2019年にBUMP OF CHICKENのライブに行って以来、長い間遠ざかっていた単独ライブ。5月にようやくフェスに参加することができ、そして単独。
3度目のライブとなり単独は初めての、きゃりーぱみゅぱみゅ。
初めて見たのは10年ほど前、当時通っていた大学の学祭にきていたのを見たのが一度、そしてフェスでのステージで一度。それぞれ初期の彼女、中期の彼女、そして今回10周年の彼女をみることになる。ターニングポイントに立ち会えたことは光栄だ。
2000人ほど収容できる会場に、9割以上埋まったこの日のステージは、「キャンディーレーサー」から始まった。今回4階からの鑑賞になったが、前列に小さな娘さんと息子さんを連れた家族がいて、終始その風景に癒されていた。
「キャンディーレーサー」のバキバキにイカしたサウンドは冒頭から会場をダンスホールと変え、私にとってはライブというよりはクラブに近い感覚を覚えて、懐かしくなった。またああいう空間に行きたいと強く搔き立てられた。でもそれに十分匹敵するきゃりーのファンタジーな衣装とセッティング。ネオン管にインベーダーゲームのキャラクターや当時のゲーム機、オリエンタルなイメージで構築されたセッティングと鳴らされるクレイジーな「どどんぱ」のようなトランスミュージックのミスマッチ。それがより一層トリップな感覚を強めた。
たたみかけるように「もんだいガール」を披露すると、おもわず私も胸が熱くなった。この曲は私が最も好きな彼女の曲だからだ。それは彼女自身ももっとも疲弊し、困惑していた時期に作られた楽曲だと知っているからだし、そして自分自身もその歌詞に大きく心をつかまれたからだ。
だれかを責めるときには「みんなとちがう」というけど
毎回「みんな」にあてはまる そんなやつなんているのかよ
できないことへの憧れを作り替えてく勇気もなく
足を引っ張るのには夢中 なんてもったいないやいやいキミももんだいがある
普通になんてなれないでしょ
あたしもんだいガール?
まともがまともを求めるの?
決して個性はきゃりーのような人前でそれらを披露する人たちだけのための言葉ではない。そのメッセージを若い人たち、あるいは子供たちにむけて放つ意味はとても重い。どうしてもこの歌を聴くと目頭が熱くなるし、自分自身も奮い立たされるし、こんな素晴らしいメッセージを若い人たちに聴かせられる状況が素敵でうれしくなる。どんな軽いポジティブソングより意味のある一曲だ。
一方MCではコーチェラの話を普通にするきゃりー。何の前触れも解説もなく「コーチェラ」の単語を連発するので、なんのことかよくわからなかった人もいるかもしれない。コーチェラとはコーチェラフェスティバルのことで、毎年春に行われるアメリカ最大級の音楽フェスティバルだ。そこにきゃりーが今年初めて出演し、世界で最も売れているアーティストの一人であるBillie Eilishの裏でパフォーマンスしたことも話題になった。2週にわたって行われたコーチェラだが、2週目はダンサーが体調不良になり、きゃりー一人で乗り切らねばならず、その奮闘ぶりも話題になった。今日の質問コーナーではそのコーチェラで事前に食べたものがあるのかという質問に対し、「ジャンプしたりするからライブ前に食べたりはしない」と断りつつも、Perfumeのあ~ちゃんにもらった赤だし(彼女自身もコーチェラ出演の際に飲んだそうだ)を飲んだという。ケータリングは砂ぼこりで食べられなかったともいっており、貴重な舞台裏を教えてもらった。
https://youtu.be/B2VTWu5hHsU
