TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアが与える影響、特にネガティブな方について追ったドキュメンタリー。これは全員必見の注目作品だ。

本作でGoogleやFacebookの元スタッフ、そして学者や専門家たちによって繰り返し語られているのは、ソーシャルメディアのサービスを提供している企業にとって、我々ユーザーは「客」ではないということだ。ソーシャルメディアにとって「客」とはあくまでも広告主であり、彼らは自社のサービスによって収集した我々の日常生活や行動が蓄積されたデータを解析し、広告と効果的に結びつけることで収益を生み出している。つまり、我々は企業から企業に毎日リアルタイムで売られている何十億もの「商品」の一つでしかないのだ。

『監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影』が警鐘を鳴らす、無防備な10代とソーシャルメディアとの付き合い方

広告の是非、そしてフェイクニュースの問題は今まさに山積みになっていて、これからクリアしていかなければならない問題だ。私も勝手な広告に毎日嫌気がさしていると同時に踊らされている。とくにInstagramは本当に気持ちが悪い。広告に「○○市に住む○○代のIphoneSEをお使いの男性にだけのお得な情報です!」という文言と共にクリニックを紹介されるのだが、インスタに住所まで(しかも最新の)割り出されてなんのスマホを使っているかまで把握されたらたまったもんじゃない。そして大抵はコンプレックスをくすぐるものばかり。大抵は薄毛で、幸いにも私には関係のない話なのだが、例えば脱毛とかだと、まあ考えてなくもない私にとってはピンズドの広告であり(まあ仮に行くとしてもぜっっっったいにインスタの広告で出てくるようなところはいかないけれど)、インスタとしてはしっかりと急所を突けていることになる。

監視資本主義、のおそろしさ、そしてフェイクニュースにのめり込んでいく仕組みを、ソーシャルメディアを作った人たち自身が赤裸々に語る。

何が悲しいって、作った本人たちが「子供には絶対やらせない」と言っていること。もうなんだよそれ…という絶望感。こちとらもう絶てないところまで侵されているのに。

というスマホ中毒の人間の悲しみだけが残るドキュメンタリーでした。

今この瞬間にも、ソーシャルメディアを運営する企業はデータを収集&解析し続け、そのアルゴリズムは精度を高めると同時に、その存在をまるで空気や水のように「自然なもの」であると人々を錯覚させるべく果てしない「洗練」へと向かっている。恐ろしいのは、この流れ自体はもはや誰かの意思や意図によって変えられるようなものではないこと。それでいて、その流れの中にフェイクニュースをはじめとする悪意や世論操作や政治的に偏向した思想をのせることは容易いことだ。本作でも結論として語られている「サービスの基本設計自体が悪い結果を生む」という考え方が今では専門家の共通認識となっているということは、もっと広く周知されるべきだ。

同上