フジロックに行こう

今年も夏フェスの季節がやってきました。

ここ数年はこの季節は夏フェスの話題で(良くも悪くも)もちきりですが、その先陣を切って始まるのがやっぱりフジロックなのではないでしょうか。

私も去年初めて前夜祭から含む3日間全てに参加し、間違いなく人生一番のフェス体験をしたわけですが、そんなフジロックが今年も7月26日から28日の3日間開催されます。

FUJI ROCK FESTIVAL 公式HP

また、私を含め今年は現地に行けないよという人にも朗報。今年はPrime VideoとTwitchのAmazon Music公式3チャンネルにて無料でライブ配信をおこなってくれるそう。Prime VideoはAmazonのアカウントさえあればプライム会員でなくても見られるということだそうで、要するに無料。これはアツい。

ということで、今年のフジロック、いろんな人がいろんな角度からおすすめアーティストとか話しているとは思うのですが、私も個人的に気になるアーティストをいくつかチェックしながらこれを機に一緒に予習しましょうという企画です。基本的にはあまりフジロックや洋楽に詳しくないしちらっと配信覗いてみようとは思っているけど何見るか迷っている人向けに書いてます。

1日目(7/26)

初日の金曜日のヘッドライナーはTHE KILLERS。SZAが急遽キャンセルとなり代役として抜擢されたのがこのTHE KILLERSというバンド。日本でも根強い人気を誇るバンドでこのブッキングは大きな歓迎ムードで迎えられたように見受けられる。個人的なフェスの価値観として、基本的にはヘッドライナーはアンセムのある、シンガロングがしやすい(いい意味でわかりやすい)アーティストがいいんじゃないかな、と思っているのでこのTHE KILLERSはまさにうってつけ。とっつきやすく歌いやすく、スタジアムロックを鳴らしてくれるという点でもフェス向きのバンド。”Mr Brightside”なんかは誰しもが知る名曲なので歌わない選択はありえないだろうし、間違いなくこの3日間振り返った時に観た人は大抵ベストアクトに挙げるんじゃなかろうか。

ちなみに一部ではこのブッキングに「新しくない、時代が古い」と批判的なひともいるようですが、私はヘッドライナーのドタキャン後にここまでの大物アーティストを引っ張ってきたこと自体がまずなにより素晴らしいので時代性はひとまずおいといていいんじゃないかなって思う(結果的に3日間ともトレンドなアーティストがいないのは少し寂しいの事実ですが、もとはと言えばトレンド枠のSZAのキャンセルが悪いわけだしフジロックはちゃんと踏まえてやろうとしていたことはちゃんと言及してあげてほしい)。

OMAR APOLLOはアメリカのシンガーで、シンプルに声が良くて聴きやすい。フックとリフレインがちゃんとあるので、一回聴けばぐっと引き込まれる性質がある。きらびやかな管楽器、切なくしみわたるピアノ、しなやかなギターと踊れてゆったりできるアーティストとしてまず挙げたいのが彼。”Less of You”のような20世紀の描く近未来的なトラックは懐かしさと彼の温かみを感じられる良曲。

もう一組挙げるとするなら、大貫妙子はERIKA DE CASIERとFRIKOと丸被りなので非常にシビアな時間帯ではあるが、ぜひ見てみたい。私もこれを機に一緒に勉強したい。結構なカタログ数なのですべてを網羅することは難しいと思うので、まずは私も知っている77年の「SUNSHOWER」は押さえておいて間違いないだろう。洗練された都会的なサウンド、跳ねるリズム隊、今の時代にはこんな歌い方ができる人少ないよなあと思う素朴かつスタイリッシュなボーカル。FRIKOがグリーンというやりすぎな演出にまけないパフォーマンスがみられるはず。

2日目(7/27)

