2023年11月4日。心斎橋のJANUSでひらかれたLaura day romanceとHomecomingsのツーマンを観てきた。どちらも大好きなアーティストであり、甲乙つけがたいのだが、やはりまだ生で見たことがないLaura day romanceは大きな楽しみのひとつだった。少しそのことについて書いてみようと思う。

まずオープニングアクトとして登場したのは”ハク。”。ギターのフレーズがとても印象的で、キャッチーさは十分すぎるくらい。メンバーそれぞれがステージの振る舞いも素敵で終演後のビラ配りでも明るくファンたちと触れ合っていたのも見えた(フライヤーはいただきました)。

完全に知らなかったけれど、今年フルアルバムも出してワンマンもあるそうなので、かなり期待されている右肩あがりのバンドだ。ぜひ聞いてみてほしい。

Laura day romance

さて本編。まず登場するのはLaura day romance。彼らは去年の当ブログの年間楽曲ベスト100の中で1位にしたくらいに大好きな楽曲で(またアルバムも年間ベストアルバムの2位にさせていただいた)、今年も”Sweet Vertigo”が圧倒的に私の一年を彩っている、まさに今見なくちゃどうするんだっていうタイミングで、ましてやHomecomingsとのツーマンで観られるなんてなんて幸運なんだと思ったほどだ。

おもむろに登場した彼らは全員で六名。普段音楽はイヤホンで一人で聴くことが大半で、MVもあまりみないし、バンドのことを調べることもあまりしない。だからLaura day romanceというバンドが何人組でどんな姿格好をしているかもわかっていなかった。ただ、女性ボーカルと、曲によっては男性がボーカルをとっているものもあるので、男性がいるというのも理解していた。もしかしたら「名前も見た目も知らないうえに何人組かも知らないでよく好きって言えるよね」と思われるかもしれないが、そこは本当に興味関心の一番出遅れる部分で甘んじて批判を受け入れたい。

ギターの男性が「もともと東京でクリスマスにこのツーマンやった時に、『大阪でもやってほしいなあ』って言われたので、今回この企画を大阪に持ってきた。でも大阪でチケット即完した時に『東京でもやってほしいなあ』って言われたよ笑」と語っていたのを見て、この人もメンバーだな、後多分フロントパーソンだな、というのはなんとなく理解できた。ドラムのいないトリッキーなバンドとは思っていなかったので、三人は確定したとして、あとのギターとベースとキーボードはだれが…。全員か?いやあちょっとこの三人をベースに考えて、多くて五人っぽいなあとか勝手に想像しつつ、でも他の三人は話すこともなく、メンバーに絡んできたりすることもないので、多分ベースはメンバーでもう一人のギターとキーボードはサポートだな?とか考えて楽しんでいた(結果Lauraは井上花月(Vo)、礒本雄太(Dr)、鈴木迅(Gt)の三人組で、のこりの3人はサポートでした。大変失礼いたしました)。

一つ間違えば量産型の”エモポップ”みたいになって、かわいらしい女の子がちょっとけだるめに日常うたってルックスありきで売り出して若い子に受けちゃえばいいじゃんという打算的な方向性も全然あり得たと思うんだけど、Lauraはもうすこしインディーの香りを残して、流行の”ガールズポップ”には寄っていかなかった。フォークなサウンドでありながらギターをはじめとする楽器はブルージーかつ2010年代のインディロックっぽくもあり、すごく地に足のついた音楽だなあと偉そうに聞こえるかもしれないが、そんな感想を持つ。

この”wake up call | 待つ夜、巡る朝”もアコースティックギターとウィスパーボイスが海外でいうとClairoとかPhoebe Bridgersのようで、サビでの音の広がりとふわぁと広がり残っていくあの奥ゆかさは耐えきれずに繰り返し聴きまくった。なかなかこの感情の揺さぶり方をしてくれるバンドに出会っていなかったので、その耽美さに打ちひしがれたのだ。

