netflixで配信された2020年の映画。監督は「素顔の私を見つめて…」のアリスウーが15年ぶりに監督復帰。らしいです。初耳です。
主人公のエリー・チュー(リーア・ルイス)は学校でも目立たないぞんざいで、中国系という事もありからかわれることもしばしば。そんな彼女は、代筆の仕事を学校内で行っていて、他の生徒の課題や提出物を10ドル~20ドルくらいで代わりに書いてあげるというもの。ポール・マンスキー(ダニエル・ディーマー)という男子が依頼してきたのは、ラブレターの代筆。初めは断るものの、電気代の支払いのために渋々エリーは受け入れることに。アスター(アレクシス・レミール)という聡明で本をたくさん読む女性に宛てたラブレターという事で、エリーは自身も賢くてたくさん知識がある事を活かし、高度な比喩や引用を用いた会話をすることに。実際のポールはバカで(それが愛くるしくてつい笑ってしまう)スポーツ一本の典型的な男子生徒なんだが、彼女に気に入ってもらうべく、エリーとふたりで知識の詰め込み授業を行う…。
なんて感じで始まるのだが、エリーがアスターに気持ちを寄せてしまい、複雑な関係に。
というお話。冒頭でもエリー自身が言及するように、これはラブロマンスでも成功物語でもない。なにか胸がときめくような理想的な展開を期待することも、絶望的で救いのないバッドエンドを期待することもあまりおすすめしない。とある女性たちの、些細な、でも大きな決断の物語。
エリーは明るい性格とは言えないけれど、冗談も言うし、ハメをはずしてしまうこともある。登場人物が絞られているからこそ、丁寧な人物描写が素晴らしい。多くは語らず、引用や比喩が多く、前半は少し展開が読めない部分もあったが、中盤からのスピード感と、会話が増えていくにつれしっかりと理解できるようになる。
個人的に好きだったのは、エリーの父親。なぜかポールとちょっと仲良くなったり、感情を表に出さないタイプだけどすごく重みのある言葉を言い放ったりと、存在感抜群。最初は「このポンコツおやじ!」とも思ったけど、全然そんなことなくて、娘のことになると大声あげて怒ってイジメてくる相手を退散させたりと父親らしい一面も。
音楽も所々で流れるのだが、全ては把握できなかった、中盤以降で流れる音楽をまとめたので、一応の参考にしてほしい。
Sharon Van Etten – Seventeen
Ruen Brothers – Lonesome
Cicago – If You Leave Me Now
Ruen Brothers – Break the Rules
ぜひNetflixで観てほしい作品のひとつ。2020年の目玉のひとつでは。