年代別に好きなアルバムを挙げて欲しいとのリクエストがあり(ありがとうございます)、色々考えて、あえて数枚ずつ挙げてみることにした。私の音楽趣味上、古い作品に疎く、ここ10年のアルバムに思い入れが強いタイプなので、どうしても2010年代が熾烈になり選び難いのだが無理して選んでみた。今の気分で、かつ一つの切り口としてのベストアルバムなので明日は同じでも来年は違う結果になっているかも。

ついでにベストの1枚には選ばなかったけど迷ったもう1枚を「次点」として挙げておきます。

60年代

率直にいう。60年代のアルバムなど両手で数えるほどしか聴いたことがない。そもそも楽曲を知らない。アルバム単位で聞いたことがない。その辺の軽音部の男子高校生と知識は変わらないと思う。そんな中でも自分がまず思いついたのはこれ。

Simon & Garfunkel – Bookends

彼らをちゃんと初めて聴いたのは高校生の時。まだロックを知って1年経ったとか経たないとかそんな時に、深夜の音楽番組(何かは忘れた)で彼らの「Bridge Over Troubled Water」が流れていて、その美しいメロディに一回で惹きつけられ、すぐ地元のCDレンタルで借りてきたのがこのアルバム。ご存知の通り入ってないんですよね、「Bridge Over Troubled Water」。ふざけんなって話ですよ。こちとら毎日RADWIMPSとマキシマムザホルモンとELLEGARDEN聴いてるんですよ?ドラムの音は小さいしギターはエレキじゃないし、いかんせん眠たい。こんな退屈なアルバムを真面目に聴いたのは「Bridge Over Troubled Water」が流れると信じてやまなかったからだ。確認しない自分も自分だが、正直当時曲名すら把握してなかったので、とりあえず流れるだろうと期待していたのだ。

結局それが因縁となり彼らから遠のいた私は、2011年にRADWIMPSの野田洋次郎が「Bridge Over Troubled Water」をライブでカバーするまでSimon & Garfunkelの事を思い出す事はなかった。

そのおかげでこのアルバムのジャケットは印象的だ。今改めて聴いているが、素敵なアルバムですね。「Old Friends」なんか最高じゃないですか。代表曲「Mrs.Robinson」もあるし。



次点

該当なし



70年代

ここからはそれなりに聴いてる楽曲も多々出てくる。父親の影響でずっと聴いてる山口百恵、小学生の頃通っていた個人の英語教室でひたすら歌わされたカーペンターズ、高校の時のオーラルコミュニケーションの先生が流した曲がクラスの一大センセーションを巻き起こしたDavid Bowieの「Starman」、そしてベストアルバムが常に流れていたQueen。音楽一家と言えば音楽一家の我が家だが、あまりポップミュージックが流れていた印象がなく、親から受けた影響も限定的だ。

とはいえ、やはりこのアルバムは欠かせない。

Billy Joel – Stranger

こうやって年代ごとにアルバムで整理するとわかる事だが、私にとってアルバムとして認識している作品でもっとも古いものがこれになる。一曲目が「Movin’Out」、二曲目が「The Stranger」と流れが思い出せるアルバムはこれが最古だ。車の中、家の中、CDとしてもMDとしても持ち歩いていた。それだけ好きだった、というよりは当時あまりに聴く曲のレパートリーが少なすぎて、賑やかしとしてとりあえず持ち歩いていたという方が適切かもしれない。

でもおかげでたくさん聴く機会ができ、「Vienna」まではよく聴いた。そこから先はいつも途中で終わってしまって聴けてない。



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Michael Jackson – Off The Wall



1980年代

Yellow Magic Orchestra – 増殖

ロック以外の一手となるきっかけのひとつでもあるYMO。まずは「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」やセルフタイトルの「Yellow Magic Orchestra」を愛聴していたが、ネットの情報を色々見ていくと「増殖」がおもしろいと、そんなレビューが目立った。楽曲としてもだが、スキットが間に多く挟まれ、お笑い文化としても取り上げられることがあり、その興味もわいた。
結果、借りてきて一度聴いてすぐに好きになった。深い意味はなく、単純に楽しい。何度聞いても面白い。警察官とのやり取りも、英語で罵られてへらへらしている人も、登場人物みんな変な人でおもしろい。まるでYoutubeでお笑い芸人のネタを繰り返して観るように、落語のCDを日課として聴くように、「増殖」を楽しんで聴いていた。
このバランスの完成度ってそうそうない気がする。



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DREAMS COME TRUE – LOVE GOES ON…



