去年から始めたコーチェラの配信を家で観るだけのとても楽しくて愉快な企画。今年は友人を誘って3人で朝から鑑賞。あーだこーだといろんなアーティストのライブを見て話して、こんなに楽しいこともそうないなとしみじみ。来年もやりたい。

ということで、フルで一日見られたのは現地時間4/12金曜日、日本での配信は4/13土曜日の分。日曜日と月曜日はダイジェストでざっくりと見たのでそれもあわせてレポしたい。なるべく簡単に、これをきっかけにちょっと聞いてみよっかなあと思ってくれれば幸いです。

DAY1

Kacey Musgraves

今年のグラミーの新人賞を獲得したカントリーポップの女性。彼女が躍進はシーンの空気感をガラッと変えた気もする。ヒップホップ全盛の時代に、オーガニックな雰囲気のある彼女の作品はある種懐古的な気分にでもさせたのだろうか、なんにせよ大きな話題となった。ゴージャスすぎず、気楽で軽やかに歌い上げる彼女のパフォーマンスはやっぱりいつみても良い。去年のフジロックでもそうだが、どんなシーンにでもそれなりにフィットするのは彼女の強みのひとつでもある。

今の音楽シーンを先取りしたいならとりあえず彼女から聴くことを強くお勧めする。メロディも立っていて絶対聴きやすいはず。

Tierra Whack

今のトレンドがヒップホップだというのは間違いではないが、それ以上に「女性の躍進」が取りざたされていることも見逃せない。
今世界的なフェスも女性アーティストの出演数も男性と半分ずつにしようという動きもある。それくらいにジェンダーは最重要課題のひとつである。

音楽フェスティバルの出演アーティストのジェンダーバランスを2022年までに50対50にしようという国際キャンペーン『Keychange』が今年2月にスタートした。
『Keychange』と呼ばれるこのキャンペーンはEUからのサポートを受けており、現在までにヨーロッパを中心に109の音楽フェスティバルが署名している(日本を含むアジアのフェスティバルは未署名)が、アイスランドの『Iceland Airwaves』が参加フェスのうち初めて、今年のラインナップで50対50の目標を達成するとニューヨーク・タイムズが報じた。

それも踏まえるとTierra Whackは無視できない存在だ。ちょっとヒップホップはあんまり..ていう人も、ギラギラしない見た目と優しく包み込むようなR&Bの空気感も持ったアーティストで、私も好きなジャンルの一つ。近い存在にはPrincess Nokiaなどが挙げられる。こちらもメロウで親しみわきやすくキュートなのでチェックしてほしい。
肝心のライブは、音楽に対して誠実な態度だったと思う。すぐにアンダーソンパークに移ってしまったので全部を見ることはできなかったが、日本に来日してくれることを待ちわびることにする。

Anderson Paak and the free nationals

ヒップホップと生バンドのコラボはグルーヴィーさを増してもはや無敵状態にある。いつも彼のリズム感には度肝を抜かされている。日本人にはない細かなビートが彼の体に刻み込まれていて、それを基に高速ラップもお手の物。拍の取り方、韻の踏み方、全てが予想のはるか上を行く。今回のステージは、ドラムをたたきながらラップを歌うパートもあってもはや異次元。そもそもこの異次元を普通に受け入れている海外が恐ろしい。んでもってドラムがうまい。どんどん会場のボルテージを上げるさまはラッパーに留まらないエンターテイナーだった。


この動画でもわかると思うけど、ハイハットとスネアの叩くタイミングが必ずほんのちょっとだけズレているのだ。半拍以下のこまかなそのディレイがリズムを作っている。改めてすごいなあとシンプルな感想しか出てこない。

BLACKPINK

音楽が好きな人ならわかると思うけど、k-popがあの舞台に立って大量のオーディエンスを湧かせたことがいかに歴史的快挙であるかをまず理解してほしい。ある意味で黒人よりもマイノリティを経験してきたアメリカにおいてのアジア人の存在意義がようやく評価された瞬間であるともいえる。単純に同じアジア人として喜ばしいし、誇らしく思う。もっとやれ、もっとやれ、と願ってやまない。
登場からいきなり生バンド編成であることに驚かされ、そして登場して一曲目の「DDU DU DDU DU」は鳥肌ものだった。韓国2人、オーストラリア、タイの4人からなるBLACKPINKは開場を狂喜乱舞の修羅場と変化させた。おそろしいほどに会場を制圧していた。痩せすぎだろってくらいに線の細い彼女たちだけどパフォーマンスそのものはもう文句なし。ジェニのラップパートも冴えに冴えていた。圧巻だったと言っていいパフォーマンスは3日通してBLACKPINKとChildish GambinoとBillie Eilishの3組だけだろう。特に彼女たちには「ここでなんとかしてやろう」という強い意志を感じたしプロジェクトチームにもその気迫があった。新曲「Kill This Love」は洋楽の良さがぎゅっと詰まっていてなおかつEDMのド派手さを兼ね備えていて、最後の最後間一切手抜きナシの本物のパフォーマンスだった。彼女たちが作った道筋、日本人もどんどん続いていってほしい。もう言語が通用しないなんて言い訳にならない。それが証明された一日だったと思う。

