これバズ1位のバンド

バズリズムという番組がある。毎年その番組では「これがバズるランキング」という企画を年始に行っている。なにがバズるのかさっぱりわからないことはさておき、とりあえずここで上位に挙がることは事務所が本気である事のしるしとなる。
年々その企画の権威が増していき、注目度は上がっている。
そんな”これバズ”で2020年1位だったのがNovelbrightという4人組ロックバンドだ。もちろん存じ上げている。知ったのは半年くらい前。各所の人気ぶりはかねがね聞いている。たしかに「2020年ファンを拡大しそうなバンド」の一組であることには間違いない。

ただそれが純粋な音楽評価につながるわけではない。これバズ1位だから手放しでほめるわけでもないし、売れてるから優れたバンドとなるわけでもない。こと日本においてはむしろ優れた音楽は売れない。基準はいつも顔面と歌のうまさと歌詞のシンプルさにかかっているのだ。

「好きな人が聴けばいい。嫌なら聴かなければいい」という指摘が通用しないのがこのブログの意地わるいところで、もちろん遠慮なく聴くつもりはないが書きたいことはあるのだから書いてみる(半年ほど渋っていたが)。

音色がずっと2000年代

まずは久々に聴いたなって思わせてくれる「Revive」。まさか2019年にあのギターの音色が流れるとは。そして単音の軽い音色のピアノが流れる。「あぁ、これWeaverで聴いたなあ」と2010年前後を思い出す。
終わり方もDJ始めました的なしぼりかたで、懐かしい。あの手法もまた2000年代のJPOPにあったやつだ。
歌はうまい。ただ歌い方もまた古い。今もいなくはないけど、UVERworldが売れた時期って2007年くらいなので、その時代性を感じる。

2曲目にくるのは「the Eternal oath」。ピアノから始まるのは悪くない(相変わらず音色はアレだが)。そして再び同じギターの入り。もうデジャヴか、とその技のレパートリーの少なさに驚く。
バンドサウンドに限らず、エフェクトもかけているが、そのかけかたも00年代後半。そうだ、FlumpoolミーツAquatimez feat.UVERworldみたいな、そんな軽薄さをさらに上っ面なぞったような音が鳴る。でもユニゾンとか夜ダンはすきなんだろうな、というのは伝わる。

中盤で入るギターソロ。彼らに限らず今時ギターソロをやるかね、と思うバンドは多い。しかもその音で、と思わず感心する。

3曲目くらいから、あれ、自分は何で音楽を聴いているのだろう、とわからなくなる。こんな音がこもってグシャってなってる音楽久々に聴いた。ハイファイが正義とは思わないが、これはローファイとはまた別次元のような、デモ音源を聴いている気分になる。


今鳴らすべき音

残念ながら一秒たりとも今の音楽が鳴っていなかった。革新性もなければ斬新さもない。00年代の古い手法を使いまわしているだけ。
確かに新しい音楽が全てではない。あえてオールドファッションなスタイルで挑むバンドもいる。THE BAWDIESとか。でもそれは信念があり、あえてそれをしようと決意しているからかっこいいのだ。今からバンド組んでさあオリジナル曲をやろうって時に、なんの知識もなく「とりあえずかっこいい曲やろう!」と意気込んで出来たのがこれだからやばいのだ。彼らが2000年代の曲をリバイバルさせようと思ってやっていないのだ。ナチュラルにオシャレだと思ってアムラーの恰好をしている女性はオシャレなんかじゃない。


結論何がよくないかというと、ピアノがいらない。非常に陳腐。でもヒゲダンが陳腐にならないのは音色とその使い方だ。

次にギター。古い。音が圧倒的に古い。確かにどのロックバンドも非常にダサい音使いしているが、群を抜いている。これで知った、オーラルやsumikaの音使いのまともさを。ロードオブメジャーリスペクトなのか。なにせギターの刻み方が単調。スキルの問題なら申し訳ないが、あんなガッガッガッガジャーンジャーンジャーンを繰り返されたらモーツァルトより眠い。

もう一つは無駄に壮大にしすぎた。ボーカルのダイナミックさを演出するためにオーケストラチックにしているのはわかるのだが、なにせ引き出しがないせいでただのワンオクの二番煎じになっている。理想通りの二番煎じ。いいコピーではなく悪いコピー。あと音圧が一定なのか、耳への負担が凄い。曲止めたときにふっと耳が軽くなる。あー押されてたなーと感じる。こんな感覚はハードコアか彼らだけだ。

歌詞は知らない。どうでもいい。


散々書いたが、UVERworldやflumpoolやAquatimezは素晴らしいアーティストである。彼らが受け入れられたのは2000年代後半だからだ。あの音楽が流行った時代だから当然あの音楽性はかっこいいのだ。そして今でも彼らがカッコいいのは、その音楽が時代のものではなく彼らのものになったからだ。だから2019年もUVERworldはかっこいい。そこは違うので理解してほしい。





洋楽大好きなメンバーたち

と、言いたい放題でもうファンに見つかったら最後なので半分諦めているが、自分には書く理由があるし、それは当ブログで散々語っているのでもう改めて言うのもめんどうだから、好きにしてください。

とはいえそれだけだとちょっとつまらないので、もう少し彼らについて探ってみる。このブログのお馴染みの手法である、インタビュー読み込みスタイルを駆使して、彼らの音楽ルーツや信念に触れてみる。

バカでかい夢を持ってるので、将来はアリーナツアーもドームツアーもしたいし、『紅白歌合戦』にも出たいと思ってるんですよ。日本を代表するアーティストになって、ゆくゆくは海外にも進出したいです。

