日本ですっかり新たなイベントとして定着したハロウィーン。当初は、「へっ、ハロウィーンてのは本来コスプレイベントなんかじゃねえんだよバーカ」と言えたものも、2017年で言うのならダサいだけ。もう後戻りなんてできない。むしろ過疎化した地方を再興させたいならこのイベントを利用しない手はないほど。企業側もハロウィーンという自由度の高さを活用し、様々なジャンルがハロウィーンに参入していることもこの勢いを加速させている。バレンタインのようなチョコのイメージが強いものより、”コスプレ””かぼちゃ”としか決められていないハロウィーンの方がいくらでもやりようがあるわけだ。
とすれば音楽も同じことが言えるだろう。商業音楽として大切なことは長く消費されること。決して一時的なブームではなく(それだけでも立派な事であるが)、人々の生活に入り込んだ曲を作ることがヒットの大原則であることは殊更言うほどのものでもない。当時まだ根付いていなかったバレンタインデーに、いちはやく専用の曲を出した国生さゆりの「バレンタインキッス」(作詞秋元康作曲瀬井広明)は、彼女のソロデビュー曲でもあり、これが彼女のソロ活動を大きく支えた。
他にも、結婚式なら安室奈美恵の「Can You Celebrate?」や木村カエラの「Butterfly」、春なら森山直太朗の「さくら」、夏休みならTUBE「あー夏休み」、クリスマスならMariah Careyの「All I Want For christmas Is You」と相場が決まっているように、イベントごとに音楽は必須である。
イベントだけに限らない。ご当地ソングだって同じことがいえる。演歌歌手を筆頭に、多くの歌手がその地域で歌われる曲を作っている。そうすれば時代で風化しにくいからだ。
しかしもうすでに強固に楽曲が根付いたイベントに新たに挑むのは難しい。クリスマスはいまだに毎年多くのJPOPアーティストやアイドルが楽曲をリリースしているが、一年に一曲も根付くことはないし結局使われるのはマライアキャリーかワム!か山下達郎でありbacknumberではない(今のところだが)。
ではハロウィーンソングはどうなっているのか。きゃりーぱみゅぱみゅが2015年にリリースした(さすがきゃりー陣営はやることが早い)「Crazy Party Night ~ぱんぷきんの逆襲~」が今のところ一つ抜けている。AKB48も同年「ハロウィン・ナイト」をリリースしているが、定着には至っていない。しかしきゃりーの楽曲も安定しているかと問われれば疑問符がつく。「Crazy Party Night ~ぱんぷきんの逆襲~」は、発売当初の2015年にはコカ・コーラの企業CMとして、2017年にはイオンの企業CMとして使用されているため、安易なテレビの二次使用が難しくなっている。やはり文化の曲として根付かせるためにはバラエティ番組やワイドショーの力は欠かせない。
単純接触効果という言葉がよくつかわれる広告の世界だが、繰り返し聴かせることはその曲を定着させる最も簡単な方法だ。だからごり押しなんてことが頻繁に起きる。ハロウィーンを代表する曲ができればきっとそれは未来永劫、ハロウィーン文化が廃れるその日までかかり続けるに違いない。ではハロウィーンの曲として定着させるには何が必要だろうか。
まず仮装は必要である。上記二曲ももちろんコスプレをしている。きゃりーとAKB48のどちらもそのコスプレと非常に相性がいいので当然のコラボともいえる(きゃりーに関しては年中ハロウィンみたいなものだ)。続いて楽曲だが、やはり「ハロウィーンらしさ」が求められる。クリスマスならクリスマスベルが不可欠だし、夏の曲なら沖縄っぽい三味線の音や波の音も必要だろう。ではハロウィーンに必要な音は何だろうか。それは”不気味さ”だ。ハロウィーンで想起されるドラキュラや魔女、ゾンビといったおどろおどろしさがハロウィーンの楽曲には必要だ。不協和音やマイナーコードを使うのも一つの手だ。またAKBのようなあえてディスコチューンにしてあたらしいハロウィーン観を築くのもいい。
いずれにせよ「仮装」と「マイナーコード」は欠かせないだろう(今のところ)。つまりmiwaやナオトインティライミみたいな力がこみ上げてくるアーティストには不向きだし、秦基博みたいな踊りにくく本人も仮装しそうにない人は難しい。そこで個人的にハロウィーンソングを作るに適したアーティストを3組考えたので、ぜひこの3組は真剣に考えてもらいたい。
夏と言えば「夏色」、オリンピックと言えば「栄光の架橋」と代表曲を作るのはお茶の子さいさいなゆずはどうだろうか。ときにクレヨンしんちゃんとコラボし「オラ!」なんて言いながらスペインの仮装したりもしているので、ハロウィーンの仮装も何のためらいもなくやってくれるに違いない。老若男女問わず人気のあるゆずだからこその大抜擢だ。
逆にハロウィーンを散々こき下ろす曲があってもいいかもしれない。「ハロウィーンでコスプレするやつ大体ナルシストー!」みたいな。今は「はいみんな楽しみましょうねー」というものより、自虐的であったりカウンター的なものの方が世の中にウケやすい。コスプレも全く問題ない。
鬼ちゃんかなんかでやっとけ。売れるよ。なんとでもなる。本人サイドはすげえシリアス路線で米津玄師とコラボして同じようなタイプ演じてるけど。全然違うのに。
まあでも菅田将暉に「あんなの歌上手くもないし個性があるわけでもないやんけ!」と怒る男は、自分の胸に手を当ててこの曲を聴いて反省してほしい。
にしても米津ってアレだね。いままでイケメンじゃないけど雰囲気で崇められてきた人ってたくさんいた(藤原基央や野田洋次郎など)けど、そこに並べて語るのが失礼なくらい群を抜いてアレ。正直全然ごまかせてない気がするんだけど、才能があるからオッケーなんだろう。
もちろん、存在そのものがヴァンパイアみたいなVAMPSやお笑い担当ゴールデンボンバーなど、適任はたくさんいるが敢えてこの三組をチョイスしてみた。電通さん、ご参考ください。