THE 1975

去年に出たアルバムがおおむね好評価、なんて言葉に収まりきらないほどに大絶賛だった。THE 1975。そのすごさはまた誰かに語ってもらうにして、とにかく好きだという事だけは伝えたい。今までももちろん好きだったし有名だったけれど、どこか「ロックのていを成したポップミュージック」の域を出ることはなくて、むしろ女子向けのバンドのイメージすらあった。でもそこを徹底的にぶち破ってきた。もちろんポップで聞きやすくてマシューがイケメンであることには変わりはないのだけれど、それよりも楽曲の強度、パフォーマンスのハイセンスさ。どれをとっても時代の寵児というべき要素が揃っていて目が離せない。女子だったら全員好きになるのはもちろんのこと、男でも惚れてしまうくらいにセクシーでかっこいい。それでいて浅くなくて、時に「Love It If We Made It」のようなセンセーショナルな歌詞も登場する。けっして陳腐にならない。攻撃的な姿勢も忘れない。そのバランスが絶望的に美しい。その美しさは21世紀初めての感覚だ。これを聴いているだけで自分がオシャレになったような、イケメンになったような、貴族になったような、全能感すら生まれてしまうとんでもない人たちなのだ。この世代に生まれて良かったと心から思える。そんなライブだった。おもわずライブを巻き戻して3周してしまった。「Sincerity Is Scary」は後世に語り継がれるべき名曲。これを好きになれない人とは私は仲良くできません。これほんと。

Janelle Monáe

ジャネールモネイのアルバムは去年の年間ランキング9位にも選んだ。それくらいに楽曲がよかった。でも残念なことに私は音楽的な教養があまりないので、どうしてもポップでわかりやすいものが好きだ。もちろん見栄でも何でもなく本当にいい曲だなと思って9位にしたのだが、ライブで観るとすこし集中して観られない。ステージングは、これがトリじゃないのか、と去年のビヨンセすら彷彿とさせるゴージャスなものだったのだが、ドキドキワクワクしてかじりついたかと言われればそうでもない。再放送でももう一度見たのだが、うん、すごい!!!というコメントしか思い浮かばない。でも見る価値はある。余裕である。

Childish Gambino

初日大トリは彼。去年、「This is America」で世界中にセンセーショナルな話題を届けた俳優兼ミュージシャン。もちろん以前から有名だった人ですが、去年でよりその界隈以外にも広がったようだ。結論から言えば、もはや恐怖すら感じるレベルのステージだった。去年のコーチェラのトリガビヨンセでその圧倒的なパフォーマンスと総動員の壮大なステージングが話題となり、今年のトリに大きなプレッシャーとなったはずだ。チャイルディッシュには正直ビヨンセほどのスター性やカリスマはない。しかし彼には俳優という特性がある。どうやって自分を魅せるのかよく理解している。その表情一つまで精密に作られている。それを撮るのもきちんと計算済みだ。彼のステージは、決して生で観るだけが全てではなかった。カメラワーク、証明、スモーク、演出、全てが織り込み済みの完全無欠のステージは配信時代だからこその見せ方だったように思う。
細かいことはとりあえず置いといて、全てがパーフェクトだったのでやはりトリに相応しい人だなと感じた。
まずは「This Is America」がやはり有名になったのでそこから。曲調はもう少し穏やかなものもあれば楽しげなものもあるので、今の洋楽を感じたいならまず彼から聴こう。



DAY2

二日目は家で観られなかったので帰宅してからダイジェストで観た。フルパフォーマンスで観たのはBIllie Eilishのみ。でもやっぱり楽しかったし素敵な2日目だったのは間違いない。

ここではダイジェストでお伝えする。

Four tet
イギリスのDJ。凄ーく細かくて美しいメロとリズムを作る天才で、エレクトロニカを聴く人ならまず知っているだろうってくらいに有名な人。本当だよ。有名。小難しいことは考えなくていい。ただただ綺麗だから。分かりやすくきれいなところがFour tetの素敵な所。そして案の定ライブもよかった。30分くらい聞いていたけど、ずっと飽きない。割と静かで単調ではあるんだけれど、全然飽きない。名義もたくさんあって、彼の作品を全て聴くのは面倒だけど、とりあえず「Rounds」ってアルバムは聴こう。世界が広がると思う。
おススメ曲
My angel rocks back and forth




