大学生の時はあんなに邦画をみていたのに、ここ3年くらいほとんど見なくなった。理由は簡単で、大げさでつまらなくて展開が同じで一つの価値観しか提供してくれないこと、あと音楽がながれないこと、スポーツの話題すら誰も口にしない非現実さである。 邦画はなぜか「リアリティのある描写に長けている」みたいな評価がつきまとうが、街中を歩いても、車に乗り込んでも、ティーンエイジャーが一人部屋にいても音楽の流れない世界のどこがリアリティなのかさっぱり分からず、嫌気がさしてみるのを辞めた。学園生活を描くなら、ジャニーズについて語る生徒はいるだろうし、巨人や阪神の試合結果について語り合う生徒もいるだろう。そういう実在する物への言及が何らかの理由でまったくない邦画に「リアリティ」なんて一切感じないし、つまらない。だから見ない。(あとBGMがうるさすぎる) 37デイズは多いとは言えないが、CHAIの楽曲などが流れたので、その時点でこの映画を評価したいと思う。そういうことができる映画を積極的に褒めていかないと、日本の映画はどんどん音楽も漫画もスポーツもない糞つまらん世界線に住む退屈な人間たちの無音の群像劇のみになってしまう。

出生時に37秒間呼吸ができなかったために、手足が自由に動かない身体になってしまった女性の自己発見と成長を描き、第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門で観客賞とCICAEアートシネマ賞を受賞した人間ドラマ。脳性麻痺の貴田夢馬(ユマ)は、異常なほどに過保護な母親のもとで車椅子生活を送りながら、漫画家のゴーストライターとして空想の世界を描き続けていた。自立するためアダルト漫画の執筆を望むユマだったが、リアルな性体験がないと良い漫画は描けないと言われてしまう。ユマの新しい友人で障がい者専門の娼婦である舞は、ユマに外の世界を見せる。しかし、それを知ったユマの母親が激怒してしまい……。主人公のユマと同じく出生時に数秒間呼吸が止まったことによる脳性麻痺を抱えながらも社会福祉士として活動していた佳山明が、オーディションで見いだされ主演に抜てき。母親役を神野三鈴、主人公の挑戦を支えるヘルパー・俊哉役を大東駿介、友人・舞役を渡辺真起子がそれぞれ演じる。ロサンゼルスを拠点に活動するHIKARI監督の長編デビュー作。

こういう言い方をするとあたかもおもしろくなかったかのように聞こえるが、実際はおもしろかった。こういう障害をテーマにしたもので、安易な統一した価値観への迎合や絆をテーマにして障害を乗り越えるみたいなつまらないプロットに行きつかず、家族というテーマ、出会いをメインに描いたことはとても評価できる。 そしてこれがフィクションでかかれた作品だというのも非常におもしろいし、意義があるなあと感じた。 タイトルのセンスも素敵だが、主人公が終盤で言う「もし私が普通だったら」「あのとき息ができていたら」「違う人生だったのかなあ」というセリフの使い方も抜群に良い。 大東駿介の何かしそうで何もしないところもケアワーカーとしての役目の真っ当ぶりがうかがえるし、全てがバランスよく、過度なフィクションへの傾倒もない。

Netflixのみで観られる作品なので、すぐに観てほしい。

音楽

CHAI – ハイハイあかちゃん

CHAI – N.E.O.


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