OKAMOTO’Sというバンド

OKAMOTO’S。4人組バンドとして活動する”邦ロック”バンドだ。ここでダブルクオーテーションをつけたのは俗称であり、私個人がそこに当てはめる意思はなく、個人的な視点にはなるが、おおよそ多くの人が共通して持っている認識であろうと考えたうえで呼んだためだ。ロッキンジャパンフェウスにもでるし、雑誌にもでる。大きく括れば、というか、毎年ロッキンフェスに行く人とかディッキーズが正装な人たちに訊けばみんな邦ロックと答えるだろうし、事実好きな人は多いと思う。そこにそれ以上の意味はなく、他意もない。良い意味でも悪い意味でもない。世間的にどちらかというそっちのイメージがあるのではないか、レベルの話だ。

“邦ロック”の断絶

日本のロックミュージック界にも聴く側の壁は結構はっきりあって、クリープハイプ、ゲスの極み乙女。、若手で行くとハンブレッターズ、yonige、みたいなところはロキノン系と割と親和性が高く、羊文学、yogee new waves、ミツメ、みたいなバンドはイメージが薄い。もちろん完全な二分などできるわけもないが。
その完全な二分にできないバンドの一つに例えばSuchmosがいる。彼らはどこまでも自由で、時にそういった大型フェスで多くのオーディエンスを魅了することもあれば、ちょっと難易度の高い小難しい音楽を作り、2020年のツアーでは松任谷由実やceroといった面々をゲストに迎えるなど、いわゆるロキノン系からは少し遠い活動もする。彼らにとって、カテゴライズや○○系など些末な事なのだろう。


OKAMOTO’Sの特異点

OKAMOTO’Sは割とバンドとしてはシンプルなバンドである。突然尖ったことをしたり、メディアアプローチを変えてきたりなどもしない。そんなに彼らに興味ない人たちや、多角的に音楽界を見ていない人たちにとっては数多あるロキノン系の一つみたいなところなのかもしれない。

ただ、彼らは少し活動に異質な部分がある。フェスによって一大産業になったメジャーな邦ロック界とアンダーグラウンドをつなく橋渡し的な存在でもある点だ。彼らを知ることは、もっと深い世界を知る事にもなる。今まで音楽だけ聴いて特に気にも留めてこなかった人は一度覗いてみることをおすすめする。

今回はあえて表面的な(活動やリリースなど)ことだけにフォーカスしてあげてみる。サウンド面は素人なので言及は控える。


特異点①ヒップホップとのアプローチ

まずは2016年の時点で「NEKO(Remix) feat.呂布/MUD」という曲でラッパーの呂布とMUDとコラボをしていることが挙げられる。邦ロック界ではあまり活発とは言えないフィーチャリングを彼らは行っている。特別それが画期的だとか、すごいと褒めるわけではないが、他では当たり前のことが当たり前にさらっとできる彼らを言及はしておきたい。


特異点②4人の活動がすごくインデペンデント

自作自演が大前提になっている邦ロック界において、どうしてもフロントマンの存在が強くなってしまうのは当然で、ボーカル兼作詞作曲なんてバンドはもはやファン以外はボーカルにしか話題が集まらない。いわゆるワンマンバンドになる。OKAMOTO’Sはその点でも4人それぞれが独立していて、ボーカルのオカモトショウの存在感とボーカルセンスはもちろん、ベースのハマオカモトはメンバー内で最もメディアの仕事も多く、ネットやラジオ、地上波でのトーク出演やサポート(星野源のサポートが有名)ベースとしての仕事など、数多くの仕事をこなしている。調査したことはないが、知名度調査をしたらもしかしたらメンバー1位かもしれないほどだ。
ギターのオカモトコウキは後述するが、ボーカルも務められ、事実ソロデビューもしている。ドラムのオカモトレイジはサポートドラマーとしての仕事はもちろん、DJの一面も持ち、これも後述するが、独特な交友関係を仕事につなげている。


