白い通路。エレベータの隙間から大量の赤い液体が流れ込んでくる。私がシャイニングを知ったのは何を隠そうRADWIMPSの「五月の蝿」のMVを見た後だ。「もろシャイニングやんな!?」と当時友達に言われて意味が分からずyotubeで検索して納得した。笑う人もいるかもしれない。「若いなあ(笑)」なんて声も聞こえてきそうだが、嘘はつけない。「あれね、シャイニングのオマージュなの知ってたよ」なんて言えない。見栄を張ったらいつかぼろが出る。ていうか周知の事実過ぎて殊更取り上げる必要もない。

とかいいながら、結局本編はみることはなかった。理由は特にないが、チャンスがなかったのだ。今回見ることになったのも、チャンスがあったからだ。特に深い理由はない。映画なんてそんなものだ。私はまだ「ダンサーインザダーク」だけはチャンスがない。いつ訪れるかは分からないが、チャンスを待つしかない。

スティーブン・キングの小説をスタンリー・キューブリック監督が映画化した名作ホラー。冬の間は豪雪で閉鎖されるホテルの管理人職を得た小説家志望のジャック・トランスは、妻のウェンディーと心霊能力のある息子ダニーとともにホテルへやってくる。そのホテルでは、かつて精神に異常をきたした管理人が家族を惨殺するという事件が起きており、当初は何も気にしていなかったジャックも、次第に邪悪な意思に飲みこまれていく。主演のジャック・ニコルソンがみせる狂気に満ちた怪演は見どころ。高い評価を受けた作品だが、内容が原作とかけ離れたためキングがキューブリック監督を批判したことでも知られる。


幼い二人の少女が廊下で立つ不気味なシンメトリーの構図。ジャックニコルソンの狂気的な演技。妻を追い詰めニヤニヤ笑いながら斧を振り回すシーン。壊したドアの隙間から覗くあの顔面。あまりにも有名なあのシーンが拝めたときはさすがにテンションが上がる。これが噂の、あれか。

映画の内容は語るまでもなく、そして解説するまでもない。
執念深いキューブリックの映像と演技指導。
できあがった渾身の演技。
ホラーではあるが、人間らしい不気味さとジトッとくるエンディングの悪さ、一定のハッピーエンドは迎えるものの、ループしているような、そんなトランス状態にすら陥らせてしまう猟奇的な作品が80年代とは、らしさも感じる一方で斬新さを覚える。

でも当時の受賞作品をみても、シャイニングの名はない。これだけ名作扱いになっているのに、意外と当時の評価は芳しくなかったのか、意外な気がする。もっと大絶賛されて総なめにしてるみたいなことが起きていそうと思うくらいに、この21世紀の映画ファンの中でのお気に入りっぷりからは想像がつかない。

去年、そのシャイニングの続編「ドクター・スリープ」が公開された。それがみたいために今回見たのもあるのだが、どうやらU-NEXTらしい。残念ながらNetflix民である私には縁がないのだが、ぜひ見られる人は見てほしい。ちなみに1ヵ月はタダでみられるそうなので、それを利用すればいいと思う。私はもう去年その権利を行使してみたい作品を見てしまったので、その手はもう使えない。残念だが、「ドクター・スリープ」の感想は他の人間に譲ることにする。