月火水木金というキーワード
歌は非日常だ。というか日常からの脱却を図る歌が多い。なんでって、多分その方が歌にしやすいから。日常のことを歌うことは簡単じゃない。それには高度な詩的テクニックが必要だ。一方で日常からの脱却は比較的簡単だ。
その時に使われがちなのが、「繰り返す毎日」という日常を表した言葉。代り映えのない毎日をどう表すかは多種多様だが、その一つとして「月火水木金」がある。一週間をそのまま歌ってしまおうというシンプルかつ大胆な歌詞だ。しかしこの言葉はリズム感がいいので、はめてみると案外しっくりきやすい。ラップ調には相性がいい。難点と言えばちょっとシンプル過ぎてチープになりがちなことぐらいだ。
ということで「月火水木金」と歌っている曲を調べてみた。みんなの知っている曲からマイナーな曲まで。個人的に気に入っている「月火水木金」を紹介する。
NEWS – Weeeek
わたしと同世代(平成初期生まれ)の人間ならまずこの曲を思い出すだろう。一発目から、日曜日から始まる変則的「月火水木金曲」だけれどやっぱり外せない。Greeeen特有の世界観の詞がうまくNEWSの軽薄さにフィットしていてとてもラフな気持ちで聴けるのがいい。
ばってん少女隊 MEGRRY GO ROUND
いつも月火水木金土日を繰り返す
みんな持ってるんだ 「ありのまま」ずっと離さず笑っていくんだ
フレデリックが作ったって5秒でわかるのだからフレデリックはすごい。
曲のタイトルからも、ぐるぐる回るものをテーマにしているので「月火水木金」を導入したのだろう。ばってん少女隊はKEYTALKにも作曲依頼したりと積極的に”ロキノン系”バンドと繋がろうとしている。そこからファンの流入を図っているはずなのだが、その効果はいかほどに。
SHISHAMO – 明日も
月火水木金 働いた
まだわからないことだらけだから
不安が僕を占めてしまう
いいことばかりじゃないからさ
痛くて泣きたいときもある
新世代の「月火水木金曲」誕生の瞬間だ。去年、紅白にも出場を果たしたSHISHAMOの代表曲。
日々の苦しみを一週間耐えて、そして「僕のヒーロー」に会いに行くことを決意する。SHISHAMOについてはこの記事でちょこっと書いたけど、あたらしいガールズバンドの礎を築こうとしている。本当はガールズバンド、なんて言葉は使いたくないけれど、でも彼女たちの軌跡とこれからを照らし合わせたときにやっぱり「ガールズバンド」と言う言葉は切っても切り離せないなあと感じる。
でんぱ組.inc – W.W.D
これはさっきまでの”繰り返しの日々”として「月火水木金」を使っていたのに対し、”日々成長していく”ことの例えとして使っているのが新しい点だ。どん底からのスタート、というのがこの曲のテーマなので日進月歩を表すために「月火水木金」が使われている。でんぱ組のなかでも非常に大事な曲で、そんな曲の中に「月火水木金」が使用されていることを誇りに思う。誰目線かは知らないが。
ソナーポケット – 月火水木金土日。~君に贈る歌~
月火水木金土日 君を笑顔にできるように
いつまでも ずっとそばにいるよ
世界中どこ探したって 絶対見つからない
だって君の代わり他にはいないよ
YOU ARE MY ONLY ONE!
これまた、いままでの”繰り返しの日々”でもなければ”日々成長”の意味でもない、”ただ毎日君のこと思ってるよ”が言いたいだけのための新しい「月火水木金」である。修行僧もびっくりの執念ともいえる歌だ。10代女子にはなるべくわかりやすくシンプルに、そしてくどいくらいに何度も同じことを言う必要がある。彼女たちは圧倒的に理解力に乏しく共感する幅が狭いからだ。下手な言い回しは無用である。むしろ理解を遅らせる危険性があるので比喩はだめだ。ソナポケはそれを熟知している。そのためサビの後半はひたすら同じ内容を言い替えているだけだ。最後の英語に言い替えただけのところも評価高い。
私は残念ながら10代女子ではないので共感もしないし尊敬もしないが、誰に聞いてほしくて何を望んでいるのか、しっかりと理解して狙いすましたかのように曲を作れるソナポケは間違いなくプロフェッショナルである。あと、あれを恥ずかしげもなくできる根性もプロだ。役者ならまだ素の状態に戻れるけど彼らはあれを素の状態としなければならない。考えただけでぞっとするが、月100万くらいもらえるなら、、、うーんやるな。うん。
AL – Mt.ABURA BLUES
新天町を追い越して BIG HITで立ちまくって
聴けたもん演れないのに 高鳴る声 すこぶる鼓動
月火水木金土日 春夏秋冬 見上げりゃ星が増えた
今もそうって言いたいけれど まあいい それより聴いとくれよ
元andymoriの小山田荘平らが中心となって結成したバンド。音源がないのでぜひCDを買ってもらいたいのだが、彼らの「月火水木金」も
、一味違う。彼らは過ぎゆく月日をあらわしている。毎日毎日歌を歌って月日が過ぎていく様子を「月火水木金」に託した。イカすぜ。日常的な歌詞を得意とする小山田らしい直接的だけどバカっぽくないシンプルな歌詞だ。思いが伝わる。
Shiggy Jr. – dynamite
月火水木金 退屈に沈んでしまいそう
でもどうしようもなく仕事は増えていく
メジャーファーストアルバム「ALL ABOUT POP」に収録されている楽曲。ボーカル池田のアニメボイスと楽曲の軽快さが中毒者を多数生み、一気にメジャーまで駆け上がったバンド。アイドルとのコラボなど活動は単なるバンドに留まらない。
曲は、これぞ理想的な「月火水木金」の使い方だと膝を打ってしまうほどに典型的な使い方をしている。そんな日々をサビで「dynamite好き勝手やっていこうぜ」と爆発させている。いやあ一週間も喜んでいる。この使い方こそがベストオブ「月火水木金」だ!!
ということで
以上が主な「月火水木金」曲だ。他にも検索すれば出てくるが、よく知らない人たちのなので語ることもないしスルーした。新しい音楽との出会いだったかもしれないが。一週間って不思議なもので、短いのか長いのかよくわからない。何周してもその感覚がつかめない。つかめないからもう月曜日が来たと言ってに睨みをきかせている人がいる。華金を待ち望む人がいる。一週間を同じ毎日の繰り返しと喩える人がいる。一方で飽きもせずひたすらに思い続ける究極の愛の形として表す人がいる。どれもまちまちでその人の感性に委ねられている。同じ言葉でも違いがあって面白い。
みんなも探してみよう。