リバー・フェニックスとキアヌ・リーブスの共演で話題を呼んだ青春ロードムービー。路上に立ち、男性に体を売って暮らしている青年マイク。緊張すると突然意識を失ってしまう奇病を持つ彼は、自分を捨てた行方不明の母親を捜すため、市長の息子で、同じく男娼のスコットとともに故郷アイダホへと向かう。同性愛、近親相姦、ドラッグといったショッキングな内容を、詩的な映像を駆使して描いたガス・バン・サント監督初期の傑作。2014年、フェニックスの遺作「ダーク・ブラッド」(12)公開にあわせ、フェニックス出演作の特集上映でデジタル上映。

映画ファンでも随一の人気を誇るリバーフェニックス。その美貌と印象的な演技、若くして他界したショッキングな人生もあいまって、彼を今でも信奉する人は多い。
去年末、弟のホアキンフェニックスがジョーカー役でアカデミー賞を受賞した際に、兄リヴァーが作詞した歌詞「愛をもって救済に向かえ。平和はあとからついてくる」を引用したことでも再び話題になったが、彼の作品はいまだに色あせることはない。

とか偉そうに言いながら、この作品をこのタイミングでようやく見ることができた。ガス・バン・サント監督の抽象的でメタファーの多い映像展開は日本映画にはみられない芸術志向で、とてもおもしろい。ワンシーンごとにきちんと意味があり、示唆的なものは、鑑賞後の話のタネにもなるし、解説ページを読み込むのが楽しくなる。映画はやはりそういう鑑賞後の楽しみも残してくれるものが良い。

キアヌリーブスにいいイメージがなくて、あまり映画も見たことがない。マトリックスこそ観たけれど、「スピード」にしろ「コンスタンティン」にしろ、「イルマーレ」すらもみていない。そして「地球が静止する日」を観てしまい、そのつまらなさをキアヌの責任に押し付け、やっぱキアヌつまんねえわと決めつけていた。「ジョンウィック」は度々おススメされるので観てみようとは思っているが、正直この作品を観ていなかったらキアヌのイメージは悪いままだっただろうから、「マイ・プライベート・アイダホ」様々である。

この映画のおもしろさは、リヴァー演じるマイクの心模様とか、スコットに告白するシーンのいじらしさとか色々あるのだが、個人的には貧富の差が如実に出るところなんじゃないかなと思う。市長の息子で最後に収まるところに収まるスコットと、親を求めてアイダホやイタリアまで行くも見つけられず、収まるところがなかったマイク。それを描き切っているところがおもしろいと思う。
解説等はやはり名作なのでたくさん存在していて、そちらを参考にしてほしい、個人としては大満足の作品なので気になった人はぜひNetflixでみてほしい。

ちなみに、今年の初頭に後悔されていたグザヴィエドラン監督の最新作「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」でも、このマイ・プライベート・アイダホのシーンがオマージュとして使用されている。
そう、私は「ジョン・F・ドノヴァン~」を先に観てからオマージュ作品を知り、今作を観たのだ。そうやって映画の色んな幅をオマージュから広げていくのも面白いよなあと感じる次第だ。