孤独な老人が隣人一家との触れあいを通して再生していく姿を描いたスウェーデン発のヒューマンドラマ。世界的ベストセラーとなったフレドリック・バックマンの同名小説を映画化し、スウェーデンで大ヒットを記録した。愛する妻に先立たれ、悲しみに暮れる孤独な毎日を送っていた老人オーベ。そんなある日、隣の家にパルバネ一家が引っ越してくる。車のバック駐車や病院への送迎、娘たちの子守など、何かと問題を持ち込んでくるパルバネたちにうんざりするオーベだったが、次第に彼らに心を開くようになり、やがて妻との思い出を語りはじめる。「アフター・ウェディング」のロルフ・ラスゴードが主人公オーベを好演。スウェーデンのアカデミー賞と言われるゴールデンビートル賞で主演男優賞と観客賞をダブル受賞した。

映画.comより

原題は「オーベという男」なのに、それをしあわせなひとりぼっち、となづけることにすでに疑問が生じる。幸せかどうかをそちらが決めてしまっていいものなのか。鑑賞の方角を限定していないだろうか。いやいや、この幸せな、という枕詞には、そんな単純な意味だけではないんです。もっと深い意味なんです。と言われたとしても、それも込みでこちらが誘導されているのが気に入らない。この映画を見て放題を付けた人たちによって「この人にとっての幸せとはなんだったんだろう」とか「幸せってなんだろう」みたいな考察にたどり着かされてしまうのはなんとしても避けたい性分だ。そしてそれをブログにしたため…たことなかった。わたしの映画レビューはそういう考察が一切なかった。いつも自分の中にしまっておいている(というか書けない)。

スウェーデンあるあるがわからないので、アウディを乗っている人間はどういう偏見を持たれているのかもわからなかったし、サーブというスウェーデンの自動車メーカーも初めて知った。

サーブのあった時代とは? 懐かしの北欧車に想いを馳せる

なんとも偏屈なじじいだなとはじめは思い、恋愛小説家の主人公メルビンに匹敵する厄介者じじいかと思っていたが、次第にその感覚は薄れていく。

ほとんどオーベの半生を振り返るような構成で、彼の幼少期から父親との会話、妻との出会いなどが走馬灯として振りかえられる。そうしてオーベに対する捉え方を鑑賞者に変えさせていく。なんともいとおしくて、愛されキャラに見えてくるのだ。実際はやっぱりまあまあやばいおっさんなのだが、頼まれたら断れず、死のうと思っても手助けしたり、猫を引き取ったり。どなって怒ってどっかいくのに、くるっと帰ってきて「じゃあやるよ!!」とまだ怒りながら買って出る。子供もちゃんと世話するし、自分のルーティンにご近所がついてきても黙々とこなすだけ。
Rolf Lassgardという俳優が主演を演じていたが、普段の姿をみるとマジか!というくらいに老け込んだ偏屈ジジイに変身していて、その変わりようにも驚く。とはいえ主人公も60手前とそこまでおじいちゃんでもない(今の時代の60歳は本当に若いから…)のだが、オーベはびっくりするぐらいにおじいちゃん。若いころはあんなに細くてイケメンだったのに。どうやら妻を亡くしたこととか、いろんな理由があの体形の変化につながっているんだろうな、と監督の意図に気づく。

全体を通して、笑えてほっこりして、一人の人間の捉え方が変わる様を感じ取れた、非常に良い映画だったと言えるだろう。