「俺に従わなければ関税をあげてやるぞ」と脅し「俺こそがノーベル平和賞にふさわしいんだ」と自負する人がどうにかして世界の中心であろうと威張り散らす中で、その隣で小躍りしながらその国への忠誠を誓いながらその一方で簡単に蹂躙できそうな別の外国籍の人たちを何の根拠もなく「奈良の鹿をいじめている」と言い放ち排除しようと試みる人が総理大臣になった2025年。それはどこで仕入れた情報ですか?と聞くと、なんかそういうこと言ってる人がいた、から、昔私も注意したことがある、へと言い訳が変容し、どうしてこうもこの人は突っ走ってしまうのだろうと嫌になる。威勢のいいことをとりあえず言ってみる。事実は後で確認する。断言してみる。できないなら黙ってなかったことにする。そればかり繰り返す。企業献金について問われれば「そんなことより議員数削減しましょうよ」ととんでもないことを言う。今まで明言を避けてきた内容に何故か突然切り込み隣国を激怒させたにも関わらずなぜか他人のせいばかりにし一向に自分の言動を振り返らない。どう責任を感じてるのかと問われても「より良い関係を築いていく」みたいな噛み合わないことをいう。わざという。徹底して論点をずらす。相手が話にならないと諦めるまでずらす。同じ回答を繰り返し、周りの支持者たちに「いつまでそんなくだらないこと言ってるんだ」と言わせたがる県知事も同様である。過去のデマや捏造を平気で垂れ流しておきながら一切の弁明もなく、後に引けなくなったものだけ「切り取りだ」と被害者面してこちらも支持者に助けてもらおうとする新興政党も現れた。外国人を嘘で排斥へと追い込み、母にしてくださいと全くもって意味不明なことをスローガンにし、核の保持に前向きな発言をし当選したらダンマリして一切表舞台に現れない人もいた。奈良の鹿を守るという名目で色んな人に嫌がらせをするだけの議員が現れた。全く勉強もせず差別することだけに躍起になる。そしてそれを正当だと言い張る。かつて不登校だった少年が右翼ビジネスを始めた。「頭がおかしい」とひたすら中傷する。それを先陣切って煽動していた元党首が逮捕された。その関係性について問われた人たちは無視した。自分が批判されると名刺を公開して支持者を焚き付けた政治家がいた。議員数削減の1割の根拠を問われると根拠なんかないと開き直る人がいた。テレビなどで人気を博していた弁護士が議員となり、全くもって根拠のないデマを適当に話し暴走している問題はまだ終わっていない。

政治の局面だけではない。LGBTQのレインボーパレードで明らかに政治思想が異なる政党のテーマソングを歌う人が現れ、運営からも強く非難を浴びたのに当事者は最後まで全く聞く耳を持たず、そして「私も傷ついた」と被害者ぶった。ライブハウスで痴漢をされた上にスタッフにセカンドレイプを受けたと告発された人がいた。その人に対しその口を紡ぐように、ろくな検証もせずに圧力で潰すような行動をとった企業がいた。高裁で同性婚禁止を合憲とする判決する事案が起きた。判決文を何度読み返しても到底受け入れることは難しいほどに論理が破綻しており、無理がある内容だった。その判決にがっかりする人に対して「ザマァ」と多くの人が罵った。ザマァ、とは一体彼らにとって何の得もない、何一つ意味のないゴミみたいな言葉であり、むしろ反対する人たちの意見がいかに意味を成さないかを強化してしまうのだが、彼らにとってそんなことはどうでもいいらしい。リベラルが悔しがっているのが嬉しいそうだ。それって意見の対立ではない。同性婚賛成する人と、それを嫌がらせしたい人、こんなの対立にならない。母親がいない子供は不幸だ、と勝手に人の人生の幸不幸を決めつける人がいた。それに対して涙ながらにおかしいと訴える人がいた。その人にネットは「いや事実だろ」と全く人の話を聞かずに中傷した。体罰で名を馳せたご老人をテレビに出演させ、「議論」と銘打ってしまったウェブメディアがある。本当にあったかもわからない「AEDを使って訴えられた」人を出演させ話をさせてしまったこともあった。あのメディアは常にこの社会に不満を持つ(特にミソジニーや逆差別に怒り狂う)男性を焚き付けることばかりする。世の中をよくしようとかいう気概はない。

