ちょっとイタい女の子の話。親友とケンカしたり、ダンサーとして芽が出ず引退を勧められても断ったり、それがゆえにずっと貧乏で生活がかつかつだったり。そんな人の話。

アカデミー脚本賞にノミネートされた監督作「イカとクジラ」のほか、「ライフ・アクアティック」「ファンタスティック Mr. Fox」などウェス・アンダーソン作品の脚本にも参加しているノア・バームバック監督が、ニューヨークを舞台にモダンダンサーを目指す主人公の女性フランシスと、彼女を取り巻く奇妙な友人関係を、モノクロの映像でいきいきと描いたドラマ。モダンダンサーを目指し、ニューヨーク、ブルックリンで親友ソフィとルームシェアをしながら楽しい日々を送っていた27歳のフランシス。しかし恋人に振られ、ソフィとの同居生活も解消になってしまったことから、居場所を求めて町を転々とするはめになる。周りの友人たちは次々と身を固めていき、焦りも感じたフランシスは、自分の人生を見つめ直していく。主題歌はデビッド・ボウイの「モダンラブ」。「ローマでアモーレ」などに出演した女優のグレタ・ガーウィグが主演・共同脚本。

私も彼女の状況に近かったことはあって、人と一緒に住みながら、でもお金が無くて、貯金切り崩して、いつも財布の中身気にしていて、たまに無理してちょっと旅行行ったり。そんな生活はそれはそれで楽しかったりするが、やっぱりなかなか精神的に来るのも事実だ。
だからこの映画はなんとなく重ねる部分が多々あり、同情的というか、自分を見ているようで個人的な辛さがあった。周りから見るとまあまあしんどいなと。いい人なんだよ、でもこのフランシスは。
周りがみんな結婚とか仕事とかで充実していく様をプー太郎が見届けるのは本当につらい。自分だって脱却したいけど、やりたいことがあったり、目標を立てているからなかなか踏ん切りがつかなかったりと、とてもリアルだし、どこにでもある話だ。

北乃きいっぽさもある彼女が過剰に自分語りをつい始めてしまうと、映像がモノクロなのもあいまって、とても古めかしい戦前の映画を観ているような錯覚を催す。サウンドトラックに流れる音楽も意図的にそのようなクラシカルなものがおおく、あえて時代性をぼかしたつくりになっている。

こういう作品って日本だと”こじらせ女子”とか何とか言ってカテゴライズしておもちゃにしたり、ヒステリックなさまを演じさせたりするのだが、フランシス・ハはそういった意味でもリアルである。彼女のまともさ、真面目さ、でも不安定で、楽観的。キレたりしないけどちょっと不満に思ってる。そういう絶妙なバランスの上で成り立っている人間を映し出した映画なのだ。

名作すぎて膝を打って感動したというわけではないが、おそらくこれから先いくどとなくこの映画のワンシーンをふと思い出すことになるんだろうなと感じる一作。ぜひ観てほしい。