2023年にリリースされた海外のアルバム、ミニアルバム、EPから「これはよかった!」と思うものを50枚選びました。決して客観的な批評にもとづくランキングではなく私の自由な気分によるランキングなので気楽に見てください。それではルール確認です。

1.2022年11月から2023年10月までにリリースされたアルバムが対象です。

2.アルバム、EP、ミニアルバム、カバーアルバムなどが対象です。

3.リイシューやベスト盤は対象外です

4.海外の楽曲の定義は個人によるものです。

では今年聴いた枚の中から、惜しくも50枚に漏れてしまった91枚をABC順で紹介します。どうぞ

ランキング外

9m88 – SENT
aespa – MY WORLD
All Time Low – Tell Me I’m Alive
Andy Shauf – Norm
Animal Collective – Isn’t It Now?
ANOHNI – My Back Was a Bridge For You To Cross
Aphex Twin – Blackbox Life Recorder 21f / In a Room7 F760 – EP
BamBam – Sour & Sweet
The Band CAMINO – The Dark
bdrmm – I Don’t Know
Belle and Sebastian – Late Developers
Benny Sings – Young Hearts
Biig Piig – Bubblegum
Blonde Redhead – Sit Down For Dinner
boygenius – the rest -EP
Buck Meek – Haunted Mountain
CIVIC – Taken By Force
Claud – Supermodels
Detalji – Truly
Diplo – Diplo Presents Thomas Wesley: Chapter 2 – Swamp Savant
Doja Cat – Scarlet
Dominic Fike  – Sunburn
Drake & 21 Savage – Her Loss
Dreamer Isioma – Princess Forever
Ed Sheeran – –
Ed Sheeran – Autumn Variations
Emotional Oranges – STILL EMO
Everything but the girl – Fuse
Foo Fighters – But Here We Are
Foyer Red – Yarn the Hours Away
The Go! Team – Get Up Sequences Part Two
Gorillaz – Cracker Island
Gretel Hänlyn – Head of the Love Club
Grouplove – I Want It All Right Now
Gryffin – Alive
The Haunted Youth – Dawn Of The Freak
Hayden Everett – Silver Line -EP
Inhaler – Cuts & Bruises
Ítallo – Tarde no Walkiria
ITZY – RING
Jadu Heart – Derealised
Jamila Woods – Water Made Us
Jane Remover – Census Designated
Jason Mraz – Mystical Magical Rhythmical Radical Ride
JAWNY – It’s Never Fair, Always True
JIHYO – ZONE
KESHA – Gag Order
khai dreams – ABSOLUTE HEARTBREAK
King Isis – im fine, thx 4 asking
Kylie Minogue – Tension
Lil Uzi Vert – Pink Tape
Lil Yachty – let’s Start Here.
Loossemble – Loossemble
Lukas Graham – 4 (The Pink Album)
Maneskin – RUSH!
Metallica – 72 seasons
Mitski – The Land Is Inhospitable and So Are We
Narrow Head – Moments of Clarity
Nickelback – Get Rollin’
NMIXX – expergo -EP
Noel Gallagher’s High Flying Birds – Council Skies
Nothing But Thieves – Dead Club City
Olivia Barton – This is a Good Sign
Oneohtrix Point Never – Again
Owl City – Coco Moon
Phoenix – Alpha Zulu
Phony Ppl – Euphonyus
Portugal. The Man – Chris Black Changed My Life
The Raytons – What’s Rock and Roll?
Royal Blood – Back To The Water Below
Ryan Beatty – Calico
Sam Wilkes – DRIVING
Shame – Food for Worms
The Sherlocks – People Like Me & You
Stormzy – This Is What I Mean
Story Of The Year – Tear Me to Pieces
Suwon Yim – Guilt or Tragedy
Tagua Tagua – Tanto
TEENAGE FANCLUB – Nothing Lasts Forever
Tinashe – BB/ANG3L
Tirzah – trip9love…???
Toro y Moi – Sandhills -EP
Travis Scott – UTOPIA
Troye Sivan – Somethin To Give Each Other
TWICE – READY TO BE
Uh Huh – Uh Huh
THE View – Exorcism of Youth
Weezer – SZNZ: Winter – EP
yeule – softscars
Yves Tumor – Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume (Or Simply, Hot Between Worlds)
谷水车间 – 家庭