Maggie Rogers
今年のピカイチの新人。アメリカのシンガーで、憂いさも切なさもあってそれでいて幸せをかみしめたくなるような神々しさもある。当ブログでも2月のレコメンドアーティストに選出したが、それほどによい。ライブでは思った以上にはっちゃけていて、かわいかった。そして思ったより力強かった。全部見たかったなあと思いつつ眠たかったので知ってる曲だけ聴いて早送り。今度またゆっくり聴くことにする。「Light on」は名曲。あとユニバーサルの公式HPでのバイオの彼女のコメントが素敵なのでぜひ読んでほしい。



FKJ

French Kiwi Juiceの略らしい。かわいいなおい。音楽も可愛い。オシャレでムーディーだけどひとなつっこくていい。
聞いておいて損はない。
おススメ曲
Col3trane x FKJ – “Perfect Timing”



Little Simz
女性ラッパー。今の時代っぽい生感のあるビートでラップを乗せていくスタイル。appleのCMとかで流れてそうな。こちらも登場したての新人なので注目するなら今の内である。ライブはあまり見られてないが、今年出たアルバムはかなり気に入っている。

おススメ曲
Offence



Weezer
彼らをリアルタイムで知っていたわけではないが、高校生の時に知って洋楽の入り口のきっかけを作ってくれたアーティストのひとつ。
このちょっと情けない感じの曲調がたまらない。冒頭から四人でコーラスをするビーチボーイズスタイルで始まると、ハットを投げ捨て始まったのは懐メロ大会。昔のアルバムからたくさんの曲を披露。決して派手さはないけれど、その安定したクオリティとおちついて観られる安心感はこれぞweezerって感じ。決して「これがロックだあ!!!」みたいな感傷には浸れないけど、自分の青春時多大を彩った人たちを画面越しとはいえい或るタイムで観られた事が素直にうれしかった。ラストがカバーの「Africa」なのもおもしろいなあって思ったし、さらにアンコールに「Say it ain’t so」を歌ってくれたので何も文句はない。とりあえずこの曲は聴いてほしい。weezerは親日家でもあるし来日頻度もそれなりに高くてなじみ深いので好きになれると思う。


Billie Eilish

これが世界の10代か。世界のトップか。彼女を見ると日本と比べてしまって勝手に絶望してしまう悪い癖が出るのだが、それほどにむちゃくちゃである。日本では全くと言っていいほど無風だが世界では軒並みチャート1位を獲得。音楽好きからももちろんだが、なにより同世代の同ジェンダーからの支持が熱い。この日の歓声もけたたましかった。こんなに実験的要素があって決してポップでキャッチーでもないのに女子たちを虜にして世界中を熱狂させて歌わせてしまう彼女のエネルギーたるや。日本人は無視していいはずがない。この音数の少なさ、本来の意味での独自性(日本のなんちゃって独自性とはわけがちがう)、彼女の持つエネルギー、どれか一つでもいいから学ぶべきだ。その姿勢がないから平気で韓国に出し抜かれるのだ…。いや、こんな説教じみたことをかくのはよそう。日本には日本の良さがあるのだから。でもいつまでたっても「日本は日本の良さがある」とかいって同じ民族同士で世界から見向きもされない事の傷のなめ合いをするのは悲惨だからやめてほしい。世界に打ってで華々しく散ってくれた方がよっぽど爽快だ。まずは彼女を見ろ。このコーチェラのパフォーマンスは完全に制圧していた。なにも言葉が出てこない。最後の最後まで堂々たるステージを披露してくれた。唯一の反省点はゲストで出たvince staplesのマイクがオフだったことだろう。ビリーのせいではないが。


Tame Impala

二日目のトリはテームインパラ。3日間のヘッドライナーで唯一のロックバンドだ。彼らは広いステージが似合う。それくらいにきらびやかで伸びがある。というかそれが強みだ。どこまでも届くような浮ついたサウンドと、ボーカル・ケヴィンの歌声がなんとも気持ちがよい。サイケデリックというジャンルにカテゴライズされるが、要するにこんな感じでどこか異世界へ連れてかれるような曲調が特徴的。私が見たのは後半15分だけというお粗末な見方だったが、それだでも彼らの存在感と、今回のステージの大成功を感じ取ることができた。こんな極彩色のライブはなかなかお目にかかれない。バンドはしばしば時代遅れと言われがちな昨今ではあるが、それがこのステージを限りに変わっていきそうな、そんな雰囲気すらあった。いやでもここで彼らをトリにしたコーチェラはすごいなと。それと同時に去年サマソニにもきたときは大阪では小さな体育館で客もそこそこしか埋まってない状態でやっていて、よくあんなところで彼らが見られたもんだとちょっとラッキーにすら思う。半年後はコーチェラのヘッドライナーなんだから。ここでも日本と世界のギャップを感じた。

