前回、「 年間ベストを作る前に確認しておいてほしいアーティストたち」というタイトルで、今年リリースされたおすすめのアルバムからいくつか楽曲を紹介したが、今回は楽曲に絞ろうと思う。
私は毎年「年間楽曲ランキング」というものを実施しており、その年のお気に入りの楽曲を100曲、ランキングで紹介しているのだが、今年も鋭意作成中で、その際に再発見した楽曲たちをいくつか紹介する。インディーズなアーティストを中心に選んでいるので、シンプルに新曲発見の一助となれば幸いだし、ぜひあなたの年間ベストにも加えていただきたいと願っている。

美味しい曖昧 – あまあま

5人組のアイドルグループ、美味しい曖昧。まだ活動も今年からとこれからのグループだが、この楽曲の特異点は、いままでのアイドルの王道ではないというところ。
ものすごく雑な所感を述べると、いままでのアイドルの、特にロックのテイストを出していたアイドルの楽曲は、どちらかというとハードロックやエモ、パンクといったジャンルが多かったように思う。それこそ楽曲派アイドルが増え、フェスに出演し始め、強いアティチュードが好まれるようになってからの事だと思うが、ロックチューンなアイドルは多かった。でもこの美味しい曖昧は、ロックチューンではあるが、そのアプローチがネットミュージック的なのだ。恥ずかしながらニコニコや歌い手、ボカロといった広義のネットミュージックは専門外であまり詳しくないのだが、詳しくないからこそ感じる漠然としたネットミュージック的なリズムやメロディ展開は存在していて、この「あまあま」はまさにギターのリフがそのままで、まるでYOASOBIやヨルシカといった、あの音楽に近しいものを感じる。それが私にとっては新鮮だったし、時代性を鑑みれば「そりゃそうだな」と思うのだ。
ちょっといかにもなフックが目の前につるされていて、まんまと引っかかったみたいで悔しいが、キャッチーさに勝るものはないと思う。

 

NEE – 不革命前夜

もうひとつ「ネットミュージックだなあ!」と感じる曲を。まあこのくくりは私の浅い知識による雑なもので真に受けないでほしいが、とにかくリフが暴力的にキャッチーなのは共通項である。4人組ロックバンドの彼らの魅力はこのキャッチーさと疾走感と2010年代の10代を想起させる新世代の音である。これが主流になりつつある中、私にとってはそれでも新鮮で魅力的なのだ。とはいえ、こういった曲は彼らの専売特許でもないし、言ってしまえば「最近よくある曲」になってしまう。しかし、他の曲には目もくれず、彼らを今回推すのはアニメーションでもギターの音色でも女性のコーラスの妙でもなく、サビの生生しいボーカルだ。声を枯らしサビを一番高いところで歌うのは、無機質性の強いネットミュージックに添えられた一つのアクセントである。私はこの曲、大いにありだと思う!!(にしても再生回数凄いね…)

 

PEOPLE 1 – 常夜燈

もうひとつ10代みたいな選出を。先に言うと、MVのようなアニメーションが実はあんまり得意ではなくて、こういうコンテンツを見る度に”そっ閉じ”してしまいがちなのだが、これは曲が素敵なのでずっと見ていられる。そして少しずつこういうカルチャーへの耐性もついてきた。前二曲とはうってかわって、空白の多い楽曲で、ベースとピアノの絡みがここちよい。サビで少し音が下がるのも好み。
じっくり聞くとユニークな部分もあったりと、音楽センスも垣間見える。ちなみにNEEもPEOPLE1も影響下にあるバンドとして、Gorillazを挙げている。何となくそれは分かる気がする。

 

Group2 – Internet

残念ながらMVはないんだけど、この不思議な感覚はクセになる。色々と思いつくミュージシャンはいるが、そのなかでも彼ららしさを感じられるのがGroup2。わかりやすさとわかりにくさのバランスが良く、一度で満足しきれないのがリピートのコツ。たしかな音楽素養をうまくポップスに応用させ、子気味良く仕上げている。

 

I’m – BATHROOM

ここまできたらどポップに攻めるしかないか、と思い切ってI’mというアーティストを紹介。現役高校生、と枕詞があちこちでついているが、私が実際高校生の時の「高校生シンガー」的な謳い文句って、ほとんどギター弾き語り系だった。そう思うとこの10年の打ち込みの浸透度、それによる革新性は語りつくせない。で、このへんのチル×10代の連帯感は強く、一体となって大きなムーブメントを起こしている。いま流行に敏感な10代はここを攻めているんだろうなあと把握しやすさもあるが、このチルっぽさから誰が一番に飛び抜けスターになるのか気になる。

 

Doul – 16yrs

これまた若いアーティスト、Doul。今挙げたアーティストと年齢は近いが、狙うジャンルは異なっている。より海外志向が強いサウンド性で、少し懐かしいのが特徴。ここからどんどん作曲をしていき、楽曲性に磨きをかけていけば海外でウケることもできるだろうし、大きくのびのびと制作をしてほしい。

以上がおすすめの楽曲だ。ぜひ一度聴いてみてほしい。私の年間ベスト100にも入っているか、楽しみにしていてください。