最近はアーティスト自身が主催となってフェスを開く事も多くなった。10-FEETは「京都大作戦」を、04 Limited Sazabysだったら「YON FES」など、古くから人気のフェスから新しく定番化したものまで様々である。

アーティスト主催のフェスは、他の企業やイベンターがやるフェスより目的意識や共有できるものが濃くできるのが強みである。だから出演者はもちろん、観客も同じベクトルを向いているので団結力は他のフェスと比べて桁違いだ。

ゴミを出さないようにしよう!と声をかけるとみんながそれに従い、たとえ多少主催側の不備や不運があっても客がフォローしてくれる。簡単に人を責めたり文句を言ったりしない。そこがアーティスト主催の素晴らしい点だ。みんなでそのフェスを成功させようという気持ちが強い。


一方でそれ故に悩ましい問題もある。

例えば主催アーティストが普段から親交のあるバンドを出演させたとしよう。すると来年以降、彼らを呼ばざるをえなくなる。去年呼んだのに今年急に呼ばないって中々難しい。よっぽどの後輩とか、一回限りな!と言った枕詞があったとか出ない限り「楽しかったです!また呼んでくださいよ!」「おう!ありがとな!めちゃ盛り上げてくれたな!来年も頼むな!」と打ち上げで言ってしまうもんだから、翌年の出演は担保される。

アーティスト主催だからこそ、人間関係にまで出演ブッキングが絡んでしまうのだ。

あ、”のだ”って断言したけど根拠はないし主催者に聞いたわけでもないし主催した事もないので憶測だけど、やっぱり例年のアーティストの被り具合を見ると、それは公にせずとも見えないところであるんじゃないのかなって邪推してしまう。

毎年出演者が固定されてしまっても別に問題はない。アーティスト主催なんだから来るのは大抵そのファンと仲の良いバンドのファンでありそこの音楽的なつながりとか価値観のつながりは深いだろうしお互い文句はないはずだ。むしろ毎年カラーが変わるのはアーティスト主催のフェスの醍醐味とは言えないだろう。


たたそこにマンネリ打破的なスタンスがあればより面白いんじゃないかなーって思ったりはする。実際には色々取り組んでいるのかもしれないけれど、もっとわかりやすく。出演者はあえてシャッフルするとか。
アーティスト自身が自分たちのフェスをどう捉えているかにもよるのだが、どうせなら「日本の音楽シーン」とか「若者と未来の音楽の理想像」とか、そういった主語の大きな、啓蒙的な目線もあってもいいんじゃないかと思う。例を挙げるならサカナクションみたいな。

せっかく自分たちのファンが自分たちの見せたいバンドを観てくれる機会なんだし、仲がいいからとか飲みの席で約束したからとかではなく、これからの時代にアップデートできる新しい音楽の提供とか、まだ埋もれている才能の発掘とか、もちろんしていないとはいわないが、そういうトライももっと活発になったら面白いのではないだろうか。

集客面の問題も当然発生する。今の若い人はあまり新しい音楽に手を出さないとも言われている。切っても切れない関係性だってある。恩とか義理とか縁故とか。それもあっていい。ただ、思い切って一新してみるのはやはり難しいことだろうか。大きなステージを今年は降りてもらって、新人に一枠譲る。あるいは別のジャンルから引っ張ってくる。そのアーティストがスベることはあってはならないので慎重にすべきではあるが、そういった強気な姿勢はいろんなところに波及していくと思っている。