2019年の邦画でめぼしいものと言えば、まずはこの映画が挙げられるだろう。というかそれ以外の大手の会社が配給している映画が実に商業的過ぎて面白い映画、映画らしい映画を作ろうという気概が一切ないだけなのだが。それにしても清々しい商業っぷりに笑える。
戦艦大和の建造をめぐるさまざまな謀略を描いた三田紀房による同名マンガを、菅田将暉主演、「ALWAYS 三丁目の夕日」「永遠の0」の山崎貴監督のメガホンで実写映画化。日本と欧米の対立が激化する昭和8年、日本帝国海軍上層部は巨大戦艦・大和の建造計画に大きな期待を寄せていたが、海軍少将・山本五十六はその計画に待ったをかけた。山本は代替案を提案するも、上層部は世界に誇示する大きさを誇る大和の建造を支持していた。山本は大和の建造にかかる莫大な費用を算出し、大和建造計画の裏に隠された不正を暴くべく、天才数学者・櫂直を海軍に招き入れる。数学的能力、そして持ち前の度胸を活かし、大和の試算を行っていく櫂の前に帝国海軍の大きな壁が立ちはだかる。菅田が櫂役、舘ひろしが山本五十六役を演じるほか、浜辺美波、柄本佑、笑福亭鶴瓶らが顔をそろえる。
冒頭の戦艦大和の沈没シーンは、あくまで前振りで、先に結論を見せておくことで(なくても十分史実としては知られているが)、これから起きる出来事の皮肉さというか、結局菅田将暉演じる櫂直の努力のむなしさが前半からひしひしと感じられる。
その後、なぜ櫂直の反論虚しく大和は建造さることになってしまったのか、それがわかる後半20分がおもしろい。あそこで、この映画の面白さが数段増す。そして菅田将暉の最後の涙の意味が分かる。でもそれは明示されない。それが映画だなとつくづく思う。
どうしても漫画原作の映画になると、漫画に忠実になり、説明過多になりがちだ。すべてをセリフで表現してしまうのは映画とは言えない、と考えている。でもアルキメデスはひたすら語りに徹する映画なのに、。最後だけはしっかりと余韻を残した。
あまりこの映画にまともな人物が出てこないのも時代だなって思う。山本五十六(舘ひろし)が冒頭でしっかり描かれてるからさてどんな菅田将暉との絡みするのかと思いきやすぐにフェードアウトして最後にまた出てきてわけわからんことするし、山本五十六だわーっという非常にシンプルな感想。
2019年の映画ではみておいて損はない作品。