このブログでは2020年の音楽を2019年12月から2020年11月までと定めているので、5月はちょうど半分が過ぎたことになる。
なのでここで、毎年のように上半期のよかったアルバムや楽曲をまとめようと思う。現時点でのお気に入り度でランキングはつけたが深く考えていないので、当然今後変動もあると思ってほしい。
なお毎月言っているが、これは個人の好みの問題でありクオリティを客観的に評価したランキングではないことは念頭に置いていただきたい。
国内と海外で分けて、20枚ずつ紹介する。

邦楽

20位 KEITA – inK
19位 Moment Joon – Passport & Garcon
18位 5lack – この景色も越へて
17位 香取慎吾 – 20200101
16位 私立恵比寿中学 – playlist
15位 tofubeats – TBEP
14位 サニーデイ・サービス – いいね!
13位 tricot – 真っ黒
12位 Awesome City Club – Grow apart
11位 Sexy Zone – POP x STEP!?
10位 雨のパレード – BORDERLESS
9位 Awich – 孔雀
8位 King Gnu – CEREMONY
7位 BIM – NOT BUSY – EP
6位 Age Factory – EVERYNIGHT



5位 ゲスの極み乙女。ストリーミング、CD、レコード

ゲスの作品で、過去もっとも楽しめて現在もっともリピートしている作品になっている。いままで2回通しで聴いたら飽きて、好きな曲だけ聴くってスタンスだったけど、何回も通しで聴いて好きな曲を探していきたくなる。聴けば聴くほど理解が深まるし、格の違いを見せつけられるというか。売れているバンドとか流行のミュージシャンってたくさんいるけど、さすがに彼の才能には及ばないよなあって改めて思う。
それぞれの楽器の音が個性として強調され、その上に川谷流のメロディを乗せていく。基本的なフォーマットも同じなのに、アレンジの巧みさで既視感を与えさせない。
彼らについて言及するなら、どこまでも邦楽バンドであることを引き受けているなあと感じることだ。洋楽の下敷きはもちろんあるのだが、すごく歌謡的で日本的なバランスを重視している。海外進出を目指すアーティストが多い中で、ずっとこうやってオリエンタルな雰囲気を大切にするバンドもメジャーにいないと不健康だと思うし、そう意識的に活動し別名義ではまた別の顔をのぞかせる形でクリエイティビティを消化しているのは器用以外に形容しようがない。

ストリーミングのプレイリスト、特にSpotifyの圧縮は気にしましたね。日本はSpotifyのユーザーが少なくて、Apple MusicとLINE MUSICのほうが多いんですけど、海外ではSpotifyがメジャーなので、そこでしょぼく聴かれたくなかった。なので、Spotify対策としてミッドに音を集中させないように音数を減らして、ギターをジャーンとは鳴らさないようにしました。去年「キラーボールをもう一度」を配信したときは、ランディ・メリルにマスタリングを頼んだんですけど、今回のアルバムはテッド・ジェンセンにお願いしました。

サウンドメイキングにも、今の時代性を考慮したミキシングを心掛けているのも川谷なりの時代の適合の仕方。
個人的には「哀愁感ゾンビ」がおすすめ。




4位 秦基博コペルニクス

ここまで圧倒的な作品ができるなんて思ってもなかったし、これが話題に一切ならないのも意外で悲しい。個人としてはこの作品こそポップスの極みであり、マスに向けた作品でありながらコンセプチュアルでディープなところへ連れてってくれる作品ってあんまりないと思う。まるでミスチルの「深海」のような。それくらいの深度と壮大さがある作品。必聴。




3GEZAN – (KLUE)

これだけちょっと世界の流れとシンクロしちゃうと気持ちが悪いししんどいなあって思わなくもないんだけど、今年の漢字はもう「狂」でいいと思う。多分「疫」とか「病」とは「慌」なんだろうけど。そもそも清水寺が密になるから坊さん一人で書くことになるんだろうか。
それまではかなりハードでコアな部分での活動が多かったGEZANが徐々にロックシーンの屋台骨を支える存在にまで成長してきたのは、フロントマンのマヒトゥの厳しい社会へのまなざしと徹底的な包括の姿勢によるものだろう。少し仰々しいくらいに怒りと警告を繰り返し、おどろおどろしく突き付けてくる現状と無情さが、図らずともコロナ禍の日本社会にそのまま照らし合わせてしまうことになってしまった。