今年はずっと誰かがとりあえず言い切ってみてから後から言い訳を用意するパターンを見てきた。あるいは逆切れしてきた。恫喝してその場を収めようとしてきた。支持者を利用して愛艇を追い詰める手法もお手の物だった。追及には一切応じず「切り取りだ」「印象操作だ」を繰り返し、具体的になにが印象操作であり切り取りなのかは一切答えない。自分としてこういうつもりだった、ばかり。何を聞いてもそれしか言わない。それで何とかなると思っているし、事実なんとかなるからだ。なんとかしてはならないのに、すぐに「いつまでやってるんだ」という声が上がってくる。

そんなの世の中でも一筋の希望を照らそうとする動きもあった。アミューズが映画「ブルーボーイ事件」を制作し、それに際し声明を出した。それは力強くトランスジェンダーたちを鼓舞するものだった。(映画自体には、複数の問題点があるものの)この時代に全国ロードショーとして真っ向からこの問題に立ち向かう姿勢があった。宇多田ヒカルが「Mine or Yours」で同性婚への言及をしたことも話題になった。全く関係のないウェブサイトにエロ広告が表示されることに異議を申し立て、そういった広告が挟まらないように改善されたこともあった。正しいことを正しくあろうと誠実に向き合う人たちがいた。おかしいことをきちんとしたプロセスで表明するアーティストがいた。それを嘲笑し、バカにすることでしか反論できな人を尻目に、黙々と言葉を紡ぐ作家がいた。差別に対し抗い、戦争に対し受け付けず。核抑止論に対し真っ向からノーをつきつけた。いまだに夫婦別姓”ごとき”が進まない現状で、それへのまともな返答もないままで、それでもきちんと正しく実直に抗議し続けている人がいる。

長々と書いたが、この一年はどんな年よりもうんざりするニュースが多かった。そして端的に言えば、そんな排外主義や差別が横行する時代に、この日本のポップミュージックシーンを担うミュージシャンは文字通り”不甲斐のない”一年だったと思う。「何を言わなかったか」で誰かを批判することには非常に注意するべきだとは思うが、それにしてもあまりに能天気で自分本位な人たちが「表現者」を名乗っていることに違和感を抱く。コロナの時はさんざんライブハウスを守ろうだとか言って政府に抗議したり、モッシュ禁止が話題になれば自説をご機嫌にSNSで説き伏せたりするのに、すこしでもその外の話になるとさも自分には関係ないといわんばかりにダンマリするバンドの多さに開いた口が塞がらない。まさしく無様な醜態をさらしたと言わざるを得ない。
上記でも述べた通り、もちろん声を上げたミュージシャンもいた。直接的でなくても、いろいろな角度から彼らなりのできる表現で社会を良くしたいと願う人たちがいた。当然この例年行っているベストトラックは「音楽として」よかった楽曲を選ぶものではあるが、そういったことと無関係でもない。
本当に長くなって申し訳ないが、お待たせしました。年間ベストトラック100の発表です。以下がルールです。

1. 2024年11月~2025年10月までに配信、発売、公開されたシングル、アルバム、EP全ての楽曲が対象
2. リマスタリング等は含まないが、セルフカバーは対象とする