と語るNovelbright。世界への夢は今はそう遠くない。むしろその気になれば日本よりも先に世界で火をつけることだってできる。彼らの目論見はあくまで、日本でしっかり売れてから行きたい、というものだ。それはONE OK ROCKやPerfumeのようなスタイルをさすのだろう。国民的な支持を得たいという気持ちが溢れている。



彼ら自身のルーツについてはこう語っている。

聡次郎 スティーヴ・ヴァイです! 画期的な奏法とか編み出した、既存のものじゃなく楽器の新しい可能性を見つけていく方です! まだまだ未開発の音楽があるんじゃないか、というスタンスが好きですね。

勇太郎 僕はバンドだったらONE OK ROCKが凄く好きなんですけど、音楽全体ではHoneyWorksが凄い好きで、楽曲制作に影響を受けています。。
雄大 僕はゆずが一番好きで、海外ではParamoreが好きです。

ONE OK ROCKは僕も好きなんですけど、日本で一番好きなのはゆずで、中学生の時は追っかけをしてて中学・高校の時ライブにめっちゃ行ってました。
〈中略〉
ねぎ 初めて好きになったバンドはUVERworldです。

なるほど理解できた。スティーヴヴァイの音だったのか。そりゃあんな出しゃばりな音になるはずだ。自己主張強め。自分が世界の中心かのような振る舞い。まさにスティーヴヴァイ。



HoneyWorksとかONE OK ROCKは、あーはいはい、てなるし、ゆずも歌詞をみたら理解できる。個人的に「栄光の架橋」は世紀に残る駄曲で押しつけがましい宗教団体のテーマソングのようだと評しているが、そのエッセンスをNovelbrightから感じるので、納得する。

Paramoreはおもしろい。ていうか握手したい。いいよね!パラモア!私も大好きだ。高校生の時めちゃめちゃ聴いたし、2018年に10年越しの生パラモアを体験した時は泣いた。かっこよすぎて聞き惚れた。



ただ、Paramore自身も苦しんだ。試行錯誤の時期があった。バンドサウンドがウケなくなりつつある2010年代前半、スタイルチェンジを試しながら、そして2017年の「After Laughter」までたどり着いた。彼らだって、misery businessを10余年やってきたわけじゃない。その時代にあった音楽をトライしているのだ。
そう考えると、彼の言うParamoreって07年のMisery businessの事ではないだろうか。


内省的な歌からラブソングまで、14曲ごとにまったく異なる世界観の曲たち。それを、表情豊かに歌いこなす雄大と、その歌にしっかりと寄り添うバンドサウンド。それは決して一朝一夕で身に着けたものではないと思う。注目のされ方こそ、「SNSで急激にバズッたバンド」として見られるかもしれないが、そのステージを見れば、彼らが、これまでもライブを主戦場に泥臭い活動を重ねてきたことで、ライブバンドとしての確かな実力を培ってきたことがよくわかる。

ライブレポは基本的に褒めてくれる。ライブはみたことないので何とも言えないし、批判も賞賛もしないが、ドラムとベースがまだ歴が浅いことを考えると、それほど卓越したスキルや熟練のサウンドメイキングができているとも思えないので、これは話半分に聞いておく。

路上ライブの場所は大阪の難波。「1回目は事前告知もせず、直前にインスタで“路上ライブやります”と発信しただけ」で、集まったファンは5~6人。しかし、ライブ動画をTwitterに上げたことで、状況は大きく変わり始める。アップしたのはメンバーの圭吾(B)。自身でアパレルブランドを運営し、SNSを使った情報発信に長けたメンバーだ。

「圭吾が一般人のふりをして“あいみょんの『マリーゴールド』、男の人が歌ってる。上手すぎん?”みたいなツイートをしたら、4万くらい“いいね”がついて。圭吾はメンバーのなかでTwitterのフォロワー数がいちばん多かったし、SNSの発信が得意なんですよ。女性アーティストやキーが高い曲など、歌の凄さが伝わる曲を選んだのもよかったのかなと」

基本的に彼らの音楽の話がしたいので、彼らがどう売れたかとか、いかに賢いかとかはどうでもよいが一応触れておくと、彼らはこうしたSNSの駆使やTikTokでのバズなど、時代にフィットしたプロモーション展開をしているバンドと言える。
歌がうまくてイケメンに見えるので、それなりに支持はあつめられるだろうから、この手法はやはり正しいと思う。メディアが紹介するのではなく、人から人に紹介してもらう。まずはそこをとっかかりにするのだ。

まとめ

ここまで読んで「不愉快だなあ」と思うのは自由だけど、せっかくなので、2019年の世界のロックをいくつか紹介して終わることにする。そしたら何か見えるかもしれない。

Panic! At The Disco – High Hopes

https://youtu.be/IPXIgEAGe4U

2019年世界で最も聴かれたロックミュージックがこれ。ロックじゃない?まあそういわれるとそうかもしれない。
でもこれが事実だ。これが今一番”イケてる”音楽だ。

Vampire Weekend – Harmony Hall

https://youtu.be/IlkTVMMkCP4

こちらもグラミーノミネートされるほどに高い評価を受けたアルバムの一曲。
ライトな音作りだけど壮大さは失われていない見事な楽曲だ。


Bring Me The Horizon – Ludens

https://youtu.be/B9wvTuDC-H0

彼ら自身もまた大きな変化を何度も遂げてきたバンドだ。

The 1975 – Frail State Of Mind

https://youtu.be/VOkUE0OB7V0

UKの一番ホットなバンド。こんなMVが作れるもんなら作ってみろと言いたくなる(それほど突飛なものではないが)。

この先どうバンドが変化していくか注目していきたい。