2020年6月にNHK BS8Kで放送された黒沢清監督、蒼井優主演の同名ドラマをスクリーンサイズや色調を新たにした劇場版として劇場公開。1940年の満州。恐ろしい国家機密を偶然知ってしまった優作は、正義のためにその顛末を世に知らしめようとする。夫が反逆者と疑われる中、妻の聡子はスパイの妻と罵られようとも、愛する夫を信じて、ともに生きることを心に誓う。そんな2人の運命を太平洋戦争開戦間近の日本という時代の大きな荒波が飲み込んでいく。蒼井と高橋一生が「ロマンスドール」に続いて夫婦役を演じたほか、東出昌大、笹野高史らが顔をそろえる。「ハッピーアワー」の濱口竜介と野原位が黒沢とともに脚本を担当。「ペトロールズ」「東京事変」で活躍するミュージシャンの長岡亮介が音楽を担当。第77回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で銀獅子賞（最優秀監督賞）を受賞。
映画.comより
さすがNHKというべきか、NHKらしい撮り方だなとすぐにわかる手法で、丁寧に作りこまれた作品。スパイである夫の妻になった主人公聡子、でもあるし、スパイとなった妻・聡子の物語でもある。非常にあやうく、正義とリスクが常に隣り合わせの綱渡りのような展開が続く。
蒼井優の芯ある女性の演技はやはりすばらしい。一方で「百万円と苦虫女」や「アズミハルコは行方不明」のような無計画な放浪性をもった女性もうまく演じていて、その実力は語るまでもない。
高橋一生の一筋縄ではいかない感じは彼そのものの人間性を表しているのではと勘ぐってしまうほどによく似合っている。あの笑みが単純な優しさからくるものには思えなくて、常に闇を感じ取ってしまうのだが、それほどに彼の実力の高さを証明している。
そしてやっぱり東出はいつだってヒール役がよく似合う。
