定職につけずさまよいながら生きる青年ドリスは、受かる気もなかった仕事の面接に受かってしまい、介護職についてしまう。そこで雇われた介護相手のフィリップとの交友録である。

パラグライダーの事故で首から下が麻痺してしまった富豪の男と、介護役として男に雇われた刑務所を出たばかりの黒人青年の交流を、笑いと涙を交えて描く実話がもとのドラマ。まったく共通点のない2人は衝突しあいながらも、やがて互いを受け入れ、友情を育んでいく。2011年・第24回東京国際映画祭で東京サクラグランプリ(最優秀作品賞)と最優秀男優賞をダブル受賞した。

これが実話だからおもしろい。完全フィクションだとしたらちょっと物足りないかもしれないが(ふつうは二人の間にもう少しケンカくらいあるもの)、こんなことあるんだなと数奇な運命を感じてしまう。「衝突しながらも」とはあるが、別段キレ散らかしてケンカするとかトラブルを巻き起こすなんてことはなくて、あくまで介護に戸惑い嫌がる青年ドリスとそのドリスのハチャメチャながらも、障碍者として憐れむ様子もなくフェアに接してくれる姿勢に感心する障碍者のフィリップの構図が続く。勝手にフィリップの文通相手と話を進めようとするドリスに迷惑そうな顔をしたり、逆にやりたくもないパラグライダーにドリスが付き合わされたりとユーモアたっぷりに彼らの親交が描かれている。

フランスの映画で、演者は勉強不足で誰も知らなかったが、ドリス役のオマール・シーは「ミックマック」にも出演していたようで、記憶にはないがお目にかかってはいたようだ。

映画としてとても上質で、誰が見ても損のない、素晴らしい映画だった。人生において大きな気づきがあったとか、生涯に残るシーンがあったわけではなかったが、これが実話だという作用が大きくポジティブに働いている。


冒頭のEarth wind & Fireの「September」はもちろん、後半で流れる「Boogie Wonderland」など、いい塩梅で最高の音楽が挿入されているのも印象的だった。