それではベスト50の発表です

50~41位

50位 위댄스 – SUM

49位 blink 182 – ONE MORE TIME…

48位 Shania Twain – Queen Of Me

47位 Valley – Lost In Translation

46位 Meg Baird – Furling

45位 Oscar Lang – Look Now

44位 Rauw Alejandro – SATURNO

43位 Laurel Halo – Atlas

42位 Boygenius – the record

41位 SOULBYSEL – SOULBYSEL Compilation 05

40~31位

40位 LANY – a beautiful blur

39位 Roosevelt – Embrace

38位 Kim Petras – Problématique

37位 Overmono – Good Lies

36位 Yaeji – With A Hammer

35位 Miley Cyrus – Endless Summer Vacation

34位 Sampha – Lahai

33位 Uma – Jai

32位 Black Eyed Peas – ELEVATION

31位 Maisie Peters – The Good Witch

30~21位

30位 Horse Rider – Real Melody

29位 RAYE – My 21st Century Blues

28位 Post Malone – AUSTIN

27位 Fall Out Boy – So Much (For) Stardust

26位 IVE – I’ve IVE

25位 Cisco Swank – More Better

24位 Joji – SMITHEREENS

23位 The Japanese House – In The End It Always Does

22位 Janelle Monae – The Age of Pleasure

21位 Róisín Murphy – Hit Parade

20~11位

20 100 gecs – 10,000 gecs

19位 Carly Rae Jepsen – The Loveliest Time

18位 Claire Roskinkranz – Just Because

17位 M83 – Fantasy

16位 Sigur Rós – ÁTTA

15位 Cleo Sol – Heaven

14位 BROCKHAMPTON – The Family

13位 Young Fathers – Heavy Heavy

12位 Nia Archives – Sunrise Bang Ur Head Against Tha Wall – EP

11位 Arlo Parks – My Soft Machine

10~4位

10位 Daniel Ceasar – NEVER ENOUGH

9位 SG Lewis – AudioLust & HigherLove

8位 Ice Spice – Like..?

7位 Olivia Rodrigo – GUTS

6位 Romy – Mid Air

5位 Sam Smith – Gloria

4位 Disclosure – Alchemy

3位~1位

3位 Holly Humberstone – Paint My Bedroom Black

FMラジオをつけていても、たまに彼女の楽曲”Paint My Bedroom Black”が流れてくるくらいに、日本でも浸透度が強まっている(あるいは日本でも売れそう/売りたいという思惑が強まっている)気がするが、それはとても喜ばしいことだ。ハスキーボイスの女性シンガーは長らくムーブメントとして続いていて、日本のポップ音楽のシーンでもその傾向は強まっている(大きな話題性をかっさらっているのはささうがにYOASOBIなどだが)。”Into Your Room”にしろ、”Room Service”にしろ、彼女は常に部屋で陰鬱とした気持ちを歌っている。それはZ世代の共通する悩みや葛藤であったりもするし、Holly自身のパーソナルな独白でもある。”Antichrist”で、自分は反キリスト教なのかと自問自答しているのもそのひとつだろう。”Cocoon”は私がこのアルバムで最も好きな一曲に挙げられる。メロディセンスが完全にゼロ年代のそれで、懐かしさと温かさが混在していて、コーラスに入る前のメロディは何度も聴き返したくなる。コロナ禍のTikTokで一躍有名になった彼女はその名声にメンタルを崩してしまう。だからこのアルバムは自分自身を癒す、セルフケアの側面もある。孤立してしまい誰を信用してよいのかわからなくなると、人は身近なものや過去の情景にすがろうとする。彼女にとってThe OCを観ることは懐かしさの一コマなのかリバイバルとしての、あるいは自分の内面の投影としてのチョイスなのかは私にはよくわからないが、どこか浸り気味で、探し求め気味なのはこのアルバムに通底しているテーマだ。“When everything’s a bit confusing and overwhelming, having my writing time is the only thing that brings me back down to Earth and back to myself. It grounds me.”とインタビュー(https://i-d.vice.com/en/article/4a3nbq/holly-humberstone-paint-my-bedroom-black-album-interview)で語るように、彼女の孤独感とステージでの華やかさとの乖離はイギリスから単身でアメリカに渡りツアーを行う彼女には大きな心理的な負担だったことがうかがえる。もちろん楽曲の質をとっても申し分なく”Lauren”のようなタイトなサウンドの楽曲も、d4vdとコラボした”Superbloodmoon”はGirl In Redなどを彷彿させるような湿っぽいギターが特徴的な楽曲もある幅広さを見せる。内省的でありながらサウンドはしっかりポップで単調性を見せないところがこの作品の巧みなところだ。メンタルヘルスと希望の歌、と名付けてもいいかもしれない。

