100分強とそれほどながくないながらも起承転結がしっかりしていて、すっかり後半にはボロ泣きしていた、そんな作品。

「マイティ・ソー バトルロイヤル」のタイカ・ワイティティ監督が第2次世界大戦時のドイツに生きる人びとの姿を、ユーモアを交えて描き、第44回トロント国際映画祭で最高賞の観客賞を受賞した人間ドラマ。第2次世界大戦下のドイツに暮らす10歳のジョジョは、空想上の友だちであるアドルフの助けを借りながら、青少年集団「ヒトラーユーゲント」で、立派な兵士になるために奮闘する毎日を送っていた。しかし、訓練でウサギを殺すことができなかったジョジョは、教官から「ジョジョ・ラビット」という不名誉なあだ名をつけられ、仲間たちからもからかいの対象となってしまう。母親とふたりで暮らすジョジョは、ある日家の片隅に隠された小さな部屋に誰かがいることに気づいてしまう。それは母親がこっそりと匿っていたユダヤ人の少女だった。主人公のジョジョ役をローマン・グリフィン・デイビス、母親役をスカーレット・ヨハンソン、教官のクレツェンドルフ大尉役をサム・ロックウェルがそれぞれ演じ、俳優でもあるワイティティ監督が、ジョジョの空想の友だちであるアドルフ・ヒトラーに扮した。

ジョジョの親友、ヨーキー役のアーチ―・イェーツが取り沙汰されていて(達者な表情が大絶賛だった)、てっきりジョジョとヨーキーの冒険物語かと思いきや、親子の物語であり、ドイツとユダヤの禁断の出会いの話だった。ジョジョのナチへの敬愛と、それを憂う母親。それぞれの人の表向きからは感じられない秘めたる思いがにじみ出てきたとき、そこで泣いてしまった。

靴ひもを結べないジョジョ、そしてそれを何度も直す母親。そのシーンがやたらと丁寧に描かれる。そしてなぜか多い母親の足元カット。その理由がハッとわかるシーンがあって、ジョジョよりも早く観客が気付いてしまう。そして思わず口を押えて涙がこぼれる。あんなに素敵な母親が。スカーレットヨハンセンの強くてかっこよくて愛に溢れていて平和を望んでいる素敵な人が。耐えられない、でもなんとなくそうなってしまうのは分かっていたような気もして、やるせなくなる。

おそらくクレツェンドルフ大尉もマイノリティの一人で、それをほのめかすシーンがある。それは第二次世界大戦前に謳歌した自由な風潮の名残だったのかもしれない。あるいは厳しい戦況の中での小さな反骨心のシンボルだったのかもしれない。いずれにせよジョジョもクレツェンドルフもロージーもみんなどこかで弾圧されかねない状況の中でドイツ国民として生きていた。それが最後ジョジョに愛をこめて逃がすクレツェンドルフのシーンにつながっていたのかもしれない。
それだけで、この映画がいかに愛に溢れているものかがわかる。

見どころは3つ

  1. ジョジョとエルサの掛け合いを楽しめ!
  2. ロージーのファッションとスタイルと撮り方をじっくり見ろ!
  3. クレツェンドルフを侮るな!

です。