2kZm – DISTORTION


ヒップホップとロックの融合ってなにも今更声を大にして主張するほどのこともでもないのだが、日本ではロックがヒップホップのテイストを入れることはメジャーシーンですら散見される中で、ヒップホップがロックのテイストを入れることってあるだろうか、なんて考える。ヒップホップの自家中毒みたいな部分は自分の中でぬぐえないものがあって、宇多田ヒカルがJevonを起用したり、RADWIMPSがMIYACHIを、YUKIがKAKATOを、星野源がPUNPEEをフィーチャリングするようなことは見かけても、その逆はそう簡単に見当たらない。ヒップホップのシーン自体があまり大きくないせいもあるのだが、かつてスチャダラパーが小沢健二を招聘したような、KREVAが草野マサムネをフィーチャリングしたような、そういう歌モノとしての追及心をもっと欲しくなることが多々ある。
Tame Impalaのケヴィンパーカーが多くのヒップホップアーティストから敬愛されているように、いまラッパーはロックに夢中である。旧態的なマッチョイムズのラップではなく、多ジャンルを巻き込んだ彩り豊かな音楽が溢れているのが今の時代の特徴である。kZmはそんな世界の潮流をさっと読み取ることのできる人なんだろうと思う。それは若さゆえの感覚なのか、彼自身の持つアンテナなのか。
Daichi Yamamotoを迎えた「Give Me Your Something」などでは自分の位置を定めずに適材適所へと移っていく。彼が旧来的なポジションに固執しないことは客演のバラエティをみても分かる事だが、聴けば聴くほどのその発見は尽きない。
ラップアルバムは今年すごく好きなものがたくさんリリースされているが、その中でも抜きんでて好きだなと感じる一枚だ。





1位 小袋成彬 – Piercing

前作のデビューアルバムではソウルやR&Bといった趣が非常に強く、語りがはいったりと職人的なアートワークや自己陶酔のような一面もあったが、今作はよりリズムをシームレスにつないでいき、アートよりもダンス、ビートへのこだわりを感じる。一枚のアルバムが全て繋がり、最後の5lackを迎えた「Gaia」で収束させていく。耳が完全に海外の音源を聴くモードになっている自分がいいることに気付く。サウンドにどこまでも耳寄せて時間の限り摂取しようと目論む。そして抱えきれず溢れていく。愛おしさがつまっているアルバムだ。はっきりいって、これを超えるアルバムは今年はもうないと思う。2019年12月発売にして2020年の頂点。おそらくあと半年、これはゆるがないだろう。




洋楽

20位 Disq – Collector
19位 Lil Uzi Vert – Eternal Atake
18位 Easy Life – Junk Food
17位 NNAMDÏ – BRAT
16位 Rina Sawayama – SAWAYAMA
15位 Waxahatchee – Saint Cloud
14位 Sir The Baptist – Godfidence: Kingdom Bae
13位 Childish Gambino – 3.15.20
12位 Tame Impala – The Slow Rush
11位 Princess Nokia – Everything Sucks
10位 Sorry – 925
9位 OHYUNG – Protector
8位 Bring Me The Horizon – Music to listen to~dance to~blaze to~pray to~feed to~sleep to~talk to~grind to~trip to~breathe to~help to~hurt to~scroll to~roll to~love to~hate to~learn Too~plot to~play to~be to~feel to~breed to~sweat to~dream to~hide to~live to~die to~GO TO
7位 Mura Masa – R.Y.C
6位 Halsey – Manic

 

 

