高校生の頃から聴きまくって早11年。知った時はもうすでにロック好きの中では話題になっていたバンドだったので、ずっと”後追い”の感覚で聴いていたらいつの間にかみんな自分より後に知った人ばかり。自分にラッドを教えてくれた人も、一緒に聞いていた仲間もみんなラッドからは離れて違う音楽を聴いたり、そもそも音楽に興味なくなってたり。私は相変わらず新曲はチェックしてツアーは必ず一度行くようにしているのに。なんだか自分だけ取り残されたようで、ちょっと寂しさも感じながら。もう聴くことを止めてしまった人たちに「いやいやいまのラッドはもうミクスチャーロックバンドという範疇も超越したすごい音楽集団になってるんだよ!」と伝えたくても彼らは狂ったように有心論と前前前世しか話さない。

とはいえ、私も少しずつラッドから離れてきている。悔しいけど追いきれない。活発になっていくラッドとグッズの絶望的なダサさと、そしてクオリティの高さと熱量が比例しないこと。これが辛い。めちゃめちゃ凝ったいい曲ってわかってても、なんだか彼らを聴く気になれない日が多い。あらゆる新譜を毎日追いかけていてあまりラッドを聴く時間がないというのもある。次第にシングルは買って数回聞いてもう棚から二度と出さない、なんてことがたびたび起きる。

でも今回のツアーはもちろん参加する。もう数か月もラッドの音源を新曲以外聴いていない気もするが、それでも彼らをみたい。彼らの音楽に触れたい。もうライブに行きたい日本人アーティストなんて数少ないから、ここだけは外せない。
新曲「カタルシスト」をひっさげたツアーは、久々にアルバムツアー以外のライブ。旧作品をたくさんやってれるだろうと期待して三重までわざわざ車で駆け付ける。

会場である三重県営サンアリーナに着いたのは18時15分。なんとかぎりぎり開演前に入場する。開演直前に流れていた音楽がめちゃカッコよかったのですぐshazamする。Sampa The Greatの「WEOO」という曲らしい。この曲に合わせて客は手拍子をするけどこれただの会場BGMなんだけど、、と一人心の中で突っ込む。手を叩いている暇あったら「あ、この曲なんだろう」みたいなこと考えたりした方がよいのでは。
私は洋次郎にツイッターでリプもしないしインタビューをくまなく全部読んだりはしていない(それなりに細かくチェックはしているが)。洋次郎の服を調べたりもしないし名言集とかも興味ないし、グッズなんて集めるどころかもう何年も買ってすらいない。他人から言わせればファン失格かもしれない。だけれど、それと同時に、そういうアンテナはどうしてみんな張らないの?とつい思ってしまう。洋次郎の好きな音楽ならみんな知りたいのでは。と。そういうところからより広くて深い音楽の世界に入っていくんじゃないの?と。個人の自由だけれど、せっかくラッドが好きならもっとその界隈だけじゃない、未体験の世界に飛び込んでほしい。こうやって会場BGMという形でその門戸は開かれているんだから、そのチャンスを逃す理由はない。という愚痴、みたいな独り言。とりあえずsampa the greatは聴いてみよう。好きか嫌いかなんて後で判断すればいいから。好きじゃないものにたくさん出会えば好きなものに出会った時の感動は大きいから。

ライブに戻る。一番後ろで立っていたのでメンバーをよく見ることはできなかったが、一曲目の「AADAAKOODAA 」から会場を沸かせる。この曲のアルバム「○と×と罪と」からラッドのヒップホップはぐんと精度を高めた。。今までは良くも悪くもミクスチャーロックにとどまっていて、わかりやすくいうとゲスの極みの乙女。のような早口ロックを得意としていた。でもこのアルバムの辺りから、とくにこの日のライブで痛感したのはボーカル野田洋次郎のラップスキルの上達ぶりがめざましく成長している。もうミクチャ―ロックじゃない。ひとつのヒップホップとして成立している。韻の踏み方も、間の作り方も、そして歌い方も。全部がダントツに良い。それは後に演奏される「カタルシスト」でも改めて痛感することになる。
二曲目、「One Man Live」、「ます。」とシンプルなロック、パンクロックが続く定番が来ると、四曲目は「透明人間18号」。おそらく10周年記念ライブ以来の披露だが、個人的に大好きな一曲なのでとてもうれしい。桑原のギターが聴きどころだ。その後も、「遠恋」「俺色スカイ」と初期の曲が続く。しかし「俺色スカイ」はよかった。見違えるほど良かった。何がそんなに良かったのか、どこにアレンジが加えられていたのかはわからなかったが、バツグンに曲としてよかった。あれ?こんな曲だったっけ?という。ちょっとドラムが淡白だなあと思ってた曲だったのでツインドラムになってその淡白さが消えて重厚感とリズム感が生まれたのかも、と勝手に結論付ける。あとやっぱりここでも洋次郎がうまい。何とか早口で歌ってるよ、という感じはなく、すごくリズミカルで波に乗った歌い方。言葉が踊ってた。それは10年前のライブでも、5年前に披露した時にもなかった感想。スキルあがりすぎだろ、と舌を巻く。
次に披露されたのが「やどかり」。これは絶対延命ツアー(2011年)で行なわれて以来(のはず)。個人的に、大学卒業する前後で歌詞にハマってしまった、思い入れ深い一曲。


