オマージュとパクリ

いい歳こいて本気で音楽で飯食おうと思って、事実飯が食えている奴は本当に音楽バカだと思う。ずっと音楽を聴いて育ってきたんだろう。ゼロからのモノづくりって本当に大変だから、きっとその蓄えてきた教養を参考にして作る人も多いだろう、というかだいたいそうだと思う。だからそれを簡単にパクリだと断言するのは避けたい。生みの苦しみは理解しているつもりだ(生んだことないけど)。
そうしたパクリと尊敬の狭間で生まれたナイスな言葉が「オマージュ」である。雰囲気や構成などが同じだったりメロディを合わせたりするのだが、きちんとオマージュであることを制作者は伝えねばならない。でないとパクリだ。あるいは、言わずとも「あ、この人ならこの曲をモチーフにして作ってるんだな、粋だな」と思ってもらえるような人なら特段何も言う必要はない。

ではそんな公言しようともせずとも私が勝手にオマージュだと感じた楽曲を原曲とともにみていこう。VSと対立を煽ったが、決して優劣をつけようとかオマージュを叩こうなんて意図はない。原曲を聴いてオマージュを聴いてニヤッとしようという緩い企画なんだから。

その① 構成のオマージュ

Queen – Bohemian rhapsody

みんな大好きQUeen。ネタにされがちたけどそれは愛されている証。みんな大好きだからついつい死に様を茶化してしまうのさ。胸毛もイジりたくなるいい胸毛だし。そんな彼らの代表曲のひとつ、ボヘミアンラプソディーは後半、大きく転調する ポップスとしてはあまり多くない手法の(こと置いて日本では)楽曲。よく”プログレ”と形容されるボヘミアンラプソディーだが、その影響は計り知れない。本楽曲はおろかクイーンすらわからない人にはその影響力がどれほどのものか想像つかないだろうが、おおよそ今日本で作曲活動を行なっている人たちは彼らを通っているのではないか。ちょっと長いかもしれないがまず聴いてみてほしい。

五五七二三二〇 – ポンパラペコルナパピヨッタ

では続いてオマージュ。オマージュだと明言されたわけではないが、プログレ的な展開はやはりボヘミアンラプソディーを彷彿とさせる(もちろんプログレがそれだけだという意味ではない)。

私立恵比寿中学の別名ユニットで、アイドルらしからぬ(もはやこの言葉も陳腐になってしまったが)複雑な構成とカオスティックなサウンドはやはりアイドル好きかを厭わない暴力的なクオリティになっている。作曲者は菅野よう子。こちらも一応紹介しておくと、やべえやつだ。ここに挙げればきりがないほどの名曲を生み出しているバ…お姉さんだ。
付け焼き刃じゃない、計算され作り込まれたポンパラペコルナパビヨッタにぜひアイドルの偏見を打ち破って欲しいし、音楽に興味のない人は新しいジャンルの入り口にして欲しい。そしてなによりこの楽曲のえぐさを体感してほしい。度肝抜かれてほしい。アイドルソングの頂点の一つ。

その② MVのオマージュ

つづいて音楽というよりは映像でのオマージュである。”ダサいMV”部門では世界一有名なロックバンドJournyのMVとそれを完コピしたレキシのMVを紹介する。

Journey – Separate Ways

みよこのクオリティ。ダサいMVは、という話題になると並いるメタルバンドを抑え彼らのこの曲が上位に挙げられるのだ。カメラ目線がもれなくダサい。でもダサいだけじゃない。ジャーニーこそ色気で売ったバンドかもしれない。アレクサンドロスのリョウペインみたいなもんだ。スティーブペリーというボーカルのお兄ちゃんのいわゆる子宮に 響くハスキーボイスは大友康平顔負けの渋さ。私の母親もその一人だ。彼女もスティーブペリーで子宮を育ててきた。つまり私はスティーブペリーから生まれてきたと言っても過言ではない。

過言だ。

レキシ – KATOKU

上の動画を観た人ならわかると思うが、なぜかSeparate Waysを聴くとyoutubeから次の動画として薦められるのがこのレキシの「KATOKU」という曲だ。どうかしてる、youtubeは、Journey聴かせるつもりすらない。
そしてみよこのクオリティ!こちらは公言せずとも明らかな盗作である。ネタキャラだからなんでも許されると思っているのかこのおっさんは。なのに悔しいほどいい曲だしMVのコピーのうまさにクスッとなってしまうのが悔しい。犯罪者に心許してしまうとは。稲穂パワーだな。
こちらはオマージュというよりはむしろパロディ。だから楽に見てほしい。これはオマージュではないよ、だって完全にバカにしてるから。でも愛に溢れてる。そして曲がやっぱり安定の「意外といい」に落ち着く。レキシ本人はこの評価に納得していないみたいだけど。


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その③ そのまんまオマージュ

最後はちゃんとオマージュを。多分骨組みは同じ。詳しいことは分からないけど、リフとかコード進行もほぼ同じ。メロもところどころ同じ。そんなアメリカと日本を代表するアーティスト二組を。

Michael Jackson – Black Or White

ご存じマイケルジャクソンの有名な一曲。彼自身の出自も、その後の異様な白人化も、この曲に凄く意味が詰まっている気がする。マイコーファンが多すぎて語るの怖いので深入りはやめておくが。母親がマイコーファンだったこともあり、結構マイケルジャクソンは通ってきてる。マイナーな曲をたくさん知っているわけじゃないけど、騒動が多くあった時も「マイケルはきっとなにか思うところがあるんだろうな」と擁護する姿勢をとっていたのは、母親の大好きなマイケルを好きだったからだろう。亡くなった後の「This is it」は二人で3回みた。マコーレーカルキンの第二の代表作でもある。

SMAP – This is Love

マイケル大好き中居君もいるSMAPの楽曲。作曲はLOVE PSYCHEDELICO。本人も当然オマージュを公言している。まあこれはむしろカバーに近いというか、リメイク的な作品。今までの二つとは違って、かなり本格的なオマージュと言える。相変わらずへたくそで(まあ歌いにくそうな曲ではあるが)やれやれと言いたくなるんだけれどそれでも最後まで聞き入ってしまうのはどれもこれも楽曲が段違いに良くて、そして5人のキャラクターに惹かれているからなんだろう。もう自分の人生においてここまで音楽以外に魅力を感じていたアイドルはでてこないだろう。SMAPもマイケルももう二度と歌うことはないけれど、彼らをリアルタイムで観られたことを誇らしく思うし語り継いでいきたいなと思う。特にSMAPは語り継がないと、難しいだろうけど。

まとめ

以上3つのオマージュを紹介した。単なる一曲としてじゃなく、つながりを持って聞けばまた音楽に対する向き合い方も変わってくる。
オマージュは探せばいくらでも見つかるので、これを機にオマージュ探しでもしてみればいいと思う。私はしないけど、面倒くさいし。