アンドリュー・ガーフィールドの表現力と歌とダンスの完成度に圧倒される2時間、それがtick, tick…BOOM! チック、チック…ブーン!だ。

大ヒットミュージカル「イン・ザ・ハイツ」「ハミルトン」などの原作者として作詞や作曲なども手がけ、ディズニーアニメ「モアナと伝説の海」では音楽を担当するなど、現代ミュージカル界を代表する才能として知られるリン=マニュエル・ミランダの長編映画初監督作。名作ミュージカル「RENT レント」を生んだ作曲家ジョナサン・ラーソンの自伝ミュージカルを映画化した。1990年のニューヨーク。食堂のウェイターとして働きながらミュージカル作曲家としての成功を夢見るジョナサンは、オリジナルのロックミュージカルの楽曲を書いては直しを繰り返していた。もうすぐ30歳を迎え、これまでともに夢を見てきた仲間たちも現実に目を向け始め、焦りを覚えるジョナサン。自分の夢に価値はあるのか、時間を無駄にしているだけではないかと自らに問いかけながらも、時だけが過ぎていき……。主人公ジョナサン役は「アメイジング・スパイダーマン」「ハクソー・リッジ」のアンドリュー・ガーフィールド。Netflixで2021年11月19日から配信。11月12日から一部劇場で公開。

映画.comより

ミュージカルが苦手なのは理由もなく音楽が挿入され踊りだすところだが、主人公が売れないミュージカル作家ということもあり(、挿入に無理がなく自然と作品に入り込めた点は良かった。

とはいえ、ミュージカル映画お決まりの臭い展開と帳尻合わせのエンディングはどうしても面白みを感じられなくて(それがミュージカルの醍醐味でもあるのだろうが)、お涙頂戴だなと思うのはさておき。これが実際のジョナサン・ラーソンをどれだけ描けているのかはわからないが、実話じゃなきゃこれはちょっとベタ過ぎるなあと思う一方で、だからこそ現実とはドラマよりドラマチックだなと思う部分もある。

主人公のジョナサンは、何を隠そう、本作『tick, tick… BOOM!』の原作者だ。ロック・ミュージカルの金字塔として愛される傑作『RENT/レント』を生んだジョナサンだが、同作の公演初日だった1996年1月25日の朝、大動脈解離のためにこの世を去っている。

その6年前、1990年にジョナサンが上演した自伝的作品が『tick, tick… BOOM!』だった。当時、長年かけて準備してきた作品『スーパービア』の製作が叶わなかったことに失望したジョナサンは、自らの思いを込めた「ロック・モノローグ」として本作を上演。没後の2001年には、作家デヴィッド・オーバーンによって3人芝居のミュージカルとして改作され、『RENT』と同じく上演が重ねられてきた。

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クラシカルなミュージカル音楽だけでなく、ロックミュージックやジャズっぽいアレンジもあるなど、一辺倒でない他ジャンルの楽しみがあったのも良かった。

とりあえずは、ジョナサン・ラーソンという人物がいかに凄い人だったかをまず知る必要があるなと。それからこの作品を観るべきだったかもしれない。