2位 James Blake – Playing Robots Into Heaven

James Blakeの今アルバムを振り返るとき「原点回帰した」とか「ダンスミュージックに戻った」みたいな文言はすぐに浮かぶし、シンガーとしてのJames Blakeは前作”Friends That Break Your Hearts”で一つの高みに達してしまったことは頷けるが、いややはりまだまだオーバーグラウンドなダンスミュージックに貪欲なんだろうなというのが感じ取れる。それは悪い意味ではなくて、むしろ初期の”CMYK”のようなポストダブステップやらをやっていたころの実験性とイギリスのアンダーグラウンドの精神性は保ったまま、これまで培ってきたノウハウがしっかりと詰め込まれているように思う。独特なリフレイン、チープな機械音、ところどころ入るノイズ、コラージュしたボイスサンプリング。散々著名なシンガーやラッパーたちと共作してきた結果たどり着いた手法なのか、彼自身のルーツなのかは知識欠乏な私にはよくわからない。ただ、ダークでダウナーなナンバーが続く中で全く飽きることなく聴けるのは緻密なサウンドメイキングにほかならず、そして例によってこれらはきっとライブで大化けする。”Big Hammer”はおそらくつんざくような重低音で身体丸ごと震わせにくるだろうし、”Tell Me”はフロアを狂騒と化すパワーがあるだろう。パートナーであるJameela Jamil から初期の曲が好きだと告げられ、ファンが求めているのはかつてのアンダーグラウンドを拡大させた頃の自分の音楽なのかもしれないと思い、今回の制作に至ったと語るように、明らかにこのアルバムはボーカルが後ろに下がったオートチューン的な作品になっている。ファーストアルバムでは写真がブレて顔すら判別つかなかったのに3作目のアルバム”Assume Form”では髪をかきあげじっとこちらを見つめるJames Blake。”Don’t Miss It”に挙げられるような、sad boyとからかわれることに対する反抗も経て、今かれは非常にフラットでニュートラルな立ち位置を獲得しているようにも思う。それがあっての原点回帰な気がするのだ。もちろん、初期の焼きましではなく、シンガーとしての経験を経てブラッシュアップしたJames Blakeの、だ。

1位 Paramore – This Is Why

冒頭の”This is Why”からすでにParamoreのシニカル性は炸裂している。コロナ禍を経てできあがった本曲はThis is why I don’t leave the house.と諦念じみたことを言う。エモポップの旗手としてながらく活動してきた彼らは今や多くのZ世代やそれらに支持されるポップミュージシャン、例えばOlivia Rodrigoらから熱烈に愛されてきた。前作”After Laughter”でよりポップで多様なリズムとジャンルを取り入れたニューウェーヴ的な作品だったのに対し、しばらくの活動休止を経てできた5年ぶりの本作は”The News”から原点回帰したようなギターが最前線に躍り出た王道エモポップを演奏している。そして強烈なビートを刻むドラムももちろん健在だ。3人であることが絶対条件になっているParamoreらしいミニマルでダイナミックな楽曲は昔から変わらない。変わったことはボーカルのヘイリーが歌う内容だ。さきほども言った”This is Why”もそうだし、”C’est Comme Ça”はカイロプラクティックの予約をし医者の指導でカフェインを立ったりとセルフケアを歌い、”Running Out Of Time”や”You First”では社会的混乱、日常のカオスを歌う。恋愛のあれこれについて情念的に歌うだけでなく、より普遍的で視座の広い歌が多い。全体を通して非常にタイトな演奏でバンドらしい音を過剰な装飾やアレンジ、展開を持たずに聴くことができる。歌モノとしての機能はいつもながらにありながら、それぞれの楽器の音により注目して聴くことができるのはおそらくいままでのヘビーさを捨て、かつ各楽器が粒だっているからだろう。まるで深夜のダイナーを横目に車で駆け抜けていくようなチルさとダークさがある。一転して愛について歌うアコースティックなナンバー”Lier”はこのアルバムが終盤へ差し掛かることを示す一曲だ。ソロにも挑戦し、新たな表現を身につけたヘイリーは確実に新境地にいることが収められている。Paramoreがファーストアルバム”All We Know Is Falling”がFall Out BoyやAll Time Lowらが所属するFueled By Ramenからリリースされたのを思い返すと(今でもそうだが)、その三組とも今年アルバムをリリースしそれぞれがルーツを見つめなおすかのような作風だったことを踏まえると、時代が回ってきているのだなと改めて感じることができる。決して順風満帆とは言えなかったバンド人生は訴訟やメンバー内の不和などを振り返っても明らかだ。しかし彼らが作ってきた音楽は今まさにZ世代に評価され、ニュージェネレーションのアーティストたちがこぞってリスペクトいているのをみても間違いなくその功績は大きい。そして今作はそんな若い世代のリスペクトに応えるような、会心の一作になっている。

まとめ

去年は260枚ほど聴いていた海外のアルバムも、今年は150枚ほどと激減。その分一作一作をしっかり聴き返すよう心掛け、好きだと思った曲はちゃんと繰り返し聴くようにした。そのおかげか、口ずさめる曲も増えたし、愛着も増したように思える(それ以前に邦楽に重心がシフトしていることも理由として挙げられるが)。やっぱり聴く量はほどほどにして、ある程度自分の好みを絞った方が音楽ライフとしては幸せなのかなあとも思ったり、でもやっぱりこうやって新しい出会いがあるのは選り好みせず貪欲に聴いていった結果でもあるので、バランスよく来年も引き続きできたらなあと勝手に思っている。

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