はじめに

人生初めてのバンプのライブ。その体験はまさに夢のようで、いままで存在自体を疑っていたバンプを生で観た事、同じ空気を吸っていたという事実、全てが奇蹟的なことで夢見心地な体験だった。

しかし、私が見たバンプは私が16の頃でもなく20の頃でもない。28歳を目の前に控えた若者から中年に移行するちょっと前の男性だ。しかも悲しいかな音楽を聴きすぎて無駄な知識やら経験を積んでしまい、純粋な音楽体験による感動はある程度済ませてしまった。もう10代のような「うおおおおおギターが!!」みたいな初期衝動はない。感動はもちろん今もするけど、すっかりそのハードルも上がってしまった。

長々と書いたが、要するに「もうバンプの音楽自体で感動するほどピュアではなくなった」という事実がある。

すると、見えてくるのは「バンプとして素晴らしい点」と「深まりを見せない音楽性とライブパフォーマンス」の二つだ。大好きなバンド、神に近いバンドなのにいちいちチラつく稚拙さ。そんなもの求めてないのは私が一番重々承知している上で、あえて思ったことを書いてみる。

その前に、私の素直な感想が書いてある記事から読んでほしい→18年の思いをBUMP OF CHICKENに届けるためのライブレポ~ホワイトサイド~

全体的なライブの感想

全体的な感想として、ライブとしてのまとまりが薄かったように思う。曲のアレンジも地味で、散々エレクトロでデジタルなサウンドを導入して四つ打ちまで増やしたのに、踊らせるような工夫もなく原曲通りのテンポ感とアレンジ。楽曲自体が非常に魅力的なのに点と点が線に結びつかない。

唯一、「Butterfly」だけアウトロを伸ばして会場をダンスホールにしたが、せっかく盛り上げたのに終わり方はやっぱりブツ切り。このまま次の曲にいけなかったのか、あるいはもう少し余韻を残した終わり方でもよかったのでは、など色々モヤってしまう瞬間だった。

いつかBUMPを「Coldplayみたいになってしまった」と記事で書いたことがあったが、よくよく考えなくてもそれは過大評価でしかなかった。こんな風にブツブツと一曲ずつ切ってはだらだらと次の曲へ行かれては余韻もへったくれもない。これは藤原のカラオケ大会か?と思うほどにただの演奏会だった。apple musicにColdplayの日本公演の音源があるので是非聞いてみてほしい。ひとつひとつが物語として繋がっていて、踊りをやめさせないような演出がある。

もちろん、それが求められていないバンドなのは理解するし全席指定の制限や、今バンドが抱えているファン層を考えても自然なことかもしれないが、楽曲だけは一丁前にダンスチューンなのに実際は踊らせてくれない、というのは「無理してダンス要素入れる必要あったかな?」と思わざるを得ない。

「Ray」はその点、原曲通りだけど踊りやすくてノリやすい。シンガロングもできるし、いい曲だなと今回気付けた。


ベーシスト、直井くん

チャマが基本うるさい。MCはまぁいいんだけど、曲間でボソボソ喋ったり、ベースを触ったりと余計な所作が多い。そこでまた雰囲気が切れる。出始めのインディーズバンドじゃあるまいし、曲間でベースチェンジした後に少し試奏するのはやめてほしい。試奏するほどロックンロールなバンドじゃないし、むしろそういう有機的で生々しさがウリのバンドではなく、ライブ全体が夢のようなファンタジックさを前面に出しているのにチャマだけ一人ライブハウスのパンクバンドのようだ。



歌詞の改悪

「真っ赤な空を見ただろうか」の2番Aメロで

“夕焼け空 きれいだと思う心を どうか殺さないで”

の部分の”どうか殺さないで”を”隠さないで”に変えていたのはなぜだろう。理由を知っている人がいたら教えてほしい。もし本人がなにも語っていないなら徹底して私は拒否の姿勢を貫く。だいたい想像つくけど、それは文化表現の一つを著しく侵害していないか。作った本人が変えてるんだから問題は無いんだろうけど、変えるなら説明が欲しい。好きな歌詞なだけにそこを柔和にして得られるメリットがよくわからない。表現者が聴き手を忖度して内容を変えちゃいかんよ。聴き手が学ぶんだよ、聴き方を。

ノスタルジー

たしかに、とんでもないオーラがあって、藤原の声は金になるほど魅力的でギターの増川はどれだけギターの腕前が上達しなくても神である。立っているだけで神。別にあてふりでも怒らない、だって神だから。

しかし、彼らの新曲を聴いて、やはり深みがない。お手軽にシンセを取り入れて小ぎれいに纏めているに過ぎない。いかにもプロっぽいし、クオリティも高水準で日本でこれだけのハイパフォーマンスできるバンドがどれほどいるかと数えても両手で収まると思う。ただ、それはまとまりのよさでしかない。

メンバーは仲良く海外アーティストのライブに一緒に観に行ってるらしいし、今の音楽を聴いているのは分かっているが、圧倒的にアウトプットが足りていない気がする。こんな素人が偉そうに何を言ってんだと自分でも思うが、そう感じて仕方がないのだ。
結局私が思い出に残るのは昔の曲ばかり。ノスタルジーでしかない。現行のバンプに音楽で感動しない。歌詞のせいではない。

一番それが感じられたのはこのライブでも最後に演奏された「流れ星の正体」だ。メロディはさすがの一言。藤原のメロディセンスはほれぼれする。だがそれで終わりだ。バンドのアレンジがいつも通り過ぎる。一方で同時期に出たRADWIMPSの「愛にできることはまだあるかい」を聴くと、あれ、いつのまにこんなに水をあけられたかな、と感じた。

そもそも個人の能力が雲泥の差であるRADWIMPSと比べるのは少々かわいそうなのかもしれないが、本公演で披露されたときも、これで最後の曲なのか、とそのあっさりさとアレンジゼロの迫力皆無っぷりには拍子抜けした。ライブバンドっぽい演出だったけど全然ライブバンドじゃなかった。

バンドの受け方からしてステージには4人だけというのが正解なのだろうが、音楽的にはストリングス隊なりコーラス隊なりなんでもいいから人数増やして厚みを増した方がマシだった気もする。
それくらいにうっすーーーいライブだった。圧倒されるのは藤原の声とメンバーの可愛さだけ…それだけで十分だったというのは姿勢がぶれるから秘密だが。


まとめ

これだけ色々言っておきながら、今回でバンプのことを嫌いになったかというと、全くの逆だ。好きになった。目につくところはあっても「あーでも好きーー!!」と感情が先走る。なので結論これでいいのだ。なぜならバンプは海外と張り合って欲しいわけではないから。常に私たち一人一人に歌っていて欲しい。また明日から部屋で一人でipodで聴くことにする。
チャマも可愛かったな…。本当に尊い4人だわ。