Twitterでふと何気なしにこんな質問をしてみた。

すると自分が思っている以上にいろんな人からおすすめされて、これはせっかくなら記事にまとめないと、という使命感に駆られたので、ざっと一覧にしてみたました。結構多いので、前後半に分けます。まずは前半から。
「カバーしたアーティスト名 – 曲名」の順で表記しています。原曲は動画下のコメント内で言及しています。ぜひ原曲を聴いてからカバーを聴くという順番で楽しんでもらえたら幸いです。

Quietdrive – Time After Time

シンディーローパーの代表曲のカバー(原曲はコチラ)。なるほど、このアレンジしっくりくる。むしろこのジャンルの音楽だったのではないかと思うほど相性がいい。エモっぽいサウンドは意外とシンディローパーのスタイルにもつながっているのかも。

Van Helen – You Really Got Me

キンクスの代表曲をヴァンヘイレンがカバー(原曲はコチラ)。同じ系譜(といっていいのかな?)のサウンドのバンドだから、基本的には同じだけど、よりエッジがきいてギターとボーカルが際立っている。これは確かに「キンクスの曲をヴァンヘイレンがカバーしたら」という疑問を模範的に回答したような、理想的なカバー。

The Timers – デイドリーム ビリーバー

かの有名なコンビのCM曲。音楽に興味のない人だったら、忌野清志郎=デイドリームビリーバーの人、ってくらいの存在感。正直忌野清志郎に詳しくない自分もその一人です。よく語られるところだが「ほんで」といった語感を重視した日本語のチョイスも逸品ですね。実は、原曲の「Daydream Believer」、The Beatlesの楽曲だと思ってた。恥ずかしい。The Monkeysというバンドだそうで(原曲はコチラ)。ポールマッカートニーは出てこないんですよ、ほんと、ふざけてます。今までの勘違いの時間返してほしい。人様の前でドヤ顔で語らなくてよかったと心底思っている。

人間椅子 – 21世紀のスキッツォイド・マン

こちらキングクリムゾンの楽曲を人間椅子がカバー。まず原曲を知らないので、そこから(原曲はコチラ)。聴いた事はあるけど、どこで聞いたかは思い出せない。あと、キングクリムゾン初めて意識して聴いた。テンポも拍子もコロコロかわるので「これが噂のプログレか…」と小学生みたいな感想しか出てこない。別にプログレ初めてじゃないけど。
ジャズっぽいしロックだし、複雑だしカオスだしキャッチーだし、そらプログレでえげつないセールスをたたき出したわけだ、とこの一曲でなんとなくそのすごみに気付く。もはや管楽器は、それ音と呼べるのかってくらいに高音を鳴らしてみたり、ドラムはどんどん加速していくのにみんなゴリゴリについていくし。6分してやっと再び歌い始めるし、もうわけわからんけどこの曲は好きになれた。ストリーミングにないのが惜しい。で、一方で人間椅子の方はもう少しテンポよくロック強めに仕上がっている。ノリやすいのはこっち。あの曲をこのレベルでカバーできる技術に尊敬する。ギターのプレイに酔いしれる(そしてドラムが大変そう)、そんなカバー。
あ、あとこの動画をみて思ったのが、誰よ!ってこと。ファンの方からすれば散々言われているだろうしもはや指摘するのも飽きるくらいだろうけど、やっぱり言わせてほしい。だれよ。一人も知ってる人がおらん。あの人どこよ。

二階堂和美 – 世界でいちばん熱い夏

プリンセスプリンセスの代表曲の一つ(原曲はコチラ)。原曲は結構シンプルで、コーラスとシンセのサウンドで厚みを増している。フルコーラスで聞いたのは初めてだったけど、おもったより迫力のない、質素な楽曲だった。音重ね合戦の90年代末を幼少期に過ごした人間にとってはこの程度では物足りない。
そして二階堂和美。一方こちらはさらに簡素に、アコースティックギターとコーラスとクラップだけ(あとなんか鳥のさえずりみたいなのが)という構成。ただそのコーラスの重ね方が個性的で、熱さは感じないけどおもしろい楽曲だった。二階堂和美さんは初めて聞く名前だったけど、とてもきれいな声の持ち主で、くどくなくて、歌が上手いのに押しつけがましい部分もなく、すっきり聴けるアーティストだと思いました。

草間ルミ – 時計を止めて

ジャックスというバンドの楽曲のカバー(原曲はコチラ)。バンド名すらギリギリ聴いたことあるかないか程度で、もちろん楽曲は初めまして。日本のロックの先駆者、らしい(wikipedia調べ)。しっとりとした歌い方で詞の世界を表現するバンドなんだなと感じた。
一方カバーした草間ルミさんも初めまして。こちらは女性のカバーなのでジャックスのような歌い方ではなく、もうすこし澄んだ、アベレージテンポも上げて歌っている。情報が少なくwikipediaもなく、彼女の代表曲としてこの「時計を止めて」のカバーが頻繁に上がってくることからも、これは相当埋もれた名曲なのでは、と勘ぐる。
そこまでいいなあ!!とはならなかったが、こうやって人に訊いてみないと絶対に出会う事のなかったアーティストもいるわけで、貴重な機会をいただけたなと感じる。

