本来このような映画は映画館では観ない。なぜならびっくりするしドキドキするから。心臓に悪いものはみたくない。家のテレビで小さな音で観たい。
でも最近こういった類の映画を見慣れてきたおかげか、「アス」はみてみたいなと思った。それは「アス」を手掛けたジョーダン・ピール監督の前作「ゲットアウト」が大評判で私も大好きな映画だったから、今作の期待値も上がっていたのかもしれない。

前情報なしでとりあえず観てくることに。

「ゲット・アウト」がアカデミー賞にノミネートされ、脚本賞を受賞するなど大きな話題を集めたジョーダン・ピール監督が、自分たちとそっくりの謎の存在と対峙する一家の恐怖を描いたサスペンススリラー。夫のゲイブ、娘のゾーラ、息子のジェイソンとともに夏休みを過ごすため、幼少期に住んでいたカリフォルニア州サンタクルーズの家を訪れたアデレードは、不気味な偶然に見舞われたことで過去のトラウマがフラッシュバックするようになってしまう。そして、家族の身に何か恐ろしいことが起こるという妄想を次第に強めていく彼女の前に、自分たちとそっくりな“わたしたち”が現れ……。「ゲット・アウト」に続き、数々のホラー/スリラー作品を大ヒットさせてきたジェイソン・ブラムが製作。主演には「それでも夜は明ける」でアカデミー助演女優賞を受賞し、「ブラックパンサー」などで活躍するルピタ・ニョンゴを迎えた。

詳しいネタバレ解説等は控えるが、やはり大事になってくるのが黒人問題や貧困問題。特に今回ジョーダン・ピールが意識したのが貧困問題。
幼少期にもう一人の自分をみてしまった主人公アデレードはそれがトラウマとなってしばらく言葉が離せないでいた。今でもその後遺症は残っている。そんな彼女も結婚し子供もでき、夏休みに家族でトラウマの地となったサンタクルーズに帰ることになる。そこで様々な不気味な現象が起きていき、そしてついに自分たちと全く姿かたちの同じ人間が現れて次々に襲われていく。

観る前に念頭に入れておくと面白くなるであろう出来事と、注目しておくポイントをいくつか紹介する。

ハンズアクロスアメリカ

映画の冒頭で出てくるハンズアクロスアメリカという運動。これは実際に1986年にアメリカであった宥和運動で、要するにみんな世界平和になろう的な。詳しい話は下のお薦め解説リンク先でどうぞ。アメリカ人の気まぐれで始まったこの表面的な世界平和運動をモチーフに痛烈に皮肉っているのが今作品。口先ばかりで心底思ってないからこそこの企画は生まれ失敗に終わる。本当は黒人とか貧困とかどうでもいいんだろ、というメッセージが込められている気がする。

主人公のTシャツ

冒頭で主人公がお父さんに買ってもらうTシャツに注目。それが意味するものとは。まああまり深く考え過ぎてもおもしろくないかもしれないので、ちょっと頭に残しおく程度で。

主人公の言動

ここが一番の肝。しっかり見逃さずに。分かりにくい部分も多々あるが、けっこういろんな示唆的な所もあって、拾いやすいはず。ここをスルーしてるとちょっと映画の最後に悔しさ残るかも。主人公の影の方にもしっかり目を向け観察してほしい。

監督の姿勢

さっきも言ったように、ジョーダン・ピール監督は、アメリカ社会をとにかく痛烈に揶揄するタイプだ。前作ゲットアウトでは根深い黒人差別を表現し、今作は貧困に目を向けた作品であるという事。アメリカ人がいかに貧困層を無視し、見て見ぬふりしているか、そのメッセージが込められていることに注目。

息子に注目

主人公の女性の次のキーマンは息子です。これ相当なヒントなので知りたくない人は忘れてください。


音楽に注目

音楽もとてもおもしろいものが多いのでチェックしてほしい。

まず前半、主人公家族が乗る車内でかかる曲にジャネールモネイの「I like that」。最初は爽やかで楽しげな家族なんだけど、ビミョーにこの曲が突き抜けないテンションでこの先の不安感にマッチしてる。

他にもザ・ビーチ・ボーイズの「Good Vibrations」(どのシーンで流れてたっけ?)、N.W.A.の「Fuck tha Police」(白人家族の家で流れる)など、意味ありげな曲ばかりなので気になる。

とりあえずびっくり怖い系苦手な自分でも見られるくらいにいい感じにドキドキしながら展開を楽しめるので、苦手で悩んでる人もぜひ。