定額配信開始

私の(心の)友達、BUMP OF CHICKENがニューアルバムをリリースした。既発曲が多く、アルバムの完成度が不安視された中の発売は多くの賛否を呼んだ。

とはいえその「否」も、決して予想されたようなものではなく、おおむね称賛されて発売第一週を終えたように思う。

また、ニューアルバムリリース前にはapple musicやspotifyなど、各定額配信サービスも全楽曲を解禁し、大きな話題となったのもある。
BUMPという固定ファン層(CDを絶対勝ってくれる人たち)が多いバンドが果たしてどこまで参考になるかは微妙だが、確かにいわゆる”サブスク”と呼ばれる定額配信を解禁してもアルバムの売り上げはそれほど変わらない、むしろ今まで彼らには慣れていた人たちももう一度聴き直してみようという動きにもなり、ここでもポジティブな結果が生まれた。

ニューアルバムの評価

さて中身ではあるが、私はあえて言うならC-くらいだろうか。

やはり近年のバンプの集大成でしかなく目新しさも面白さも感じられなかった。

勘違いしてほしくないのは、ただの懐古厨ではないということ。もちろん今のバンプの良さも、昔の良さも理解しているつもりだ。さすがにそんなバカみたいな批判はしない。
ただやっぱり期待以上でも以下でもないというか。そりゃそうだろうみたいな曲が続く。

基本的にバンプはそんなアルバムの中で変化をつけないバンドだ。各アルバム毎に楽曲の色があり、アルバム単位で比較するのがおもしろい。となると、前回の「butterfly」と今回の「aurora arc」は個人の好みの範疇ではないというだけだ。

「記念撮影」と「新世界」を除いて。この二つは良かった。

評論家たちの意見

というわけで私の評論などどうでもいい。気になるのは世間の反応だ。もっと気になるのは各情報誌や評論家の反応だ。もちろん建前しか書かないとは思うが、その建前から真意を探り取ってみる。

まずは音楽ナタリーに寄稿した宇野維正氏。

2016年の夏に配信リリースされた「アリア」以降のすべての楽曲を収録した本作は、アルバムとして前作となる「Butterflies」で極限まで拡散させた光を、一筋の光に再び収斂させていったような作品だ。アルバムの最初と中盤と最後に配置された3つの新曲「aurora arc」「ジャングルジム」「流れ星の正体」には、まるでその光を束ねるような役割が与えられている。

続いてMikiki。

人に容易に触れられたくないけど、誰かに気づいてほしいような、〈心の奥〉にある柔い部分。忘れていた、もしくは忘れようとしていた痛みと、確かな温もりが、彼らの音楽には一環として流れている。しかしアルバムになると、そういった曲もそれぞれ新鮮な輝きを放つから不思議だ。濃密で鮮やかな音と言葉、そして世界観に圧倒させられる。

続いてはReal Soundに寄稿した高橋美穂氏。

どれも付け焼き刃では生まれ得ない、洗練されたアレンジによって、するりと聴くことができるのだ。物語や歌詞に焦点が当たりがちなバンドではあるが、ここ数年、どれほど彼らがサウンドを探求してきたかということも、今作には刻まれている。

最後はロッキングオンの古河晋氏。

このアルバムにおいてはその動きが極めてなめらかで、しかもこちらの心のエネルギーによってスピードと色合いと輝きを変える、まさにまるでオーロラのような世界が広がるのだ。

これらはごく一部の抜粋なのでぜひリンク先で全文読んでいただきたいが、大方共通するのはタイトルである「aurora arc」にも掛けた”美しさ”への賛美だと思う。「洗練」であったり「光を束ねる」であったり「オーロラのよう」であったりと、表現は違えど、バンプの新作から美しさや色鮮やかさを感じている。
ここで突然バンプ批判をする人はいないだろうが、なんだかこの続きが欲しくなる。昔から雑誌のレビューはイマイチのってこないのはこの文字量だからか。

青に包まれてないで

そもそもバンプの「星」への追及心は一体なんだろうか。宇宙が好きなのはファンでなくても知っているだろうし、そのコンセプトは今に始まったことではないが、近年の青い光に照らされた宇宙にたたずむバンプはさすがに見飽きた。
雪の中はしゃいだり、小さなハコで歌ったり、草むらで歌ったりするのもまた見たい。

しかしやっぱり作曲センスも抜群だし、藤原の声はあいかわらず一級品。手放しでほめにくいアルバムではあったけど、バンプに求められているハードルはしっかり超えてきているし、それが初秋売り上げ13万枚という、「Ray」以降最多の売り上げを記録していることにもつながっている。

こんなこと言いながら9月にはライブにも行く。人生初バンプ。もう15年以上好きだけど。楽しみである。「Fire Sign」さえやってくれればなんでもいい。ほんと。