こじらせ女子が主人公。まあよくある非モテの処女が恋に振り回される映画なんだけど、その結末への向かい方は少し恋愛的な要素ばかりでもなく。

芥川賞作家・綿矢りさによる同名小説の映画化で、恋愛経験のない主人公のOLが2つの恋に悩み暴走する様を、松岡茉優の映画初主演で描くコメディ。OLのヨシカは同期の「ニ」からの突然の告白に「人生で初めて告られた!」とテンションがあがるが、「ニ」との関係にいまいち乗り切れず、中学時代から同級生の「イチ」への思いもいまだに引きずり続けていた。一方的な脳内の片思いとリアルな恋愛の同時進行に、恋愛ド素人のヨシカは「私には彼氏が2人いる」と彼女なりに頭を悩ませていた。そんな中で「一目でいいから、今のイチに会って前のめりに死んでいこう」という奇妙な動機から、ありえない嘘をついて同窓会を計画。やがてヨシカとイチの再会の日が訪れるが……。監督は「でーれーガールズ」の大九明子。2017年・第30回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品され、観客賞を受賞した。

松岡茉優がかわいいという事実に今更ながら気づく。彼女がバラエティ番組で出始めたころは、なんだかめんどくさそうな「私バラエティもできるんですよ」感が鼻につく人であまり好きになれなかったのだが、自分もかなり成長したおかげか、彼女のひたむきさやチャレンジ精神、そして誠実さに目が行くようになり、いつのまにかこの序を好意的に捉えるようになっていた。
アナザースカイに出ていたときは、レンブラントの夜警が人生の支えになっているという話をしていて、彼女の芯の強さと繊細さに心打たれた。

そして今作を見て「ああ…かわいい…」と思うように。どうしてだろう。CMで観ても、嬉しそうにモーニング娘。について語っている時に彼女を見ても何とも思わないのに、このヨシカはとにかくかわいい。ヨシカ、というよりはヨシカを演じる松岡茉優。ふと見せる笑顔とかさりげない仕草がとても愛おしい。これを夜中におっさんが一人で書いていると想像したら自分でも気持ち悪すぎてゾッとするが、とにかくかわいいもんはかわいい。

一方でイチ役の北村匠海は依然として美男子だ。「君の膵臓を食べたい」では嘘つけと言いたくなるくらいに地味男子役が似合わず浮いた存在だった彼だけど、今回はいい感じにヒール。ヨシカをうまく感情表現させるためのトリガーになっている。

自分は存在しないことと同じだ。と悲観する彼女のこじらせぶりと被害妄想と被害者面はみているこちらも痛々しくなる。でもなぜか笑えるような余裕はなくて、どことなく自分と重ね合わせてしまう。

主題歌は準主役を演じている渡辺大知がフロントマンを務めるバンド、黒猫チェルシーの「ベイビーユー」。
黒猫チェルシーは平成生まれのバンドとして初期は騒がれていたけど、当時の四つ打ちの波、ガレージロックサウンドの衰退もあってバンド自体はあまりのびず、渡辺が俳優業として成功したのでそのついでにバンドも引っ張ってもらってるような状態。結局去年活動を休止した。まあなかなか難しい挑戦ではあったと思う。