この日もこの楽曲は披露してくれて、ライブでもちゃんとあの広がりと空気感はしっかり再現できていた。よく「このバンドはライブバンドだ」という誉め言葉があるが、それは大抵激しいバンドに用いられることが多い。でも、ローラのように空気感まで再現できてプラスアルファで付加価値までつけられるバンドも十分ライブバンドだと思う。

この日のいで立ち(この日と言ってもちゃんと姿を見たのも初めてだったが)は、2010年代前半、まさに自分が大学生だったころによくあったような黒のストッキングにミニスカートで(めちゃくちゃぼやっとしたあくまでイメージの参考写真)、上のトレーナーは羽の生えた天使かユニコーンかよくわからないけどかわいらしい刺繍の入ったもので、全体的にすごく優しくかわいらしい、すこしレトロ(自分でレトロっていって辛くなるが)な趣のある衣装だった。歌声からもっと現実感がない雰囲気と服装をした淑女(という言葉遣いが適切かはわからないが)だとイメージしていたので、想像よりずっとポップだったことに驚いた。腰に両手を当てちいさなポーチみたいなものが目に入る。ギターの鈴木はジージャンに黒のスラックスのようなもの、革靴という組み合わせ。この人めちゃくちゃ音楽とか好きそうだなあ、そして懐に入ったらめちゃいい人だろうなあとか人間性まで想像したり。

ギター二本にキーボードと充実した構成なので楽曲の幅も広く、ミドルテンポからバラードにかけておおいグループではあるけれどもまったく単調にならない編成だった。すぐに来年のワンマンの先行予約に応募した。

Homecomings

Homecomingsは今年フジロックのWhite Stageで初めて観て以来二度目。もちろんずっと好きだったけれど、中々ライブハウスまで足を運んだりしないし、そもそも単独ライフってものに滅多に行くことのない人間なので、観たい気持ちは本物だけど全然実現してなかった。英語詞の時のホムカミも大好きで、日本語詞に転向した時も色々言われたけどすんなり好きになれたしむしろもっともっと好きになって。やっぱりcakes(とそれが主題歌になった映画「愛がなんだ」)の存在は大きくて、それはまぁ個人的な話ではあるけど今のパートナーとの思い出の曲だったりして(結婚式で一番大切なところでcakesを流したりもしたし)、特別なバンドだ。そして今年のアルバム”New Neighbors”は今までのホムカミよりもさらにギターロックな趣がある中でブルースやエレクトロな機軸も見せている個人的大傑作だと思っている。最も白眉なのはラスト二曲目の”euphoria / ユーフォリア”で、中盤までの美しいアンサンブルとアウトロのギターの残響は新しい彼らのアンセムになったと思う。

正しくいたいと思うことは / 大切なことにちがいなくて

この曲はこの日も三曲目あたりで披露していた。アルバム曲だしライブも行ったことないのでこの曲がどういう立ち位置なのかもわからずやってくれるか半々、いや、やらないんだろうなぁくらいの気持ちで見ていたから、まさか、しかもこんな前半でやるとは思ってもおらず、会心のガッツポーズが心の中で繰り出た。サビ前でガガっとギターが咳き込むとバーっとバンドアンサンブルが解放される。ラストのギターの福富の熱の入ったギターとそれを変わらず支えるリズム隊の二人。

“HURTS”などのといった英語詞の曲はライブに疾走感と一体感をもたらす。これは今のホムカミには(いい意味で)ない雰囲気で、うまく初期曲が現在のホムカミを補完している。