2日目でまず気になるのがHedigan’s。本格始動をはじめリリースも行いいよいよエンジンがかかっていきている彼らのライブはしっかりと見てみたい。Suchmosとは違い派手さもフックも少ないが、実はめちゃくちゃ聴きやすいメロディだしチャーミーでシニカルな歌詞も多くて頭に残るフレーズがどんどん出てくるバンド。ケロポンズにいかなければならない理由がないならとりあえず行っておいて楽しめないことはないだろうと期待している。

EYEDRESSやGlass Beamsといったアーティストも日本ではフジロックくらいでしか味わえないだろう。オーストラリア出身のインストバンド、Glass Beamsは70年代のサイケやシタールやタブラといったインドの音楽を取り入れ(事実メンバーの一人の父親はインド人らしい)、独自の世界を作り出している。理解不能な言語でコーラスを重ねる姿はSigur Rosとも被るし、サイケデリックな音楽性はアメリカテキサスのバンド、Khruangbinを想起させる。

3日目(7/28)

まず気になるのはCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINになるだろう。深い音楽への造詣とユニークな視点から成される音楽性は早熟そのもので、この無敵感はいま見ておくことが必須だ。

また、YĪN YĪN は少し暑さも和らいだ5時頃に登場。とにかく楽しくて踊れてチルになれること間違いないアクトになると思う。これは映像より現地で見るべきアーティストのひとつ。オランダのバンドではあるが東洋のエッセンスがちりばめられており、それは日本のシティポップも含まれる。このYĪN YĪNもGlass Beams同様、Khruangbinの影響も感じられる。アルバムタイトルにも「matsu」が入り、曲名は「ウサギ年」だったりと太陰太陽暦への参照も見られ、かなり中国や日本への熱いこだわりが見られる。こうした日本への造詣も深いとみられる彼らの日本観を私たち日本人が味わうのも面白い発見があるだろう。

この3日目のなかで一番気になるのはFontaines D.C.。正直知名度のわりに私もよくわかっておらず、このキャパでやるのは不相応なくらいに人気のあるバンドだそう。つまりレッドマーキーで見るFontaines D.C.は貴重ということ!UKのこの抑揚のない語りのような歌はハマる人にはハマるはず。

この日は気になる若手アーティストが二組いる。まずはkurayamisaka。ここ数年の邦ロックシーンでふつふつと湧いてくるシューゲイズっぽいギターノイズとたゆたうボーカルの最右翼は羊文学だとしたら最も注目すべきネクストアーティストはkurayamisakaだろう。けっしてそれは羊文学と同じであるという意味ではなく、For Tracy Hydeのような残響感もあるしリーガルリリーのような聖歌のような反響感もある。

もう一組は眞名子 新。私も新譜探しの恒例の企画で数か月前に知ったばかりで、でもそのときから耳を引く声とシンプルかつ洗練されたサウンドが気にはなっていた。ともすれば結構”フツー”と評価されかねないシンプルさではあるが、折坂悠太がそうでないように眞名子 新もその個性を持っているような気がする。

あとは夏川りみを聴いてもうそれはそれはとんでもない音楽体験をするのもいいかもしれない。歌が上手すぎて「歌うまいと思うアーティストランキング」にミリも登場しないチート級の夏川りみは現地であの暑さと木陰の癒しと彼女が送り届けるソウルを感じるのも最高だろう(配信では感じられないのが残念だ)。

まとめ

去年初めてフジロックに参加してみて、やっぱりこのフェスは多くの人が言うとおりに、全く他のフェスとは異なる体験ができるし価値観を揺るがす経験だった。どのアーティストを観るかを最優先にしない、いつ何をどこでどうやって観るか、それが自分にとっての基準となった。だから観たいアーティストを泣く泣く見逃してでもDayDreaming(ゴンドラに乗って行きつく世捨て人がたどり着くようなあっちのせかいとこっちの世界の境界線みたいなところ)に行ったし、それに後悔がないという自分にも驚く。そんなフジロックに行く人も、今年は配信で楽しむよって人も(私も)ぜひ楽しんじゃいましょう。