前提

まず大前提として私の音楽観から語っておく。いらねえわ、って思うかもしれないが今日の文章を誤解させないための大切なポイントになるので語っておく。

10代の頃はたくさん音楽から教わって音楽に背中を押してもらった。音楽が好きな人ならこのことに異論を唱える人はいないだろう。でもそれなりに歳を取ってくると音楽に救われるなんて経験は減ってくる。自分で何とかすることができるようになるし、音楽ではどうすることもできない現実も数えきれないほど出現する。年齢もそんな葛藤に悩むような時代ではないし、良い意味でピュアさも薄れていく。もちろん30になっても40になっても音楽を人生の一部ととらえ学び続け救われ続け信心深くシリアスに向き合い続けることも素晴らしいと思う。でも私には

音楽は商売であり娯楽である

を念頭に置いている。だからお金を払う。そしてお金を払うのはこちらの意思であり、お金を払わないことにとやかく言われる筋合いはない。ましてやCDで買うのかストリーミングで済ますのかなんてこっちの選択だ。フェスでみて単独に行かないのも責められる理由がないし、それをおもしろいと言おうがつまらないと言おうが自由なのだ。音楽にいちいち遠慮したり忖度したりする必要はない。「お前は曲作れるのか。楽器弾けるのか」と問われても困るし、だったら批判してはいけないというのならそれは文化の終焉であると常々思う。基本的には何を言ったっていいのだ。

マイファスとバンド

と、長々前置きをしたところで本題に。My First Storyというバンド、みなさんはご存知ですか。ONE OK ROCKのボーカルtakaの弟がボーカルを務めるバンド、といううたい文句はもう散々されてきたかもしれない。ジャンルはラウドロックになるのか、多分。


多分、と言ったのは私はこのジャンルはめっぽう弱いから。メタル、プログレ、ハードコアからこのラウドロックまで、とにかくこの一連のジャンルには疎い。メタリカだとかスリップノットだとかシステムオブアダウンだとか、P.T.P.?ドラゴンアッシュ?SiM?Coldrain?Totalfat?へ?となることは間違いない。もちろん曲は知ってるしどんな立場でどれくらいの知名度があるのか、ざっくりとした歴史なども知っている。ただ深くは分からない。そんなわたしが突然マイファスのライブに行くことになったのは、知人から一枚チケットを譲り受けたからだ。金払って観たいとは思わないバンドだけど、ただで観られるなら、まあ笑。というのは分かってもらえると思う。というわけでオリックス劇場へ。

オリックス劇場は全席指定席の着席型の会場である。なのでわりとライブと言うよりはコンサート会場に近い空気感がある。事実、劇団☆新感線もここで舞台をするなど、幅広い使われ方をされている。
実はマイファス、昨日からここオリックス劇場での2デイズでこの日が2日目。しかも初めてのホールツアー。ライブハウスとは勝手が違い、椅子が置かれ、だれも身動き取れない状態でのライブ。マイファス=モッシュ・ダイブ、みたいなイメージだったのでオリックス劇場でのライブを想像するのは容易いものではなかった。事実、ライブMCでも度々「初めてのホールツアーで僕たちもお客さんもみんな困っていた」としきりに繰り返していた。彼らの初めてとその模索を生々しく見届けたライブだった。

ライブ内容よりもまず、マイファスとはどんなバンドなのか何曲か聴いてみる。

彼らはいままで(そしてこれからも)ワンオクを引き合いに出されてきたはずだ。そして心無い人たちから「パクリじゃん」と言われたのだろう。そのたびにファンは「パクリじゃないもん!!まずボーカルの声が似ているようで似ていない。ワンオクのTakaよりマイファスのHiroの方が高音に透明感がある。(LIVEではそうもいかないけど)でも高音に限らず声のハリはTakaの方が圧倒的。曲に関してはマイファスの方がアニソンっぽいというか個性的。ワンパターンな気もするけど。その点、ワンオクはマイファスより器用な気がする。もん!(知恵袋より)
と徹底抗戦の構えを見せる。
そもそもパクリとは意図的に真似して売れている物に乗っかってやろうという魂胆のものであるが、マイファスがそうだとは思わない。兄弟なので声が似ている、仕草も似る、好きな音楽ジャンルも似る、どちらもバンドやる、そりゃ似るでしょう。という結論。パクリというか結果論でしかない。
ただ、パクリでないことは否定できても似ていないことは否定できない。本当に仕草もそっくりだし、ある意味「パクリだ」といわれてもしょうがない。それが誤解だと全員に知ってもらおうとするのはファンのエゴでしかない。これは甘んじて受け入れるべきなのかもしれない。