100位~51位

100位 藤井 風 – Hachikō
99位 S.A.R. – Back to Wild
98位 ハク。 – それしか言えない
97位 FRUITS ZIPPER – JAM
96位 Keep in Touch, Stupid Kozo & さらさ – Shakunetsu
95位 ぺろぺろきゃんでー – NIGIRI
94位 モノンクル – 二人芝居 feat. Daichi Yamamoto
93位 梅井美咲 – Loops (feat. Shöka)
92位 山中千尋 – Tristeza
91位 Survive Said The Prophet – Useless (feat. Knosis)
90位 WOLF HOWL HARMONY from EXILE TRIBE – Bossa Bosa
89位 iri – CUBE
88位 mabanua – All Right
87位 yeti let you notice – animation
86位 甲田まひる – ナツロス
85位 RADWIMPS – DASAI DAZAI
84位 Number_i – Hard Life
83位 indigo la End – FEVER
82位 TENDRE – RUNWAY
81位 井戸健人 -Living
80位 lyrical school – to be continued
79位 のん – フィルムの光
78位 崎山蒼志, Mega Shinnosuke & 紫 今 – 人生ゲーム
77位 Chilli Beans. – pineapple!
76位 スーパー登山部 – 燕
75位 miida – ゼロサムゲーム
74位 Helsinki Lambda Club – Supernice (feat. トリプルファイヤー) [feat. トリプルファイヤー吉田
73位 Aki – 話そうぜ
72位 Subway Daydream – オレンジ・クラッシュ
71位 清 竜人25 – 世界を愛せますように!
70位 三浦透子 – ほうき星
69位 日食なつこ – leeway
68位 ボタニカルな暮らし。 – アンブレイラ
67位 NakamuraEmi – MICHIKUSA
66位 Skaai – FR WIFI
65位 Official髭男dism – らしさ
64位 TOWA TEI – THE FINEST (feat. VERBAL)
63位 Yorke & indigo la End – sorry in advance
62位 the engy – IceCandy
61位 青山吉能 – ルーガルー
60位 PES & BIM – 大人モード
59位 CRCK/LCKS – レンタル神様
58位 milet – Nobody Knows
57位 yeti let you notice – ほんとうのこと
56位 揺らぎ – Our
55位 FRUITS ZIPPER – KawaiiってMagic
54位 古里おさむと風呂敷き – 犬の遠吠え
53位 フレンズ – 不完全な僕の声と君の完璧なダンス
52位 羊文学 – doll
51位 長瀬有花 – hikari

50位~21位

50位 PEDRO – 拝啓、僕へ
49位 It’s US!!!! – 1.2.3.4, 次は…
48位 ボタニカルな暮らし。 – Dusk
47位 んoon – Forest (feat. ACE COOL)
46位 Doona – RUN
45位 上白石萌音 – Loop
44位 Suchmos – Whole of Flower
43位 KM – DANCELIXIR (feat. Lil’ Leise But Gold, Daichi Yamamoto & Skaai)
42位 奇妙礼太郎 – marriage
41位 名誉伝説 – 共犯者
40位 Laura day romance – mr.ambulance driver ミスターアンビュランスドライバー
39位 FRUITS ZIPPER – Sugarless GiRL
38位 miwa – リアル
37位 illiomote – Body Machine
36位 Kis-My-Ft2 – A CHA CHA CHA
35位 mei ehara – 風景が
34位 chilldspot – Unbound
33位 FNCY & 9m88 – SATURDAYS VIBRATIONS (feat. 9m88)
32位 adieu – わたしはまやかし
31位 さいわいな部屋 – ニュータウン
30位 Yaffle – Marry You (feat. Leina)
29位 BONNIE PINK – Like Gravity
28位 LAGHEADS – Sugar Days feat. 吉田沙良
27位 星野源 – Mad Hope (feat. Louis Cole, Sam Gendel, Sam Wilkes)
26位 青山テルマ – EASY MODE
25位 RADWIMPS – 筆舌
24位 ROTH BART BARON – Goodnight
23位 和久井沙良 – Beat Birds
22位 AAAMYYY – リラックス (feat. 鎮座DOPENESS & Neetz)
21位 Homecomings – slowboat

20位~11位

20位 KID FRESINO – AOS
19位 蓮沼執太 – Heaven
18位 Tele – 残像の愛し方
17位 kanekoayano – 難しい
16位 KREVA – No Limit
15位 BREIMEN – Bowling Star
14位 君島大空 – WEYK
13位 Mrs. GREEN APPLE – 天国
12位 ONE OK ROCK – +Matter
11位 小袋成彬 & Stefan Ringer – Frontline