5EDEN – no future

冒頭から耳を傾けざるを得ないような多重録音と荘厳さ。日本語で話す女性、鳥の鳴き声、風の音、なにかの機械のアラーム、子供の話声(そしてナタリーポートマンも!)。自然的なものと人工的なものが混ざり合い、社会の縮図を見るかのようなノイズとEDENの厳めしい歌声が混ざり合って天まで届くような真っすぐな光線。
「just saying」のような電子音を駆使した作品と、ラストの「untitled」で締められるギターの素朴さが光る作品とEDENのエフェクトのかからない裸の声が印象的な無香料の作品と、それぞれのバランスが非常にいい。それこそがEDENの作品像なんだろうと思う。
一見美しさが際立つ作品だが、タイトルが「no future」と悲観的にも見えるように、どこか閉塞感や限界感がつきまとっている。10曲目の「fomo」とはSNS社会で懸念されている、取り残される不安・恐怖のことだし、「out」では南極と北極の探検家であるエリックラーソンの言葉を引用するのも、The 1975が4枚目のアルバム「Notes On A Conditional Form」での一曲目でスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリの演説をそのまま引用したように、EDENなりの気候への危機感の表れなのかもしれない。

 



4Against All Logic – 2017 – 2019

Nicolas Jaarによる別名義のプロジェクト。2018年にリリースされた「2012-2017」から2年ぶりの2作目。Nicolas Jaarとしても新譜を出し、精力的に活動をこなしている彼だが、この二つのプロジェクトは明確に音楽が異なる。より歌とリズムを効果的に機能させ、多面性を見せるのがAgainst All Logic(AAL)である一方で、Nicolas Jaarはより環境音楽に特化しており、音色とその混ざり具合を自然物理学的な見方で配合させている。
ボケたボーカルが揺らぎながら流れていくルーサーイングラムの72年の作品をそのままタイトルにしサンプリングした「If Loving You Is Wrong」の次は、こまかなリズムをアフリカンなパーカッションで取り始める「With an Addict」など、50分でみせるAALはトキシックな要素が多い。リディアランチを迎えた「If You Can’t Do It Good, Do It Hard」ではリディアのハードなナラティブが差し込まれ、「Deeeeeeefers」ではNicolas Jaar的な金属音やサイレン音といった不穏な空気を醸し出していく。
冒頭の「Fantasy」は、ビヨンセのショーンポールとのコラボ曲「Baby Boy」からの引用なのも、彼の進化を表す一つ。
ハウスともテクノとも捉えられる複雑なビートは140程度のBPMで打ち鳴らされていく。フロアをグツグツと煮えたぎらせるような、爆発力より持続力に特化したサウンドが私には好みだし、はやく生で聴きたいしだれか彼の曲をかけてくれないかなと切に願っている。

 



3ITZY – IT’z ME

JYPエンターテイメントからTWICEの妹分として登場したITZY。この作品もまだセカンドミニアルバム扱いだが、楽曲の強度と彼女たちのしなやかさは十分に魅力的だし、キャッチーだけど嫌味がないのも素敵だ。特にリード曲の「WANNABE」なんかはある意味節操がなく、ベースのスラップが入ったりEDMやハウスの音色が追加されていたりと忙しい展開が多いのだが、そこをスマートにまとめあげているのがさすがJYPの引っ張ってくる作曲陣なだけある(GALACTIKAというユニットで、TWICEやAPINKの楽曲などを提供しているプロ中のプロらしい)。アフロなサウンドが目立つのは、彼女たちの力強さをしめすためのツールで、「THAT’S A NO NO」のようにコーラスが印象的なものも多い。
BLACKPINKやBTSの世界的な成功から見るに、KPOPの躍進はヒップホップサウンドの導入と、それらに対する深い考察力と緻密なサウンドメイキングにあると思う。付け焼刃ではなく、本場でもしっかりと歌い上げるために必要なエッセンスを盛り込むノウハウがある。ITZYも例外なく、ヒップホップの影響を強く受けたサウンドが多い。ただ、2020年にリリースするアルバムとして必然性を感じるのは、決してそれだけではなく「NOBODY LIKE YOU」のようなミドルテンポのロックアンセムを作っているところだ。ちょっと古めかしいんだけど、それもまた斬新さにつながっている。
彼女たちがこのミニアルバムを発表するにあたって何度か公式でアップされた彼女たちのショットの一枚に、背景一面に「ステレオタイプ」や「いじめ」「噂」といった文言がテキストされている。その前に悠然と立つ5人に笑顔はない。凛とした佇まいで「WANNABE」だけをYOUTUBEにアップしている。