フジロックでは大きなステージでたくさんの観客がいて、その存在の大きさに感動もしたが、今日のJANUSはせいぜい数百名しか入れないキャパシティで、私が観たのは最前列のすぐ後ろくらいだったので目と鼻の先に、ほとんど同じ高さで彼らが演奏しているのを見るとまた全くフジロックとは違う趣があった。近くで見えるからこそ見えてくるメンバーの関係性。基本笑わず淡々と叩いているドラムの石田の演奏が終わった時のメンバー全員で合わせる場面で見せる笑顔や、福富が畳野に近づいてギターを合わせるそぶりも、それが畳野に伝わっているのかも乗り気なのかもわからない距離感で行われるところも、(ベースの福田は位置的に中々見えなかったのは本当に残念だった)仲良しというより信頼関係の厚さを感じるし馴れ馴れしさを見せないスタイルもバンドカラーがよく出ている気がした。そんな機微が見えるのもライブハウスならではだなと改めて感じる。

アンコールに応えて再登場するメンバー。福富がなにやら感無量といった様子で現れ、「はぁよかった〜」みたいなことを何度もつぶやく。まぁそんなにこのライブに満足してくれて特別感を持ってくれたのは観にきた観客としても悪い気はしないが別に単独でもないし規模も小さめだしアニバーサリーでもないしちょっとこっちが戸惑うくらいで「え、そんなにこのライフよかったの?笑」くらいのテンションで見てたら彼が第一声「オリックス勝ってます!!!」。そりゃよかった、なんじゃそりゃ、が大半のリアクションだったと思うしそれでいいんだけれど、自分もずっと気になっていたのてまさかその報告をここで受けるとは思ってなかった。この日はオリックスと阪神の日本シリーズ第六戦。オリックスの二勝三敗であとがない場面で前回登板で過去ワーストに打ち込まれた山本由伸が登板しているこの日、私自身も気が気でなくそれでも「山本由伸で負けるなら仕方がない。何度もやられる投手じゃないしそんなことでなくなる信頼ではない」と心に決めライブに参加した。よもやホムカミからそんな報告を受けるとは。思わず大きく拍手をしうぉーと声をあげてしまった。関西出身ではないはずだが、まさかオリックス応援してくれてるなんて、と数少ないファンになおのこと心揺さぶられ、感動の涙を流しそうになるがまさかライブではなくてオリックスの勝利で泣くわけにはいかないのでこらえる。その後もしきりに「いやぁ感無量です」「最高だあ」と全然アンコールに入る雰囲気のない福富。わかるぞ、と一人深く頷く。自分もまだちょっとホムカミの曲に入る気持ちではない。それでもアンコールは始まる。お待たせのcakesだ。まろやかであったかく、「こうならないように歩いてきたのだ」はまるでホムカミの歩みを示唆してきたような内容だ。

いつもの四人だけでシンプルな構成なのは六人のローラとは異なるが、打ち込みや同期を駆使した貫禄のパフォーマンスだった。さすがというしかない。このキャパで観られるレベルのバンドではないことはたしかだ。

いつだって、特に日本語詞になってからのホムカミはすごく社会的だ。日常を彩るっていえば聞こえがいいし事実そうではあるのだけれど、そういう安易な”エモさ”に引きずられない言葉の芯がある。”i care”では「あらゆる色に花束を」「名前もない気持ち 恋と呼ばないで」と歌い、”US / アス”では間奏で「Neither alone nor just the two of us. We will continue to be allies. It doesn’t matter if it’s a small light for you. We, will continue to be allies.」と語りが入る。すごくクィアだし連帯を感じる。おこがましさや押し付けがましさがなく、ただそこにあることを理解しシェアする。彼らのそういう姿勢は心から敬意を表するし、それが浮いたり説教くさくならずにいい意味で楽曲に溶け込んでいる。信頼できるバンドだって言い切ることができる。

まとめ

ローラとホムカミ。どちらもボーカルが女性のバンドではあるが、また見せかたが異なるバンドでそのどちらもそれぞれ魅力が異なるバンドだ。月並みな表現にはなってしまったが、このツーマンを観た後の余韻はすさまじく、翌朝になってもいまだに耳から離れない二組のメロディに「この感覚久々だなあ」と思うばかり。どちらも次はワンマンで。絶対に。