ベイビードライバーを去年映画館で観たときの主人公、アンセル・エルゴートに釘付けになって以来、彼の出演する映画をもう一作みたいと思ってたどり着いたのがこの作品。評価も軒並み高く「末期がんを抱えた女性と片足の男性のラブストーリー」と文字面だけをみればつまらなさそうなんだが、この評価の高さはなにか違う面白さがあるに違いないと確信していた。

 

不治の病にかかった若い男女の恋を描いた全米ベストセラー小説「さよならを待つふたりのために」(岩波書店刊)を、「ファミリー・ツリー」「ダイバージェント」のシャイリーン・ウッドリー主演で映画化し、全米で大ヒットを記録した青春映画。脚本を「(500)日のサマー」も手がけたスコット・ノイスタッター&マイケル・H・ウェバーが担当。末期のガン患者で酸素ボンベが手放せない少女ヘイゼルは、両親に言われて嫌々ながら参加したガン患者の集会で、片脚を切断して骨肉腫を克服した青年ガスと出会う。ガスは独自の感性をもったヘイゼルに恋をするが、ヘイゼルは相手を傷つけることを恐れて距離を置こうとする。しかし、大好きな作家の話題がきっかけで2人は距離を縮めていき、その作家に会うためオランダへ旅立つ。そして旅の最終日、ガスはヘイゼルに重大な事実を打ち明ける。

おもしろいのは彼らの軽快なやり取りである。重くなりがちな「死」をテーマにしているのに彼らの明るさと逞しさとちょっと弱い部分が愛おしくて「大いなる痛みは感じるべきだ」という生死観をもとに仲を深めていく。タバコを咥え、火をつけないことで”力を殺すメタファー”だといいのけるガス(アンセル・エルゴート)がいちいちおもしろい。

英語という言語の性質上、日本語とはどうしても文構造が違うため我々には新鮮で独特な言い回しに感じることが多い。死を「死」と表現せず、いろいろなものに喩える。皮肉が効いていたり遠回しだったり。好きだということを「I love you」といいのける愚直さと文学的な部分が混在する。だから海外の作品はセリフにキュンとするし深く心に残る。日本語ももちろん素晴らしいのだが残念ながらあまり多くの映画でその素晴らしい日本語に出会えない(その分一回の出会いが衝撃的なんだが)。

まあこの辺は好みなのでどちらに優劣があるわけでもないが、とにかくこの作品はすばらしかった。暗いテーマでも前向きで明るくてたくましい。どちらも強がったり弱さを隠しきれなかったり病気について大げさにも隠しもしない。

 

音楽の使い方もいい。やっぱりこういうヒューマンロマンスにはポップスが似合う。オーケストレーションより効果的である。

例えばtom odellの「Long way down」やJake Buggの「Simple as this」、Ed Sheeran「All of the Stars」などといったイギリス出身のシンガーソングライターの起用は、アメリカ映画とは思えないセンス。おもわずjake buggが流れたときはドキッとしてニヤッとしてしまった(隠れjake buggファンなので)。

 

 

あとはkodalineの「All I Want」の流れるタイミングはセコい。泣くわ。詳しくは見てもらってそしてまんまとクスッと笑って泣いてほしい。

 

そう、この映画はクスッと笑いながら泣けるのだ。あまりに愛おしすぎる登場人物たちに、そのあまりの人間らしさに微笑ましくなる。

他にもbirdyも秀逸な起用だったしGrouploveもこの作品にピッタリの曲調で音楽へのこだわりを感じた。

途中で「スウェーデンのヒップホップグループは好きか?」と言って流れるAfasi&ilthyというユニットが意外にノリノリでかっこよかったので、スウェーデンのヒップホップについて勉強したいなとも思った。

あとM83ね。さすがの一言。「wait」という曲。素晴らしい。でも素晴らしいのはこの曲が収録されているアルバム「Hurry Up, We’re Dreaming」だって。クールすぎる……。

okay

これが合言葉。ラスト30分でしっかり浄化されてほしい。そして好きな人に改めて好きと伝えようと思うだろう。

きっと、星のせいじゃない。(字幕版)

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