잔소리는
Stop it
알아서 할게
내가 뭐가 되든
내가 알아서 할 테니까 좀

“小言は止めて、好きなようにやるから
自分が何になるかは自分で判断する”

と言い放つのは、彼女たちのアティチュードがどのベクトルに向いているのかがよくわかる。自己の重要性と個性を主張していくのはもはや当たり前にもなってきた時代だが、”主張しなければならない”時代は決して終着点ではなく過渡期なのだと繰り返し伝えたい。「24 HRS」の女性の肯定も、「NOBODY LIKE YOU」のアイデンティティの強調も、ITZYらしさであるし、TWICEとはまた違う形での世界戦略、イメージ戦略が図られている。
そしてまったくどうでもいいことなのだが、この「WANNABE」で、初めてyoutubeに2160pという画質がある事を知った。恐ろしすぎて目を疑ったが、テクノロジーの進化はすさまじい。現実で見るよりきれいなのでは、なんて思いながら再生したが、通信速度が遅すぎて中々読み込まない。どうやらウチの回線はテクノロジーに置いてけぼりにされているようだ。

 

 

2Four Tet – Sixteen Oceans

フォークトロニカとも呼ばれるFour Tet(Kieran Hebden)の温かみのあるエレクトロニカは天才のソレで、部屋でひっそりと聴いていたいアーティストナンバーワンである。私がエレクトロニカのジャンルに踏み入れた最初の師匠とも呼べるのが彼で、聴き心地がよく、ネガティブなイメージのあったクラブミュージックの認識の幅を拡張させてくれた。「Rounds」や「Pause」などは決してポップミュージックのような受容の容易さは備えていないが、聴けば聴くほど沼にハマっていくオリエンタルな奥ゆかしさがある。
エリーゴールディングの声を使用した「Baby」は、エリーのハスキーでパワフルなボイス感ではなく、断片的に再構築することで神秘さと静的な雰囲気をもたらしている。彼の得意技である水の音や鳥のさえずりといった環境音を巧みに使いこなし、コンパクトながら奥深いものに仕上がっている。
今私たちはコロナ禍において自宅での自粛を余儀なくされている。クラブイベントは全て中止になり、踊る場所を奪われてしまった。相次ぐ倒産と閉店。なんとか市民の力で存続させようとクラウドファンディングで生きながらえているが、どこまでその応急処置は通用するのかは不透明である。そうした世界的なパンデミックの中で投下されたFour Tetの音楽は、自粛している我々を慰めるかのようなナンバーになっている。クラブのフロアで踊るようなパンチの効いた音楽ではなく、部屋で一人じっくりと小腸辺りから踊らせにきている曲陣。不安を和らげるかのような環境音。時間や場所を超越するかのよな卓越したサウンドとリズムはアンビエントながらテクとやハウスの熱を持っている。
タイトル通り「16個の海」を提示したfour tet。シャープな音像で景色を切り取っていき、「Love Salad」や「Insect Near Piha Beach」といったこのアルバムの核を効果的に演出している。「Bubbles at Overlook 25th March 2019」や「1993 Band Practice」のような音との遊戯的な作品も散りばめられていて、ラストの「Mama Teaches Sanskrit」は、彼の母親のサンスクリット語をリファレンスとして使用している。

そうしたどこからでもリファレンスし、どこまでも深く潜っていくことのできる彼の器用さとパワーが今作でも炸裂しているのは、改めてここで強調するまでもないだろう。



1Dua Lipa – Future Nostalgia


「New Rules」で多くの人に存在を知らしめたDua Lipaの、セルフタイトルに続く2作目。「2作目がどれほど恐ろしい物かよくわかっている」と本人が語るように、この作品はとてもつもなくキャリア上重要で、そして彼女は見事にその壁をぶち破ったと言える。80年代のディスコチューンや90年代初頭の音楽を縦横無尽に駆け巡り、どこまでもポップで、パワフルなメッセージを突き付けていく。女性のエンパワーメントについて歌った歌「Don’t Start Now」もあれば、失恋の悲哀を歌った「Break My Heart」、英国風ブロンディのラップ版と自称する、自身のアイデンティティを感じてほしいと語る「Levitating」など、以前に増して彼女のパーソナリティが色濃く反映されているアルバムだ。彼女のハスキーな色気のある声が存分に活かされた「Cool」は新たな一面をのぞかせたと言ってもいいだろう。

