アンセムの後ろも見逃せない
ずっと昔に「アンセムの後ろを聞こう」という企画をしていた、その第二弾。ストリーミング世代は簡単に曲をスキップしてしまって、好きなものを好きなところだけ聴くスタイルが主流になりつつある。
が、かつてのアルバム単位の聴き方もそれはそれで楽しいものだと自覚する私は、普段ストリーミングとプレイリストで名曲しか聴かなかった自分への戒めとしてこの企画を再始動させる。
いわゆる「名曲」と言われる楽曲の次の曲は案外スルーされがちなので、私と共に改めて陽に当たらない曲たちを聴きなおしてみようのコーナー。
Radiohead – How Do You?
イギリスのバンド、Radioheadのアンセムと言えば「Creep」。これはデビュー作「Pablo Honey」の2曲目に収録されているが、その後ろの3曲目がこの「How Do You?」である。「Creep」から一転、アップテンポでギターが唸るようにボーカルと絡み合う激しい曲だ。構成もシンプルで、この作品以降のRadioheadには見られない骨太いロックが特徴。とはいえアウトロではサイケなギターとピアノと録音されたセリフが組み込まれていて、十分その後の彼らを彷彿とさせる奇妙な組み合わせが見られる。
Coldplay – Violet Hill
Coldplayのアンセムは「Viva La Vida(邦題:美しき生命)」。「Viva la Vida or Death and All His Friends(邦題:美しき生命)」に収録されている楽曲で、日本でもあらゆる番組で使われていたので知っている人も多いと思う。で、なにかとこれで訴訟ものになったりと色々浅いとかパクリだとか言われがちなバンドだけど、21世紀のレジェンドであるのは間違いない。才能もやっぱり抜きんでているし、美しくて静寂で儚くてダイナミックな楽曲は彼らにしか出せない持ち味でもある。
そんな「Viva La Vida」の次の曲がこれ。雄大な4拍子のドラムに合わせて進んでいくロックな曲調。こちらはMVも制作され、先行シングルとしても発売されている。
James Blunt – Wisemen
日本でもかかりまくったJames Bluntの大傑作「You’re Beautiful」。そのアルバムが収録された「Back to Bedlam」では、次の曲が「Wiseman」になっている。一発屋のイメージも強いうえになぜかwikipediaでは「イラつく曲ナンバー1」とか書かれていて、これみて彼を高く評価したくなる人なんていないだろ…とあんまりな書かれっぷりで少し同情する。もちろん、事実ではあるけど10年以上前の一時的なランキングだし、ある種ヒット曲の運命みたいなもので、パロディに消費されたりアンチがつくのは仕方がないのだ。
じゃあこの曲を今一度聞いてみて、アルバム「Back to Bedlam」を再評価してみようと思うのだが、私も彼の曲を「You’re Beautiful」以外聴くのは初めてなので緊張する。
正直な感想を言うと、時代も感じるし、売れ線ポップスだと断じてしまえばそれで済むような気もする。だけど彼の声は他では利かないし、売れるだけの実力はこの曲でもビンビン感じる。
そして日本人絶対こういうの好きだってわかる。アコースティックでしゃがれていて英語でとことん王道な感じ。同時期にDaniel Powterの「BAD DAY」やAvril Lavigneも流行ったりして、そういう日本にウケるアコースティックな波が来ていた時期でもあった。
今の日本はすっかりと鎮静化して、海外のトレンドが一切入ってこない状況になったが。
Maroon5 – Leaving California
中学生の頃、当時流行りかけていたMaroon5の「Song About Jane」をこよなく愛し聴き続けていた自分としては、アンセムと訊かれたら「This Loveでしょ!」と即答したいのだが、まさかその上をいく活躍で「This Love」が霞むほど日本でも浸透してしまうとは思ってもいなかった。今や彼らは音楽好きが愛するバンドというよりも、普段海外はおろか日本の音楽もほとんど知らない人たちでも何となくで結婚式で「Sugar」を流してしまうほどだ。多分「Sugar」を誰が歌っているのかすら知らない人も結構いると思う。誇張抜きで。
となると怨み節っぽく「昔がよかった」とか「やつらは魂を売った」とか言いたくなってしまうが、「Sugar」はそれはそれでいい曲で悔しいけれどヘビロテしてしまう。さすがにここ三作はCDも買っていないしアルバム単位で聴き込むことはしなくなったが。
日本に来ても即完で、いや2010年に大阪城ホール規模でできる時代に行っておいてよかったと心から思う。
そんなSugarの次の曲が「Leaving California」。このアルバム自体がかなりエレクトロポップに寄っていて、初期のような作風はかけらもないので結構好みが分かれている。古くから知る人ほどこのアルバムを好む傾向は少ない。私もそうだ。決してエレクトロ路線が悪いとかは思わないが、やっぱり何に惹かれて聴き始めたかというと、あのアダルティな雰囲気と逆行する人懐っこいメロディにあったわけで、そりゃこれで満足しろと言われる方も中々酷だ。多分彼ら自身もそれは認めていることだろう。
とはいえSugarは大傑作だし、ついつい定期的に聴きたくなるのだからこの路線も嫌いじゃないんだなと自覚する。その次の曲の「Leaving California」も例にもれずきらびやかで、アダムの透き通った声がよく届くミドルバラードだ。この曲も好き!と思えたならぜひこのアルバムは通して聴いた方がよい。
まとめ
以上、いくつかまとめてみた。今回もバンドが多めで、次からはもっと幅広いジャンルからチョイスしようと思う。
スキップしないでちゃんと聴いたら意外とハマる。この現象があるからアルバム聴きはやめられない。