語る思い出ができたのはいつからだろう
無くせないものができたのはいつからだろう
二度と「今」は来ないと知ったのはいつからだろう
知らないことがあると知ったのはいつだったろう



大学卒業するときにこの言葉にハッとさせられて、すごく後悔したことを覚えている。やっぱり生で歌われるとジーンとする。久々に聴いていろいろと思い返してしまう。そして今に…あ。やめようこれは。

次にインストがはさまるんだけれど、わかる人にはわかる、πかアイアンバイブルが始まるジャズアレンジ。完全にそのつもりで心構えていたらなんかアウトロがあってしっかり曲が終わってしまった。いつもなら流れるようにπに入るのに。と思ったら画面に大きなテレビが映し出されて、メンバーが映りこむと、「揶揄」が始まる。さすがにサプライズ。前回?のツアーで何か所かやったらしいという噂は聞いていたが、ここで聴けるとは。お決まりの語りは画面いっぱいに歌詞が流れていく演出もある、ロックテイストな「揶揄」になっていた。
君の名は。からピアノインストを一曲披露した後に、「スパークル」。今日一番の大きな歓声が上がる。やっぱり君の名は。は偉大だ。きれいなレーザー光線が天井を映す。まるで彗星のように。自然とみんなが顔を上げる。スパークルを聴きながら自然と君の名は。の名シーンのような状況を作り出していた。見事な演出だった。その後「おしゃかしゃま」でギターとベースがかけあう。いつものやつだが、ギターが今回は気合入っていた。速弾きもそうだけど、音作りもアソビもおもしろかった。ギターは詳しくないけど、こんな音遊びするんだとちょっとびっくり。相変わらず無駄に演奏力が高い。もうだれもギターソロをしなくなって久しいJ-ROCK界において、ひたすら掛け合いを続ける彼らの心意気にぐっとくる。
MCで新曲の想いを語った後、「カタルシスト」を披露。私も初めて聴いたが、これをフジテレビのワールドカップのテーマソングにしたことがまず驚いた。こんな盛り上がりにくくて合唱しにくい、サビのわかりにくい曲をよくフジ並びにその関係者はオーケーしたものだ。これからわかるのは、どれだけ野田洋次郎という人間が信頼されているかということ。普通なら「こんな曲調でこんなフレーズ入れてCMとかスポーツ番組のハイライトで流しやすいように15秒でこんな感じでまとまって、しかもロングトーンとかもいれて….」みたいな注文が付けられるはず。でも「いや、ラッドの曲がいい。ラッドがいいと思う曲がいい。」という信頼があるからあそこまで自由度の高い曲を抜擢したんだと思う。凄い。まずもうそこが凄い。そして音楽もすごい。どうすごいかを解説するのが音楽ブログの仕事なんだろうけど、私にそんな技術はないので「スゲエ」とだけ言っておく。まずラップがまたかっこいい。一段階も二段階もクオリティが上がっている楽器隊がいい。ギターが活きている。ジョンフルシアンテだ、桑原は。日本のジョンだ。ファンだから言いたい放題言うぞ。過大評価かかってこいだ。そしてこの「カタルシスト」自体が、すごく今のシーンを反映している。ガラパゴスと言われがちな日本のロックだけど、ラッドは全力でアップデートしている。個性は失わずに、時代に合わせて最前線にいってる。これは完全に浅学な私の主観だけれど、プリンセスノキアみたいなアーティストがよぎった。メロディアスなラップとロック的なアプローチが混ざって「ミクスチャー」ではない新しい何かが生まれている。そんな気がした。

「カタルシスト」の空気感を維持したまま「洗脳」へと移る。こちらもやはり最近のラッドの特徴が表れた一曲。
そのままステージからフェードアウトする洋次郎。現れたのは私のすぐそば、一番後方の特設ステージ。ピアノ一台ではじまる「告白」。基本的にアルバムのラスト曲はそのアルバムのツアーでしか聞けないので、かなり貴重な一曲。もしくは相当洋次郎にとって思い入れのある曲になって、これからこの曲をやり続けるのか、いずれにせよバラードも随分と進化したなと改めて感じる。