とにかく踊らせることに徹底したアルバムは、奇しくもこの世界的なムードに相反することになるとは彼女も思いもよらなかっただろう。それくらいに力強く、フロアをガチガチに揺らす曲ばかりだ。Jeff Bhasker やTove Lo、マドンナのプロデューサーとしても名高いStuart Price、Justin Tranterなど名だたるヒットメーカを引き連れ、80年代から00年代まで、時空を超越して音をかちあわせていく。近い時期にリリースされたThe weekndの「After Hours」とは対極的な結果となった。

様々な形の女性像は存在するが、Dua Lipaの存在は、女子に対する新しい力を提供したと言っても過言ではないと思う。それはかつてのマドンナやレディーガガにも通ずる、単なるポップスターではなく、自らの役割を引き受け、最前に立ち社会の逆境に中指を立てながら軽やかにスターを乗りこなしていく存在だ。BLACKPINKが敬愛するアーティストに挙げるのもよくわかる。
その存在意義はイギリスのみならずアメリカでも存在感を増している。

ただ、Dua Lipaが単なる女性のエンパワーメントだけを高らかに誇示するのではなく、女性とはいつまでも恐怖に脅かされているのだと強く警鐘を鳴らす「Boys Will Be Boys」で締めるのはとても示唆的だなと感じる。バッシングもおそれない、実体験をもとに書かれたセンセーショナルなリリックで、「女の子は大人の女性になる。男の子は男の子のままだ」と痛烈に指摘する。

彼女は2019年にケンブリッジ大学にて音楽産業と女性アーティストについてのスピーチを行っている。グラミーの主要五部門で10%強しか女性アーティストがノミネートされていない事。自分が17の時にレコーディングした時に男性しかいなかったこと(彼女は幸運にも女性の素晴らしいスタッフに恵まれたという)。そしてそこでアカデミーの権威者であるニールポートナウが「女性はステップアップ(進歩)すべきだ」と言って大ひんしゅくを買ったことにも言及した。

今年のグラミー賞授賞式の後、ニール・ポートナウは次のように語っていた。「自身の中にクリエイティヴィティを抱えている女性、ミュージシャンやエンジニア、プロデューサーになりたい女性、そして重役として音楽業界に参加したいと思っている女性と共に始める必要があります……(彼女たちは)進歩しなければいけないのです。なぜなら、彼女たちは受け入れられことになると思うからです」

この発言は多くの批判を受けることになっており、ボン・イヴェールことジャスティン・ヴァーノンは「ひどいコーチの言葉だな」と述べたほか、P!NKは次のように述べている。「音楽業界の女性たちは『進歩する』必要なんてない。この世界が始まった頃から女性たちはずっと進歩してきた。進歩したり、身を引いたりね。女性が今年の音楽を制したの。彼女たちはやってくれたわ。そして今年以前のすべての年においてもそう」

Dua Lipaはこのスピーチとラストの曲「Boys Will Be Boys」においてマスキュリニティが社会的に女性を追いやったり窮屈な、脅迫的な思いをさせてしまうことを危惧している。それは書き手である私にも向けられた言葉でもある。

話は飛躍したが、彼女のサウンドメイキングは80年代や90年代への遡上を目的としたものに対し、メッセージはどこまでも20年代的で、未来的だ。インタビューで語るには「I realized that what I wanted to make was something that felt nostalgic but had something fresh and futuristic about it too,」と言っているが、私にはfutureは彼女自身のステートメントでnostalgiaはサウンドに関することなのではないかな、なんて憶測を飛ばしてレビューを終えたい。


まとめ

以上が上半期のベストになる。今回は大まじめにレビューをしてみたが、やはり不得手な分野であり全体的に低クオリティな部分が悪目立ちした。これでも頑張った方なので、自分で自分を褒めてあげようと思う。

何度も言うが、コロナのせいですっかり産業が委縮してしまった中、これだけの良作が揃ったことに奇跡を感じているし、なんとか下半期も持ちこたえてほしいなと。あととにかく少しでも明るい話題が多く出てくることを祈って仕方がない。