1990年代

ここにくるとさすがに後追いだけでなくリアルタイムでも認識している作品が登場してくる。91年生まれの自分にとっては、馴染みがあるようで馴染みのない、子供の頃に受動的に聴いていた作品が多数ある時代だ。ラルクアンシエルやGLAY、SPEED、スピッツ、SMAP。後に椎名林檎や宇多田ヒカル、ジュディマリなんかを聴きだすのも90年代。海外の音楽でいうと、リアルタイムで聞いていたのはマイケルジャクソンか00年代初頭にかけてリッキーマーティンとバックストリートボーイズくらいかと思う。

そんな中でベストを1枚考えてみた

Oasis – Definitely Maybe

語るまでもない題名版。音楽だけでなくファッションや所作までもが全て血肉となり影響を色濃く受けたアーティストであり、冒頭の「Rock ‘n’ Roll Star」からその眩しさに立ち眩みをする。ゆるぎない信念とふてぶてしさもあるリアムの歌声がのっかるのはノエルの抜群のソングライティングとメロディ。美しい旋律はデビューアルバムから確立されていて、まったく動じない強さがある。最初の一秒から最後の一秒まで一切ダレない名アルバム。どれくらいかというとRadioheadのOK Computerを退けるほど愛聴しているアルバム。本当にラストの「Married with Children」までもが大好きで辛い。どんな名盤も勝てない一枚。


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Radiohead – OK Computer



2000年代

ここになるとリアルタイムでもアルバム単位で聞くことも増えて、ベストアルバム選ぶのにも一苦労した。

BUMP OF CHICKEN – Orbital Period

もちろんバンプは天体観測から知っているし「ユグドラシル」も「Jupiter」もずっと聴いていたが、自分の思い出と被さるのはこのアルバムである。高校1年生の時にリリースされたこのアルバムの藤原のメッセージはいつもより寄り添い方が親切で温かい。今までも「太陽」や「ベル」といった自分の代弁者的な楽曲はあったが、「Orbital Period」はそれらを遥かに凌駕するほど自分の人格とぴたりと一致していく。野田洋次郎が新しい発見を与えてくれるパイオニアなら、藤原基央はその道すがら落としていった感情やかすり傷を丁寧に直してくれるヒーラーである。だからこのアルバムは手放せない。
そしてちょうどこれがリリースされた後に留学していて、バンプ好きなカナダ人の友達に「orbital period」をプレゼントしたのも思い出の一つである。


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RADWIMPS – RADWIMPS4~おかずのごはん~



2010年代

正直今はまだ整理がついていない。特に自分にとってもこの10年は音楽の深みにはまっていった時期だったし、1枚を選べるほどに優劣が付けられていない。それぞれに魅力があり、違ったタイミングできらりと輝くからだ。でも企画上、今の一枚を選んでみた。普段から公言しているので意外性はないと思うが、やはりオールタイム的な視点ではこれかなと思う。

James Blake – James Blake

彼のおかげでいろんな音楽にふれることができたし、きっと今これだけ海外の多ジャンルが聴けるのも彼のおかげだと思う。繊細で、美しくて、そしてダンサブル。派手に踊り狂うものではないが、自分の性格にピッタリの温度で踊れるのもまた素敵。過去4作全て聴いてきてどれも大好きだが、デビューアルバムに勝るものはないと思う。アルバム通して完璧そのもの。



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THE 1975 – A Brief Inquiry Into Online Relationships



2020年代

まだ始まって半年だし、なんだったらコロナのせいでリリース状況も大きく様変わりしているはず。でもそのおかげ(というのが適切かは分からないが)で、アーティスト自身のムードが反映されたすごくクローズドな世界観の楽曲も増えている。また、ファンとの距離も結果的に近くなり、共作に近い形の作品も生まれている。その中で私が今一枚選ぶとしたらこれだろう。

米津玄師 – STRAY SHEEP

もちろん大好きなアルバムであることには違いないが、それ以上に、2020年初頭にしてこの10年の伝説の一つになったなと確信できるアルバムだったのも選出理由だ。既発曲も多い中で、まったく霞まないアルバム曲の数々。王道JPOPをきちんと突き進む中で、音楽ファンを唸らせる工夫も多く散りばめられていて、全員を納得させる。邦ロックの延長線上にも立っているのが憎くて、そしてなによりネットミュージックあがりの個性的なサウンド使い。星野源の「Yellow Dancer」にちかい完全無欠の印象を抱く。

まだこれが年間ベストになるかどうかはわからないが、そんなランキング云々より、ただ単純にこのアルバム楽しいなあと思うのだ。


次点

THE 1975 – Notes on a Conditional Form

まとめ

明らかに60年代と10年代の熱量が違っていて自分でも笑ってしまうが、これがリアルであり、私の知識の限界である。
やっぱりもっと古い作品を聴いていかねばとそのたび思うのだが、おもしろさを見いだせないものを渋々聴くのも本意ではない。もう少し時間が経ってから、その機会をうかがうことにする。

とりあえずあまりおもしろみのない記事になったことを先に謝っておく。見栄張ってなくて好感持てるでしょ?