そのままもう一曲、カタルシストのカップリング、「HINOMARU」を披露。「日本を誇るような曲があってもいいんじゃないか」という思いからつくられたこの曲は、古い言葉や堅い言葉を使いながら最後は大合唱させる壮大な構成。先日、Childish Gambinoが「This Is America」を公開して話題になったが、良くも悪くも日本人の「This Is Japan」はこういう形になるんだろうなあと腑に落ちた。ひたすら謙虚で控えめと語られがちな日本人だけれど、最後には「まあでもこの国っていいよね」というところに落ち着かせようとする謎の風潮がある。この国を認めてから議論しようよ、とひとまず妥協を余儀なくさせる。洋次郎を否定したいわけでもその論調をバカにしたいわけでもないが、その理想論はどこまでのスケールを想定しているのだろう、とふと気になる。別に現実派気取りでもなくて。ただそう思う。曲は、やっぱりカタルシストが別格に良い。

メインステージに戻ると、人気投票で二位とダブルスコアをつけて一位だった「トレモロ」が演奏される。定番の一曲。ほぼどのツアーでも歌っている。一時はアカペラバージョンやピアノバージョンなどもあったが今回は原曲通り。そしていつものクラッピングが流れると「いいんですか?」の合図。この一体感は何度味わってもいい。最後には「君と羊と青」で盛り上げて本編終了。
アンコールではメンバーがグッズTシャツを身にまとい登場。「もっと古い曲でもよかったよ~って人!」と洋次郎が訊くと大半の人が挙手。それみて苦笑いの洋次郎。「あれ、結構考えたんだけどなあ笑」とつぶやく。「明日声が出なくなるくらい歌って帰ってください」と言って、「デビューアルバムからもう一曲」というとひときわ大きな歓声。しかしあの青いギター、そしてジャーンという音。完全に有心論の流れだ。さすが三重まで来たあまり告知もしていないツアーにきたラッドファン、すぐに察してざわつく。そして洋次郎も間違えたと笑う。「これタダだからね!もうチケット代のところは終わったから!」と必死に言い訳する洋次郎。改めて「セプテンバーさん」が始まる。こちらも原曲通り、掛け合いも特になくおわる。そして「有心論」を大合唱して無事終了。ツアー初日からラッドの余裕が見えるライブだった。

2011年の絶対延命ツアーでのラッドはもっとぎりぎりまで命削っていた。それがよかった。でも今は今でよい。この余裕がいい。大人の、中堅バンドの風格がある。そりゃロッキンのトリもできる。去年レディクレでアジカンを見たときに、ゴッチの余裕を見て、これがベテランバンドの風格化と唸ったが、それに近しいものを感じた。彼らの演奏面も歌唱面も演出面も、全てに余裕がある。こんなに怒涛の言葉責めでもそつなく歌いこなす洋次郎の余裕。激しさだけがウリじゃないと涼しげにソロを弾く武田と桑原。二人のドラマーに支えられ音楽の深みはさらに増した。今回、「DADA」や「前前前世」はやらなかった。そこを外してきたのは意外だったし、よくぞ外したとも思う(その曲が嫌いとかではない)。よりファンが喜んでくれそうな曲をチョイスしていた。個人的には「○と×と罪と」からもう少し欲しかったが。カップリングを入れてくれたのもこのツアーならでは。
そんなに感情的になるライブではなかったが、安定して楽しかった。また今年もちゃんと彼らを見られてよかった、という感想が真っ先に頭に浮かぶ。もう、ラッドは私の人生を揺るがしたりはしないかもしれないけれど、ワクワクさせてくれるし、どんな洋楽よりも気付きや発見を与えてくれる。だからなんだかんだやめられない。
次のアルバムも鋭意制作中とのこと。次のアルバムツアーもぜひ行きたい。
ちなみに「18祭」という18歳限定のライブを秋に行うつもりらしいが、ラッドがそういう安易な記号に飛びついたライブをするとは思ってなかったので少しショックではあるが、まあどうせ行けもしない企画なので静観しておく。

セトリ
  1. AADAAKOODAA
  2. One Man Live
  3. ます。
  4. 透明人間18号
  5. 遠恋
  6. 俺色スカイ
  7. やどかり
  8. 揶揄
  9. 君の名は。ピアノインスト
  10. スパークル
  11. おしゃかしゃま
  12. カタルシスト
  13. 洗脳
  14. 告白
  15. HINOMARU
  16. トレモロ
  17. いいんですか?
  18. 君と羊と青


  19. アンコール

  20. セプテンバーさん
  21. 有心論