高橋真麻は凛としている

私の一番苦手なタレントの一人に高橋真麻がいる。彼女は俳優・高橋英樹の娘であり、2世タレントとして有名な元フジテレビアナウンサーである。キャバ嬢みたいなクオリティばかりを意図的に集めているフジテレビ女子アナにおいて彼女は異質だった。どっからどうみても「おいお前コネ入社だろ」と言わずにいられなくなる。でも彼女はそんな冷たい目にびくともしない。むしろそれを堂々と受け止める。大抵の場合、「まあ絶世の美女ではないけれど、2世と言われないようにとてつもない努力を重ねてたくさん勉強してきたんだな」と認められることによってその不均衡は解消されるのだが、彼女のクイズ番組やワイドショーでの発言をみても全くその知性を感じないところもすごい。女子アナに必要な”美貌”と”知性”をどちらもクリアしてやろうという姿勢もなく凛とテレビカメラの前に立ち、お茶の間の好感度を獲得していく姿は好き嫌いの前に尊敬する。「私身体張れるんです」「私恋愛の話大好きなんです」というアイドルと合コンの場だったらぶん殴れるような稚拙なアピールもテレビの前では有効らしい。
マイファスのhiroもこれくらいの姿勢を貫くなら評価する。「ええ意識してますよそりゃ。で?」ぐらいでいいと思う。高橋真麻が「コネ入社でもいいわよ」と言ったかどうかは不明だが、そこに歴然たる事実があるならすっかり認めてしまえばいい。そこから活路を見出せばいい。私はHiroを不遇だとか不運だとかは思わない。「あんな家族の下に生まれたんだからそりゃ悩みもアイデンティティの喪失もあるだろうなあ」なんて同情はしない。彼は勝手に兄の模倣をして勝手にデビューしてきたんだ。さすがの真麻も桃太郎侍はやらずに鼻フックもできるタレントに転身したんだ。あれこれ言われるのは彼自身の選択であり嫌ならバンド辞めて俳優にでもなればいい。それでもバンドがしたいのならそれは受け入れるしかない。本人もおそらくわかっている。有名家族ならではの孤独感も計り知れないだろう。あとはファンだ。ファンが受け入れなければならない。頑なに「違う!!これはワンオクとは全然違うの!」と言ったところでマイファスは一歩も進めない。どうあがいたって似ているしそっくりだしおんなじだ。

ライブ所感

ところでライブ自体は音が悪かった印象を受けた。聴かせるライブを今回はめざしたのだろうが3階席からは音がぐしゃっと混じり合って届く。ジャンル的に仕方のないものかもしれないが、3階から聴いていたはずなのに耳鳴りが一晩止まなかった。おなじようなBPMの曲が続き、バラードは途中の一曲のみ。それでも比較的聴かせる楽曲を意図的にチョイスしてたのではないかとは思うが(他の曲をしらないので比較はできないが)。
でもさすがホールツアーを周れるほどのバンド名だけあって実力はあった。歌唱力も十分高いし演奏力も確か。このジャンルを楽しむノウハウはなくてもこのバンドが人気になれる理由はなんとなくわかる。途中、バンドの前にスクリーンが投影され、MVと共に演奏する演出があり、そういった幅のきかせた楽しみ方は初心者にもとてもやさしかった。ファンも若い女性からおじさんまで万遍なくいて、意外と層の広いバンドであるなと感じた。ボーカルの甘いマスクとメンバーへのふてぶてしいしゃべり方も魅力の一つだ。
ひとつ気になったのは、やたらとツアーファイナルの横浜アリーナを引き合いに出していたことだ。「ここを横浜アリーナと想定して」と度々口にしていた。ここはオリックス劇場で大阪なんだから、それはそれ、これはこれでいいんじゃないのかな、なんて思ったり。あんまりにも先の事見据えられると、せっかく今を共有しようとしてるファンにステップにされているような気持ちを与えてしまいかねないような気がする。かつて「ワンオクを超える」と発言して以来「それ言う必要ある?」と議論されてきたバンドなだけに、不要な発言はファンのためにも控えた方がいいのでは、と感じた。

まとめ

冒頭でも言ったように、音楽なんて所詮ビジネスと娯楽である。いちいちバンドマンの想いや葛藤なんて聞く義理なんてない。そんなの無視して私たちは好きなように思ったことを言えばいい(まあそんなことすればたいていファンから”ひんしゅく”を買うのだが)。Hiroがどう悩んできただろうが、takaをどう思っていようが、しったこっちゃない。今あるのはもうほぼそっくりな曲とタイトルと歌詞と歌い方と声だけ。そしてライブが全て。その結果として私はこのジャンルの面白さに気付けないし、ファッションもかっこいいとは思えなかった。でもそれはNot My Tasteなだけであってマイファスがくだらないバンドだという事には当然ならない。連れて行ってくれた友人には感謝する。こんな機会は中々与えられない。またなにかあればお誘いください。無料なら何でも行くんで。