい」「僕たちに明日はない/他愛無い生活を続けてみせて」と語るように、臆することなく語られている。その言葉の隙間を埋めるように、時にわざと空けるように、ピアノとギターが控えめに鳴る。大サビに入ると音の波に飲み込まれるように体を預け、井上の言葉の船にもたれかかる。井上の口から過度に漏れ出す空気が冷たい霧のように視界を曇らせヒヤッとした温度感にさせる。サビが終わるとまたその霧はスッと切れ、また生活に戻っている。この歌は生活へのラブレターであり、自分にとっても、会ったことない人に恋焦がれるあのカオスな感情に似た何かを植え付けられている。それは本楽曲の霧のようにスッとは消えてくれないのだ。

以上です。

そして、今年もapple musicでプレイリストを作成しました。

ぜひ参考にしてみてください。

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