Eric Clapton – Change the World

え、エリッククラプトンの曲じゃないんですか!!!!????
という驚き、きっとこれからも何千万人と経験していくのだろう。何年も何十年も。そのたびに今までの常識がひっくり返されるような感覚を味わうのだろう。そう、この楽曲のオリジナルはワイノナジャッドという方(原曲はコチラ)。カントリー歌手らしく、初めまして。経歴がおもしろくて、母親とデュオを組んでデビューしたそう。親子のグループってちょっと思いつかない、特殊なケースだと思う。親子で言えばあの漫才コンビしか…。
曲の中身の話をすると、確かにこれが原曲だわって言いたくなるくらいに(完全に後出しだけど)これでしかありえないほどのフィット感。決して歌い上げるようなものではなく、むしろちょっと抑えたように歌うからこそ見えてくる情景がある。これは大発掘。
で、今回のテーマであるエリッククラプトンのカバーは言わずもがなの大ヒット曲で、私も母親がエリッククラプトンのアルバムを持っていたので、よくこの曲を聞いていた。おそらく日本で1億1500万人くらいの人はエリッククラプトンの楽曲だと思っていると思う。みなさん、原曲聴いてみてください。大名曲になってます。

iri – 東へ西へ

井上陽水のカバー(原曲はコチラ)。彼の素朴でどこか不穏な楽曲を完全にiriのものにしている。エレクトロなチューンにピアノを重ねて、R&Bに変化している。それでも違和感どころか、カッコよさ自体は増している天才ぶりを発揮。メロディがしっかりしているので多様なアレンジに負けない強さがある。アレンジもうまく引き算が施されていて井上陽水の雰囲気は残ったままなのもよい。

Justin Timberlake, Anna Kendrick – September

Earth Wind&Fireの大大大名曲のカバー(原曲はコチラ)。多幸感が半端なくて、私も大好きな一曲。原曲より好き。パーティチューンといえばこれ、絶対にここぞというときに聴きたい一曲。ファンクでR&Bでアメリカンポップス。元々が素晴らしすぎるので妙なことしなくても素晴らしい出来になるうえに、所々で加わるアレンジとボーカルの掛け合いがたまらない。これは、もはやこちらを聴くと病みつきになって戻れなくなります。とはいえ、Earth Wind & Fireの来日ライブでSeptember聴きましたが、あれも生涯の思い出に残るライブだったことは、当然記載しておきます。

荒井由実 – ひこうき雲

もともと雪村いづみという方に荒井由実が提供したのだが、結局リリースされず、荒井由実がセルフカバーという形でリリースしたものが、今の世間に浸透しているひこうき雲である。
原曲の雪村いづみバージョンは、荒井由実とはずいぶん違い、もっと情念っぽく、しっとりと歌っている(原曲はコチラ)。またすこし違った雰囲気を味わえ、意味もなんだか異なっているように聞こえる。雪村いづみさんのボーカルクオリティの高さに圧巻されるし、これがなぜリリースされなかったのか、この人はこの曲だけで一生飯食っていけたんじゃないかと思うくらい(もちろん今も活動されており、決して売れなかったという意味ではありません)の完成度。曲にもマッチしていて、納得感もある。荒井由実のひこうき雲とはまた異なる、新しい世界観だった。

Quietdrive – All I Want For Christmas Is you

マライアキャリーの冬の定番曲をまたまた彼らがエモっぽくカバー(原曲はコチラ)。よくこんなエモに合う楽曲をピンポイントで見つけられるなと感心。それもひとつの才能か。2000年代のオルタナロック、ポップパンクにも通ずるある種の軽薄さがしっかりと滲みこまれていて、このジャンルが好きな人間はおもわずにやり。

Red Hot Chili Peppers – Higher Ground

スティーヴィーワンダーの楽曲のカバー(原曲はコチラ)。ファンのみならず洋楽ロックファンにはお馴染みの楽曲。スティーヴィーの原曲がわからなかったので、まず聴いてみたら、「あこれか」とすぐ理解。カバーであること自体は知っていたけど実際に原曲を聴いた事なかったので、むしろスティーヴィーのがカバーに聞こえてしまう不思議。
レッチリバージョンはアルバム「母乳」に収録されていて、その当時のサウンドがそのまま映し出されている、象徴的な一曲。

Rage Against the Machine – Down on the Street

The Stoogesというバンドの楽曲が原曲らしいが、初耳である(原曲はコチラ)。The Stoogesは60年代を代表するバンドで、大きな影響を与えたバンドらしい。安定したベースラインから踊るようにかき鳴らされるギターとイギーポップの特徴的な歌い方が際立つ楽曲。イギーポップの所属していたバンドとはつゆ知らず。
で、それをカバーしたのがrage against the machine。よりハードに、エモーショナルにアレンジされている。シャウトしつつギターが暴れつつ、原曲をいい意味で保っている。これも中々クセになるガツンときた一曲。

Muse – Can’t take my eyes off of you

ボーイズタウンギャングの楽曲をmuseがカバー(原曲はコチラ)。こちらはCMでもよく使われているので原曲が圧倒的に有名。私ももちろん知っている。サビ前の印象的なメロディが有名で、すてきな楽曲だ。こんな楽曲をmuseがカバーすること自体がすでにちょっと面白いのだが、聴いてみたらやっぱりおもしろい。
意外としっかり原曲の香りは残し、museのプログレっぽさは抑えて始まる。あ、そんなことできるのね、と思った束の間、ガガガ!とギターが鳴らされてからは轟音と共に叫び声のようなコーラス。やっぱりmuseだった。何事もなくすぐまたボサノバっぽくしっとり戻るのもおもしろい。でも中毒性の高いカバーで、これはmuseにしかできない芸当である。

以上が前編です。後編はまた近いうちにまとめます。おもしろい楽曲ばかり集まっていて、とてもじゃないけど一人では書けない情報でした。ご協力いただいたみなさん、ありがとうございました。