おススメ曲
Patience



DAY3

いよいよ最終日。とはいえ日本では月曜日に当たるので、普通なら仕事で観られない人が多かったと思う。私は仕事柄昼からなので朝だけ少し見ることが出来たのだが、まあやっぱりゆっくり見ることはできなかったし、帰ってからも再放送は少ししか見られなかった。よってこの日もダイジェストでお届けする。

Blood Orange
数年前にサマソニで観たとき以来のライブだった。またちょっとファッションも含めて空気感が変わっていて、よりエッジの効いたライブになっていた。ただいい曲を流すだけじゃない。楽しませることもしっかりとりいれていて、じっくりと見てしまった。
あまりとっつきやすさはないかもしれないが、真剣に聴かなくても聞き流すだけで十分楽しめるアーティストなのでぜひ何曲か聞いてみてほしい。
おススメ曲
Jewelry


Wallows
今年のロックバンド新人枠として勝手に認定しているwallows。結構前評判も高くアルバムもよかったので期待して観た。思っていたより肉体的なバンドで、すごく楽しそうだったのが印象的。ラフな格好もすごく似合っててよかった。ロックだけどゴリゴリしてなくてすっと入ってくる馴染みのいいバンドなのでこれは聴きやすいんじゃないかな。

おススメ曲
These Days


LIZZO
アルバムのジャケで彼女の姿は確認しているつもりだったけど、いざお姿を拝見したら想像以上でびっくりした。外見の事をとやかくいうのは失礼かもしれないが、さすがにあの体格でケツまるだしで腰振りダンスされたら一言二言くらいはでてくる。
ポジティブでエネルギッシュでとにかくパワフル。ずっと楽しそうでずっと愉快。ダンサーも演奏陣もダイナミックでどこを見渡してもすごい圧のあるステージ。でも今見ておくべき新人の一人。もうすぐ発売されるアルバムにも期待。


Gesaffelstein
ちょっと怪しげでDaft Punkを彷彿とさせるメタリックな男がGaseffelstein。曲調もダークでかつクールなものが多く室内のダンスルームにもってこいのアーティスト。一人DJセットの前でとくに煽るわけでもなく黙々とDJプレイをするのは、はっきりいって地味だ。だけれど曲のクオリティがそれを補って余りあるほどにかっこいい。照明もカメラ演出も駆使してライブ中継を見ている私たちも飽きが来ない。
楽しみ方?そんなもの理解する必要はない。なんとなく踊っておけばいい。

おススメ曲
Gesaffelstein & Pharrell Williams – Blast Off


Zedd

日本にもたびたび来ているZedd。今年もサマソニに出演予定。それにしてもやっぱり彼は最高だった。楽しすぎる。もちろんヒット曲満載で歌モノとしても機能しているところがすごいんだけれど、それ以上にユニークな曲のセンスとつなぎ方がいい。他のEDM系と比べても彼のプレイは緩急がしっかりあってダレない。途中でアリアナの「Break Free」もちゃんとやるし、Foxesとの「Clarity」もライブリミックスで盛り上げる。間違いなくあれだけゴージャスで壮大なセットの中、一人で数万人を熱狂させられる数少ない一人だ。メロの良さに尽きる。ほんとうに綺麗なメロディ。EDMにとって欠かせない要素なのでそのセンスがあるだけで彼はもうスターだ。
後半には話題のQueenのボヘミアンラプソディーも流したりとそのへんの使い方も安易ではなくよく理解した上でほどよく使っている。彼なら音楽を知らない人でも楽しめるし、クラブに行く人なら間違いなく口ずさめると思う。人を選ばないポップパーティーチューン満載のライブだった。



まとめ

世界最大級の音楽フェス、コーチェラ。いつかは行ってみたいと思いながら、でもこうやってみんなでテレビで(しかもタダで!)みられるのも悪くないよなって思う。良い時代に生まれたもんだ。本当に感謝しかない。
コーチェラは世界でもトレンドをいち早く抑えたフェスだとおもうので、ここから売れていく新人がたくさん出演している。なので最新トレンドや未来のスターを探したければコーチェラから探すのも一つの手だと思う。
大丈夫。先週見逃した人にも朗報がある。なんとコーチェラは毎年2週続けてやっているのだ!!しかも今年から2週目も配信されることが決まっている(どんな内容になるかは不明)!さらに今週の配信では日本のPerfumeが予定されている!世界に真正面からぶつかる彼女たちの雄姿は何が何でも目に焼き付けておきたいところ!!!
ああたのしみだああああ!!!!!