特異点③ギター、オカモトコウキのソロ

バンドのギタリストがソロデビューするというのは、正直邦ロック界で考えてパッと思いつかない。
世界では割とよくあって、「お前歌うんかい」なんてツッコミを無知ゆえにしてしまったりというのを繰り返して青春時代を過ごしてきた。ギタリストでソロデビューしないやつはクソだ、ということが言いたいわけではなく、する人が少ない中でそういったことができるバンドはやはりOKAMOTO’Sらしいな、と思うのだ。


特異点④仕事につながる交友関係は幅広い

それぞれのバンドにどんなプライベートな交友関係があるかなどは知る由もないし、そりゃ世のバンドマンは我々の知らないところでたくさん夜遊びしてクラブ遊びしまくって業界人とつるみまくってるんだろうなと想像できるのだが、OKAMOTO’Sはそれを仕事にしてくる。
例えばハマオカモトはyoutubeでLicaxxxとトーク番組を持ったり、BOBOとの対談などあまりフォーカスされない職人たちとの対談まで、ここで挙げるにはキリがないほど交友関係をオープンにしている。
大事なのはそこで、どれだけプライベートで業界人と仲良くしても、それを披露する機会がないともったいないと思うのだ。サカナクションの山口一郎もそうだが、若いファンたちにいろんなカルチャーや人にふれてもらう機会を設けるのが公人の、ファンカルチャーをけん引する人の役目の一つなのではないだろうか。普段から仲よさそうな、よく表舞台で共に過ごす人たち同士でいつも同じようなコラボや対談をするのではなく、有名なOKAMOTO’Sをきっかけに相手を知り、ジャンルを知り、界隈を知るという作業はとても尊いと思っている。
OKAMOTO’Sはとてもユニークで、小袋成彬とラッパーのTohji、Gottz、Shurkn Papらとガッツリタッグを組んでいる。OKAMOTO’S入りでTohjiが所属するMall Boyzにまでたどり着ける導線があるのはやはり音楽好きとしてはうれしい(その界隈なら彼らを知らない人はいないというくらいに人気なのがMall Boyzなのでこの機会にぜひ聴いてみてほしい)。特にドラマーのオカモトレイジは日夜クラブやイベントでDJを務め、色々なアンダーグラウンドの文化と密接にアジャストしながら、カウントダウンジャパンのようなロキノン系の大きなフェスでもDJを務めるなど、その活動範囲は広い。
そこに関してはオカモトレイジ自身も自覚的なようで以下のようにインタビューで語っている。

レイジ:そもそも、今の日本はシーンがセパレートしすぎちゃっていますからね。OKAMOTO’Sが活動しているシーンと、彼らが活動しているシーンがまったく交わらない状態になっちゃっている。

邦楽系の大型ロックフェスでも、ヒップホップアーティストはKREVAとSKY-HIしか出ていない状態になってしまっているじゃないですか。これだけラッパーがたくさんいるのに……。もちろん、知名度や集客の問題はあるのかもしれないけど、あまりにも混ざらなすぎだし、それは不自然だなって感じるんですよね。そこはちょっとずつ混ぜていけたらいいなっていう気持ちもあったし。

また、いま挙げたように、元ある楽曲のリミックスを作るのも日本ではあまり見られないスタイルで、そうした活動にもちゃんと根を張ってできるのは本当に素敵な事だと思う。

まとめ

一見するとすごくざっくりとしたロックバンドにみられているかもしれないけれど、実はすごく幅の広いバンド。日本のいわゆる”邦ロック”に一般的に属すると言われている人たちの中でもかなりアウトロ―な、でもちゃんと王道は提示している。そしてリミックスの制作やソロデビューと言った世界で当たり前に起きていることも同じようにできていて、これだけ面白いバンドがこれだけメジャーな場にいることってすごく貴重だし羨ましいなと思うので、ファンのみならず、フェスで一回聴いたなくらいの認知の人たちも一度彼らを追いかけてみることを推奨する。