韓国人の移民を描いた映画としてアカデミー賞を受賞したのは初めてだそう。とにかくここ数年の”アジア”の躍進はすさまじく、今まで軽んじられてステレオタイプしてあつかわれてきたアジア人をフォーカスした作品がアメリカやヨーロッパの白人を中心とした社会にもウケているというのは非常に驚きとともに喜ばしいが、そのアジアには中韓、あるいはインドは含まれていても、なかなか日本は参入できていない。良くも悪くも代わり映えなく、素晴らしいコンテンツ(アニメなど)は輩出しつつも特に驚きはない経済的に衰退している国、という共通認識は抜け出せそうにない。

1980年代のアメリカ南部を舞台に、韓国出身の移民一家が理不尽な運命に翻弄されながらもたくましく生きる姿を描いた家族映画。2020年・第36回サンダンス映画祭でグランプリと観客賞をダブル受賞した。農業での成功を目指し、家族を連れてアーカンソー州の高原に移住して来た韓国系移民ジェイコブ。荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを目にした妻モニカは不安を抱くが、しっかり者の長女アンと心臓を患う好奇心旺盛な弟デビッドは、新天地に希望を見いだす。やがて毒舌で破天荒な祖母スンジャも加わり、デビッドと奇妙な絆で結ばれていく。しかし、農業が思うように上手くいかず追い詰められた一家に、思わぬ事態が降りかかり……。父ジェイコブを「バーニング 劇場版」のスティーブン・ユァン、母モニカを「海にかかる霧」のハン・イェリ、祖母スンジャを「ハウスメイド」のユン・ヨジョンが演じた。韓国系アメリカ人のリー・アイザック・チョンが監督・脚本を手がけた。第78回ゴールデングローブ賞では、アメリカ映画だが大半が韓国語のセリフであることから外国語映画賞にノミネートされ、受賞を果たす。第93回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞など計6部門にノミネート。祖母スンジャを演じたユン・ヨジョンが助演女優賞に輝いた。

映画.comより

スティーブン・ユァンはこの作品の前に「NOPE」を見ていたので、そっちの印象が強かったが、もう、ミナリでのスティーブン・ユァンはまさに開拓を夢見る移民の父、みたいなたたずまいと目の奥のぎらつきがすごい。妻とケンカしようが水止まろうが、関係ない。「成功する姿を子供に見せたいんだ」と最後まで言い続けている。それに耐えきれない妻モニカもまあ当然っちゃあ当然。基本的に全員が圧倒的な演技をしていて、助演女優賞にも輝いたユン・ヨジュンは本当にすごい。

メッセージ自体は非常にシンプルで、タイトルの回収も非常に明確だ。ミナリ自体もラストに活きてくるし、構成としてはシンプルでしっかり意図が伝わってくるのも良い。

ただ、日本人には伝わりにくい映画でもあるのかなとも感じた。実際自分には移民がどんなものなのかも、そこでのマイノリティの境遇も伝わりづらい。クリスチャンでもないので教会にもいかないし、教会が嫌で越してきた人もでてくるがそのコミュニティはせいぜい自治会くらいにしか置き換えるものがないので理解しづらい。

いかに移民にとって宗教が必須だったのか、そこも含めてミナリは移民国家アメリカならではの作品なのかなとも思った。