10位~4位

10位 TOMOO – コントラスト

9位 眞名子 新 – 野原では海の話を

8位 RADWIMPS – 賜物

7位 羊文学 – 声

6位 笹川真生 – 美しい術

5位 星野源 -Star

4位 星野源 – 2 (feat. Lee Youngji)

3位~1位

3位 眉村ちあき – 幸福ミュージック

2位 asmi – Err

1位 RADWIMPS – 命題

冒頭から怒涛のように一年の総括をして、そして捲し立てるようにおかしなことを列挙してきた。決して政治的な思想(だけ)ではなく、むしろ人として当たり前のことで、嘘をつかない、見栄を張らない、差別しない、人を貶めない、加害者を擁護しない、被害を矮小化しない、指差し笑わない、特定して集団で非難しない、という至極真っ当なことを伝えているだけだ。それを威勢のいいだけの人たちが平気で破っていく。一位にしたRADWIMPSの「命題」はまさにその人たちに真っ向から向かっている。彼らとしては久々のメッセージソングのように思う。かつての「シュプレヒコール」のような痛切さがあり、鋭利さがある。

テメェのインチキがばれりゃ他所に五万といると
光の速さ 開き直りで自己避難かわすスルーパス
人生上級者達がまるで幅利かす時代
白か黒かの二元論が横行 ゆらめきさえ許さず

言葉に刃突き立ててぶん回すようなこの時代に

とあまりにリアルでタイムリーなリリックを詰め込んでいる。

でも決してこの曲はそれで終わらず、

広い海に一滴の目薬ほどの違いだとしても僕がここに生まれてきた意味の一雫を探して彷徨うような日々
「君じゃないと」が聞きたいの 君と僕の希望ごっこ

と歌い締めるところが彼ららしく、そしてなにより力強い。

そうだ、私はいつだって音楽に希望を求めている。怒りをモチベーションにした希望がほしい。もちろん怒りの歌だってあったって構わない。そんな曲もあった。そしてその歌手に最大限に心を寄せてみたりした。ただ今回の100曲には、だからこそ「負けないよ」という不屈の魂が見える曲が名を連ねた。3位の眉村ちあきの「幸福ミュージック」は

誰でも幸せになっていいよって憲法があるよね

という一文に心を打ち砕かれた。こうであってほしい。この基本に立ち返る必要がある。勝手に人の感情を、人生を、生き方を規定してくる輩には徹底的に抗いたい。

映画「ブルーボーイ事件」内で、矢継ぎ早に誹謗中傷を繰り返し無理くりな理由で個人の尊厳を貶める相手に対して錦戸亮演じる弁護士が「うるさい最後まで話を聞け」と怒鳴るシーンがあった。本当に、いまの時代には、あの声量でこのセリフをちゃんという必要がある気がした。ちゃんと話を最後まで聞けよという簡単な願いすら届かない今だからこそ、毅然とした態度で訴えるしかない。

2026年は少しでも希望の見える一年であってほしい。例えば自分の子が将来どんなジェンダーアイデンティティを持とうが受け入れられる社会であるために自分にできることはしていきたい。自分らしく生きることになんの障壁もない社会であってほしい。女性が性被害にあうことなく、性差別がない社会であってほしい。音楽は、そんな社会を進めていく装置であってほしい。勇気づけたり気づきを深めたりしていくものであってほしい。ちゃんと声をあげてほしい。それは音楽ライターも評論家も同じだ。すっかり彼らにはうんざりしてしまうが、音楽は政治的だと偉そうに御託並べるなら自分から率先したらどうか。もうがっかりさせないでほしい。軽率に「逆差別」とか頭の悪いことを言わないでほしい。もう少し考えてほしい。よく考えて、よく学んで、よく理解して少しずつお互いに深めあっていきたい。私ももっともっと理解が必要である。
間違ってもいいから、断言しないで、思い悩んで、あーでもないこーでもないと、じゃあどうしたらいいだろうと、いちいち苦しんでいこう。簡単に答えを導かないように、答えを出してくる人について行かないように、自分の不安を為政者の甘言にからみとられないように、そんな一年に皆さんでしていきたいんです。本当に。本当に。よくしようよ。おねがいします音楽。

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プレイリストも作成しましたのでぜひ。