野球が昔から好きで、やってもいたしよくテレビで観ていた。年に一回は球場にいって応援もするし、毎日結果も見ている。そんな野球好き界においてこんな説がある

本当のファンなら選手の応援歌は全部歌える。

本当のファンならファンクラブに当然入っているし球場にも何度も足を運ぶし、そもそも応援歌くらい当然覚えている。という説。
しかし私は応援歌が歌えない。年に数回しか球場に行かない。ファンクラブに入っていない。憶えようとしたこともない。ということは私は本当のファンではない。毎日結果をチェックして一喜一憂する私はファンではない。選手の成績を頭に叩き込んでデータとにらめっこして二軍成績をみる私はファンではない。ほんの僅かな差で優勝ができなかった時に泣き明かした夜があった私はファンではない。
こんな嫌味な言い方をするのは、それだけこの説が嫌いだからだ。なんだその強要。くだらねえ。

なんて冒頭から入って何が言いたいかというと「本当のファンなら」という言説の暴力性について語りたいから。

先の「本当のファンなら応援歌は歌える」という身勝手な説は、例えば応援歌は全部歌えるしファンクラブも入っているけど、スタメンしか名前を知らず、成績もろくに知らないしイケメンしか興味がない、という人が現れた時どう扱うかの準備が整っていない。音楽で例えるともっとわかりやすい。ワンオクの曲全部歌えてライブも全部行くけど、taka以外興味ないし名前も知らないし、というかtakaも顔しか興味ない、という人を「ああ君は本当のファンだねー」と言えるのか。

私は言ってもいいと思う。スタメンしか知らない野球ファンもtakaにガチ恋してる人もファンでいいと思う。けど世の中は「本当のファン」という言葉でふるいにかけようとする。そんなことするから例外がポロポロでてくる。そして議論になる。馬鹿馬鹿しい。実にくだらない。顔ファンも極めたらオタクだ。
音楽はどうしても正義感で語ろうとする人が多い。「そのバンドの本当のファンならお金を落とすはずだ」という考え。そもそもお金を落とさず音楽を不当な方法で聴くのは違法ではあるが、youtubeで聴き続けることがファンへの資格にならないというトンチンカンな考えはやめたほうがいい。じゃあ全部のCDを買ってるけど一回も聴いたことがなくてジャケのtakaでオナニーする女と、CDも買ったことないしストリーミングサービスも利用せずyoutubeを毎日パソコンで見ていて曲全部歌える人と、どちらが「本当のファン」なんだろうか。

正解はどちらもファンだ。
今真剣に迷った人は、ここまで何を読んで来たのか。国語の勉強してきたか?本読んだことある?てか漢字とか読めてる?
「本当のファン」なんて物差しで測るからそんなことになる。じゃあ私が言いたいのは「みんな好きな音楽聴いてファンって名乗ったらいいじゃん!ラブアンドピース!!」ということかと言うとそれも違う。なんだラブアンドピースって。スベッてんぞ。
「本当のファン」とかそんなことはどうでもいいが、ファンかどうかの判別はしてもよい、と言うかすべきだ。だって鬱陶しいじゃん、ファンでもないのにファン面して近寄ってくるやつ。
さっき、お金を落としていようがいなかろうが本当のファンかどうかの判別にはならないと言ったが、ひとつの愛の量を測る手段にはなる。お金を払わなくてもファンにはなれるが、お金を払ってるやつはファンしかいないからだ(違法転売などを除く)。だから少なくともお金をたくさんつぎ込んでる奴はたとえ顔であろうとなんだろうとファンであると認めてよい。ただ悔しいのは分かる。でもファンとはそういうものだから。
どちらがよりファンかという競い合いは勝手にすればいい。私もする。それを「やめて!喧嘩しないで!ラブアンドピース!」と言うつもりもない。なんだラブアン…。
お前は顔ファンだから俺の勝ち!当たり前だ。そんかマウントの取り合いなんかあって当然だ。むしろしろ。顔ファンは金だけ払って黙って引っ込んでろ。

でもそれにかこつけて「やっぱ俺たちが本当のファンだよね。そっか、本当ファンの定義決めようか!」とすることは許さない。許さないって俺が許さない。世の中は知らんが俺は許さん。
CDの方がアーティストの還元が大きいからストリーミングで聴くやつより本当のファン。
ライブに何回も行く奴の方が本当のファン。
歌詞覚えてる奴が本当のファン。
グッズを全種類買う奴が本当のファン。
モッシュダイブサークルする奴が本当のファン。

まぁ後半はそんなこと言ってる奴いるのか、と指摘されそうだが。
自分の好きなものが曲解されて愛されるとすごく不愉快になるのはよくよく分かる。「takaが生まれてから10969(ワンオクロック)日!!」とか言って騒ぎ立てる人たちを見るとなんだか胸焼けがするし、「ワンオクはアイドルじゃないから!」と反対運動を繰り広げる自称”本当のファン”にもイタさしか感じない。
まぁそれは私がワンオクのファンじゃないからだろう。引き合いに出してごめんね。

なんとなく書き殴ってみたけど、この「本当のファンなら」というものに寒気がする気持ちは分かってもらえただろうか。私は応援歌なんか知らないけどその球団を愛している自負はあるし(お金があればファンクラブも入りたいし球場ももっと行きたい)、グッズは買い揃えるどころかここ数年は目を覆うばかりのダサさに買ってすらないけどRADWIMPSはいまだに大好きだし、なんだったら日本中のラッドファンのベスト100に入る自信はある。少なくとも1年前までは。
どちらがファンとしての熱量があるか当事者同士で口論して比べ合うのは結構だけれど、第三者が意味の分からない物差しを持ってきてそれで測ろうなんて言語道断。黙ってろ俺は俺なりの愛し方があるんだと。そういいたいだけなんです。