今回、10周年記念のツアーではあるが、本当にこのタイミングで来られてよかったと思っている。もともときゃりーには感謝しかなく、当時自作自演のアーティストしか認めないと意固地になっていた自分に、楽しみ方を教えてくれたのがきゃりーだった。そのおかげでいろんなJPOPが大好きになり、アイドルも好きになったりヒップホップに興味を持ったりと、音楽の幅が広がった。間違いなくその原点はきゃりーであり、Perfumeだった。作曲を担当する中田ヤスタカの独創的でキャッチーなサウンド、そしてそれに乗っかるきゃりーのぶれない強い姿勢と歌。ポップだけど安っぽくなく、年々強さを身につけていく。先に挙げた「もんだいガール」や「最&高」のような最高にクールなリリックや、「ファッションモンスター」のような最強ソングもすべてがカッコよく、美しい。
そして去年「キャンディーレーサー」を発売。一転えげつないほど躍らせに来たダンスミュージックアルバムができた。まちがいなく爆音で訊きたい、かつ初期のころのような「原点回避」や「じゃんぴんなっぷ」といった耳障りの良い楽曲もしっかり収録されているアルバム。それを惜しみなくこの日のライブでも披露してくれた。
今回3つのコンセプトに合わせて衣装と舞台セットを変更してきたきゃりー。どれもが非常に彼女の意向が反映されていて、それがファンの満足度を高める結果になっている。そしてこの日「PONPONPON」も「インベーダーインベーダー」も「ファッションモンスター」も「つけまつける」「にんじゃりばんばん」も披露されていない。それだけ初期中期の代表曲を削ってでもやるべき楽曲があるということの表れだし、私自身それがなくても非常に楽しめた。というか、最新アルバムの楽曲を余すことなく披露してくれたことの方に感激している。これはライブで大音量で聴くべきアルバムだと確信して以来、いつみられるのかずっとワクワクしていた。ラストの「原点回避」まで一切妥協のない完璧なセットリストだった。アンコールの「きらきらキラー」の前振りでは、コーチェラで急遽一人でステージに上がらざるを得ない状況になり、元々予定していなかったこの曲を披露することにしたという。「今こうやってダンサーのみんなと踊れることを思うと泣きそうになる」と語っていたが、「おかげでこの曲がピンチのときのヒーローのような曲になった」ともこぼしていた。「きらきらキラー」を完璧に歌い上げると、初期の楽曲である「ちゃんちゃかちゃん」で大団円を締めくくった。
「4階ははじめましてですか?」と言っていたきゃりーの言いたいことも理解できるくらいに、1階のスタンドの観客の統率力はすさまじく、「演歌ナトリウム」でのペンライト(これもまたかわいいデザインなんだよ)での色変更もなんなくこなし、上から見ていて壮観だった。
終始フランクな口調でなごやかな雰囲気だったライブ。子供たちがキャリーのダンスに見よう見まねで踊ってみたりペンライトを振って見せたりと、まだまだこんなご時世だけれどこんな光景が見られて本当にうれしくなった。必死に何度も手を振っていたの、きゃりーにも届いているといいなと強く願ったり。
もういい加減ライブを観て「できるだけで幸せ」って感じて泣きそうになる(実際泣いてる)の、やめたい。そろそろ普通に観られるメンタルが欲しい。でもどうしても一度失ったものを取り戻した時の感情は高ぶってしまうし、きゃりーのライブとなればその気持ちはなおさらだ。
あまりに幸せな空間だったので、サマソニでももう一度見たいなあと真剣に悩んでいる。
セットリストは以下です
- キャンディーレーサー
- どどんぱ
- もんだいガール(Extended mix)
- さいごのアイスクリーム
- CANDY CANDY
- ガムがムガール
- パーフェストおねいさん
- world fabrication
- do do pi do
- 演歌ナトリウム
- コスメティックコースター
- Crazy Party Night ~ぱんぷきんの逆襲~
- でもでもまだまだ
- DE.BA.YA.SHI.2021
- かまいたち
- 原宿いやほい
- 夏色フラワー
- じゃんぴんなっぷ
- メイビーベイビー
- 原点回避
- きらきらキラー(アンコール1)
- ちゃんちゃかちゃん(アンコール2)